リーンなパン・リッチなパンの違いを知ろう
「リーン」・「リッチ」というパンの分類方法を聞いたことはありますか?
「リーン(Lean)」は「簡素な」、「リッチ(Rich)」は「豊かな・コクのある・濃厚な」という意味で、パンに使われる材料の配合の違いで分類されます。
材料がリーンかリッチかによって、製法・味・食感も異なるので、今回はその違いも見ていきましょう。
リーンなパン・リッチなパンとは
リーンなパン・リッチなパンとは、材料の配合の違いによるパンの分類です。
リーンなパンとリッチなパンに使われる材料の違いを見てみましょう。
リーン
リーンなパンは、小麦粉・イーストなどの酵母・塩・水の基本材料で作られるシンプルなパン(少量の糖分や油脂が含まれていることもあります)。
リーンなパンに分類されるパン
- バゲット
- パン・ド・カンパーニュ
- チャバタ
- プンパーニッケル(ライ麦のパン)
- カイザーゼンメル
- ベーグル
リッチ
リッチなパンは、基本材料である小麦粉・酵母・塩・水の他に、砂糖・卵・バター・牛乳などの副材料が使われているパン。
リッチなパンに分類されるパン
- ブリオッシュ
- クロワッサン
- デニッシュ
あんパンやクリームパンなどの菓子パンや総菜パンは、リッチな生地を使用していることが多いです。
製法の違い
パン作りにおける大事な三つの工程(こね・発酵・焼成)について、リーンなパンとリッチなパンの違いを見ていきます。
リーン
こね
- パンチで生地をつなぐなどして、あまりこねすぎない。
-
写真のように生地にぷりんと張りは出るが、グルテン膜はやや粗く、切れてしまう程度のこね具合。
発酵
- 酵母の餌となる糖分が少ないため、中~低温でじっくり時間をかけて発酵する。
- 低温で長時間発酵させるオーバーナイト法が多い。
焼成
- 色付きを助ける副材料(糖分や乳製品など)がほとんど含まれないため、焼成時には高めの温度でパリッと焼き上げる。
- 膨らむ力が弱いため、クープを入れて膨らむガイドを作り、蒸気を与えながら焼いていく。
リッチ
こね
- グルテンがしっかりつながるまでこねる。
-
写真のように表面がつるんとして、グルテン膜が薄く張る程度のこね具合。
発酵
-
酵母の餌となる糖分が豊富なので、発酵がスムーズに進む。
うっかりすると過発酵になりやすい。 - 酵母量の調整と温度管理が重要。
- こね・発酵・焼成までの工程を一気に行うストレート法、パンの劣化を遅らせるために2段階に発酵を取る中種法が多い。
焼成
- 色付きや釜伸びを良くする副材料が含まれているため、白パンなら150~170℃、ブリオッシュなら200℃前後など、さまざまな温度に対応できる。
- あまり長い時間焼きすぎると、かたくなってしまうので注意が必要。
見た目の違い
リーン系の材料とリッチ系の材料で作った、丸パンを比較してみましょう。
リーン系はシンプルな材料で仕込んだ丸パン。
リッチ系はバターと卵黄も使ったブリオッシュ生地で仕込んだ丸パン。
分割時の生地量はどちらも58gです。
リーン
- 焼き色が薄い。
焼き色を濃くするには、焼き時間を延ばす・焼成温度を上げる・生地にモルトを使用するなどの方法があります。
リッチ
- 焼き色が濃い。
焼き色は生地に含まれる糖分の量が関係しています。
そのためリッチなパンのほうが、濃い焼き色が付きました。
味・食感の違い
リーン
- 小麦本来のうまみと風味を味わえる。
-
断面に大小の気泡が入っており、クラストがしっかりしていてかみ応えがある。
*気泡のあるパンは、かみ応えのある食感になります。
パン自体がシンプルであるため、料理と相性が良く、主食にぴったりです。
リッチ
- バターなど副材料の風味や甘さをしっかり感じられる。
-
断面のきめが細かく、生地はしっとりとしていてやわらかい。
*きめの細かいパンは、ソフトな食感になります。
甘さとコクがあるパンなので、そのままおいしくいただけるものが多いです。
食感を表す「ハード」と「ソフト」
パンの特徴を表す言葉には、「リーン」と「リッチ」の他に「ハード」と「ソフト」があります。
「ハード」・「ソフト」は食感の違いによる表現。
ハード系はリーンなパン、ソフト系はリッチなパンであることが多いですが、完全に一致するわけではありません。
たとえば、日本で好まれている食パンは、その材料から一般的にはリーンなパンに分類されますが、食感はやわらかくソフト系です。
劣化の違い
リーン
- 焼いた当日が一番おいしいとされる。
- 副材料を使わないため、時間がたつとパサパサした食感になってくる。
リッチ
- 焼いた翌日になってもおいしさを保てる。
- 保水性がある砂糖やパンをふんわりさせるバターが含まれるため、しっとりした食感が持続する。
パンの知識を深めてもっとパンを楽しもう
あなたが普段食べているのは、リーンなパンでしたか?それともリッチなパンでしたか?
パンの知識を深めて、パンを買うときや毎日のパン作りを楽しみましょう。