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大塚せつ子先生に教わる
米粉使用のメリットとお店作り

rice powder

国産原料のグルテンフリー食材として注目されている「米粉」。
存在は知っていても、どんなメリットがあるのか、どう使えばよいのかわからず、まだ使ったことがないという方も多いですよね。
そこで、米粉とは何かという基本情報から実際に使っているお店に伺ったお話まで、米粉に関する疑問を解消するために役立つ情報をご紹介します。

そもそも米粉って何?

米粉とは?

米粉(こめこ)とは、その名の通り、お米を細かく砕いて作られる粉。
昔から和菓子の材料として、上新粉・白玉粉・もち粉などのお米の粉が使われてきましたが、近年では、より微細に製粉されたものが流通されるようになり、洋菓子やパン、料理用など、小麦粉と同じように使うことができるものも出てきたことから、米粉を使ったパンやお菓子作りがより身近な存在となりました。
ここでは、洋菓子やパン、料理用として使用できる「新規用途米粉」(以降「米粉」と呼びます)について紹介します。

米粉の種類

現在市販されている米粉は、パン用、菓子・料理用の2つに分類され、精白米を粉砕した米粉が一般的ですが、玄米を粉砕した玄米粉もあります。

パン用


製パンに適した米粉で、「ミズホチカラ」「笑みたわわ」などお米の品種名が表示されています。
グルテンが含まれていなくても膨らみやすいのが特徴で、グルテンフリーのパン作りにぴったり。
このほか、小麦たんぱく(グルテン)を添加して製パン性をあげ、ボリュームがしっかりと出るように作られたものや、もちもち食感をプラスするために、小麦粉に米粉をブレンドしたミックス粉もあります。

菓子・料理用


小麦の薄力粉と同じような使い方が可能な米粉。
一般的に米粉のお菓子は水分を含みやすく、どっしりとした食感になりがち。
一方、菓子用米粉は吸水性をおさえ、より微細に製粉されているため、スポンジケーキなどに使用してもふんわりとした食感に仕上がります。
また、天ぷら・唐揚げの衣やお好み焼きなどにもおすすめです。

玄米粉


精白米ではなく玄米を製粉・焙煎したもの。
精白米に比べて、ビタミン・ミネラル・食物繊維などの栄養素が豊富で、焙煎することによって生まれる香ばしい風味や色合いが特徴。
100%の使用以外にも、香ばしさをプラスするために通常の米粉に少量加えるといった使い方も。

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今、米粉が注目される理由

広がる世界のグルテンフリー市場



こういった国内の生産や需要の拡大といった情勢だけでなく、世界的に見ても米粉に注目が集まっています。
アレルギーや疾患を理由にではなく、自らの健康のために積極的にグルテンフリーを心がける人が増え、グルテンフリー市場はアメリカやヨーロッパを中心に順調に拡大し、2024年には約100億USドルに達する見込みに(※1)。

食の感度が高い日本人にとっても、グルテンフリーを実現できる米粉は注目されている食材のひとつ。
さらに、コロナ制限が緩和されてインバウンド需要が回復してきたことにより、多様な食文化を持つ外国人観光客のニーズに応えるためにも、グルテンフリーであり、日本産原料で作られた米粉を使った商品が求められています。

拡大される需要



人口減少や食の欧米化とともに日本国内での米の消費量が減少する中、アレルギーフリー、グルテンフリーの食材として認知がされてきていることやパンやスイーツにお米の特徴を活かした「もっちり」「ふわっと」「サクサク」とした食感を加えるために、米粉の需要は拡大傾向にあります。
また、パンや麺に適したお米の品種も育種されてきており、今後、さまざまな用途に応じた米粉が増えていくことでしょう(※2)。

元々、小麦粉に比べて価格が高く、入手しにくいイメージが強い米粉ですが、米粉の需要が増えることで生産コストが下がり、小麦粉と同等の価格で販売される米粉も出てきてお買い求めやすくなってきました。
米粉の利用を拡大させていくことは、国内の水田を水田として利用していくための有効な手段であり、食料自給率の向上にもつながります。
※1,2 参考:農林水産省「広がる米粉の世界

米粉のメリット

米粉のメリットはさまざまありますが、その中でもわかりやすく消費者に認知されている「カラダにやさしい食材である」など、どんなメリットがあるのかご紹介します。

カラダにやさしい食材

米粉は小麦粉と比較すると、「グルテンフリー」「油を吸う量が少ない」「栄養価が高い」といった、カラダにやさしい3つのポイントがあります。

グルテンフリー


小麦粉との大きな違いは、グルテンを含まないこと。 欧米を中心に、健康上の理由からグルテンを控える食生活を送る方が増えている中で、米粉は小麦粉の代替としてポピュラーな食品です。 また、米食を中心としてきた日本でも、小麦のアレルギーを持つ方への食の理解が進み、アレルギーの要因となる小麦たんぱく(グルテン)を含まないパンが必要とされています。

油を吸う量が少ない


米粉は小麦粉と比べて、油の吸収率(調理によって食材が吸収した油の分量の割合)が低い傾向にあります。
鶏のもも肉を揚げた際の衣の油の吸収率をみると、小麦粉の衣は38%に対して、米粉の衣は21%という結果が報告されています。
油の吸収率が低いことで脂質を減らすことができるので、揚げ物を食べたいけどカロリーを抑えたい場合にもおすすめです。

参照:米粉タイムズ「ヘルシー感に関して

栄養価が高い


米粉と小麦粉では、カロリーやたんぱく質の数値は同じくらいですが、アミノ酸スコアは小麦粉が49~58に対して米粉は89と高く、栄養価の高い食品となっています。(※)
アミノ酸スコアとは、たんぱく質を構成するアミノ酸の中の「必須アミノ酸」の割合を示す指標で、アミノ酸スコアが高いほど栄養価が高く、良質なたんぱく質とされています。
必須アミノ酸は体内で生成することのできないため、食事での摂取が重要。
肉や魚などのおかずから以外も摂取することが望ましいので、主食の材料として米粉を選ぶことで、効率よく必須アミノ酸をとることが期待できます。

※参照:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編

お米ならではの食感

メニューを作るうえで重視したいポイントとしては、おいしさは欠かせません。
米粉が小麦粉と大きく異なる点としては、食感の違いがあります。

もちもち食感


原料としてうるち米やもち米を使っていることからも想像しやすいですが、米粉は水分を含有しやすく、もちもちした食感が特徴。
食べたときの満足感が高く、腹持ちもよいというメリットも。

サクサク食感


小麦と違いグルテンを形成しないため、クッキーなどの焼き菓子に使うと、サクサクとして口の中でほろっとほどけるサクほろ食感になります。
また揚げ物に使うと、吸油率が低いため、小麦粉で作った衣と比べるとサクッと軽やかな食感に。

やさしい味わい


お米特有のほんのりとした甘みがあり、やさしい味わいなので、どんな材料とも合わせやすいのもうれしいポイント。
白いごはんを片手に、和洋中のいろいろなおかずを食べる日本人にとっては、米粉はどんな具材にも合わせられる万能食材ともいえます。

作業効率の向上

実は米粉には、小麦粉と違って作業効率をあげられるポイントもあります。

ふるわなくてOK


製菓、製パンに使用する米粉は、微細に製粉してあるため粒子が非常に細かくサラサラしています。
このためふるわずにそのまま使うことができ、混ぜる際にも小麦粉と違ってダマになりにくいというメリットがあります。
調理の際の前工程がカットできるのは、日々の準備はもちろん、忙しいときに急に作る量を増やしたいといった場合にもうれしいポイントです。

後片付けがらく


調理の際の前工程がカットできるので、その分洗浄する器具の数を減らすことができます。
また、それだけでなく、米粉はサラサラとしているので容器や器具についてもこびりつきにくく、簡単に洗い落とすことができるというメリットもあります。

はじめてみよう米粉メニュー

さまざまなメリットがある米粉。
近年では、アレルギー対応として小麦粉の代わりに米粉を100%使用するパン屋や、揚げものメニューなどの食感の改良として、材料の一部に米粉を使用するカフェなども増えています。
ここからは、実際に米粉を使った商品を扱うお店の方々からお伺いしたお話など、米粉商品の開発の参考になる情報をご紹介します。

スペシャルインタビュー

今回ご紹介するのは、「RICE HACK Gluten-Free Bakery」をはじめとしたグルテンフリーのベーカリーや、米粉のクッキングスタジオなどを運営する「ライステラス」の大塚せつ子先生へのスペシャルインタビュー。
米粉を使ったパン作りの第一人者としてご活躍される大塚先生に、米粉を扱いはじめたきっかけや、米粉を主軸とした店舗作り、これから始められる方へのアドバイスをお伺いしてきました。
インタビューに伺ったのは、東京都渋谷区にある「RICE HACK Gluten-Free Bakery」。
明治神宮前駅からもほど近く、日本人だけでなく多くの外国人観光客の方も訪れる街です。
6~8種類ほどのパンが並ぶショーケースの奥には、コンパクトな厨房があり、注文を受けてから焼き上げる米粉のピザが一番人気。
米ぬか入りのピザ生地は、独特の香ばしさがあり耳までカリカリです。
実はこのピザ、米粉だからこそ、おいしさとオペレーションの両方の良さを兼ね備えた1品なんです。

「米のいいところはね、冷凍がきくこと」と大塚先生。

ピザ生地を伸ばして焼いた状態で冷凍しているので、注文が入ってから具材をのせ、10分ほどで焼き上がるそう。
保存がきくのでロスがなく、まとめ買いが続いてパンが売り切れになってしまったときでも、いつでもピザが提供できます。
また、パン作りの方でも、米粉ならではのオペレーションのよさのひみつがたくさん。

米粉だから実現できる
コンパクトなお店作り

仕込み時間が短く、コンパクトな厨房でも作りやすい


米粉の生地は二次発酵が不要なので、一番早いものだと1時間もあれば焼き上がってしまうそうです。
発酵時間が短い分、合間合間で他のパンの仕込みができるので、時間のロスがありません。

また、1回あたりの仕込み量を調整しやすいのもメリットのひとつ。
そのおかげで、厨房設備もコンパクトにすることができます。
今回お伺いしたお店の厨房でも、コンパクトな厨房の中で、次に焼き上がるパンの仕込みやピザの準備を行っていました。

作業の負担を軽減


米粉の生地にも作業負担軽減のひみつがあります。

小麦粉と違ってグルテンがないため、グルテンを強くするために叩いたり、引っ張ったりという作業もありません。

「むしろ力は要らない、力をかけちゃだめ。生地をさわるにしても、ソフトにさわることが大事。米粉はグルテンがないから、逆に潰しちゃいけない。優しさの塊」(大塚先生)

また、重たい生地を持ち上げるといった作業がないことも、働くスタッフにとってはうれしいポイントです。
またグルテンがないことで、器具へのべたつきもなく、洗い物の負担も軽減されるそうです。

失敗から生まれた
おいしい米粉パンの理論

メリットの多い米粉パン作りですが、そのレシピが完成するきっかけは、意外にも失敗から生まれました。
元々は、小麦のパンを扱っていた先生ですが、小麦アレルギーがあるお子様のいる方のお話を聞き、誰でもが食べられるパンを作りたいという思いから、米粉パンの開発を始められたそうです。
米粉になじみがなかったこともあり、悪戦苦闘の日々。

ある日、「いつももうどうせ失敗するからと思って、米粉は高いし、米粉の量を半分にしてみたのよ。でも、いつもの習慣で給水は小麦のパンと同じだけ入れたの。そしたらドロドロになっちゃって、あー失敗したと思ったんだけど、忙しいからそのままにしといたの。後から片付けようと思って見たら発酵してた」(大塚先生)

思わぬきっかけで、米粉パンのレシピに近づき、そこからさらに開発を重ねて、米粉パンの理論を作り上げてきました。

誰でもがおいしいと思えるように

こうして生まれた米粉パンは、小麦アレルギーを持つ方々だけでなく、グルテンフリー先進国である欧米の方々にも人気に。
大塚裕介店長にお話を伺ったところ、お客様の7割近くが外国の方だそうです。

「日本人と違ってグルテンフリーをしている方が多く、(観光に来ても)食べるものがない、食べられないって仰る。(グルテンフリーの)ネットワークがあるみたいで、いろいろ紹介しあったりして、海外の方は結構探してきてくれます」

取材させていただいた日も、2人の外国人の方が、店頭のベンチで焼き立ての米粉ピザを召し上がっていました。
ピザだけでなく食パンや総菜パンも人気で、特に食パンは、ご自宅やホテル暮らしの中で安心して食べられるパンとして、まとめ買いされる方も多いそうです。
日本のお客様にも人気のパンの傾向は同じで、「おいしいものは、おいしいって感じてもらえるんだなってことがわかった」とお話してくださいました。

これから米粉パンを始める方へ

最後に、これから米粉パンを取り扱う方への、大塚先生からのメッセージをお伺いしました。

「おいしいお米を良質な米粉にした製品の開発は、可能性が無限に広がるので、それを学んでくれたらいいなと思います。小麦の代用として考えてはだめ、米粉自体に向き合っていただきたいです」

米粉以外の素材へのこだわりも、大事にされている大塚先生。
「食べておいしいものには力がある」と、誰もが安心して食べられて、そして何よりおいしいと思うものを真摯に追求していらっしゃいます。
まだまだ進化が続く米粉パンの未来は、これからもますます大きく広がっていきそうです。

米粉ユーザーの声

cotta businessユーザーの皆さんの中から、実際に米粉を活用している方にアンケートを実施。
洋菓子店やパン屋、カフェ・料理教室などを運営される69名の方に、米粉活用の実情についてお伺いしました。

Q.米粉商品を扱い始めたきっかけを教えてください


最も多かったのは「グルテンフリーのお客様を呼びたい」という回答。
次に多いのも「自分、家族にアレルギーがあるから」と、米粉の健康面での特徴を意識した回答。
一方「食感を変えたい」とおいしさの面で扱っているお店も多い傾向です。
また、「その他」の中には「米農家なので」「棚田が近いので米を使いたい」といった回答もあり、地域の特性を活かした商品作りをしている様子も伺えました。

Q.米粉商品を扱うことで感じたうれしい効果があれば教えてください


こちらは「客層が幅広くなった」という回答が特に多く、続いて「客単価が上がった」というお店も。
「その他」の中には、「お客様の健康に対する意識が変わった」「グルテンフリーご希望のお客様に喜んでいただけるのはもちろん、年配の方でも食べやすい」といった回答もありました。
また、「米粉の商品について、お客様からいただいた感想があれば教えてください」という設問に対してはお店によってさまざまな回答が。
「小麦粉アレルギーでもおいしく食べられる」「買えるものが増えてうれしい」といった、アレルギーを持つ方からのお声や、「思ったよりも食べやすい」「もちもちしていて本当においしい!」など、おいしさに対するお声も届いているようです。

※2023年12月アンケート実施 cotta businessユーザー対象(N=69)

cottaでみる
米粉レシピ

飲食店ではまだまだ新しい米粉ですが、一般のご家庭では、自分や家族のために健康のために米粉を取り入れているという方が実は多くいらっしゃいます。
cottaサイトには、バラエティに富んだ米粉レシピがたくさん投稿されているので、ぜひ、お店のメニュー開発の参考にしてみてください。

もっと知りたい
米粉情報

ここまで、米粉のメリットをいろいろとご紹介してきましたが、はじめて使う際には不安もたくさん。
そこで、米粉を使う際につまずきやすいポイントについて、cottaが代わりに試してみました。
米粉でチャレンジしやすい代表的なメニューの、小麦粉との違いも詳しくご紹介します!

米粉についての情報発信

米粉タイムズ
https://komeko-times.jp
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