油脂でパン生地はどう変わる?
パンのレシピには、油脂が「入っていないもの」と「入っているもの」があります。
油脂によってパン生地はどう変わるのでしょうか。
今回は、油脂の有無でパン生地に違いが出るのかを比べるため、油脂なしと油脂ありの生地を作って検証します。
今回使用する配合
材料(ベーカーズパーセントで記載)
- 強力粉…100%
- イースト…1%
- 塩…1.5%
- 砂糖…10%
- 水…65%
- 油脂(バター)…15%
強力粉から水までは全て同じ。
「油脂あり」のほうのみ、バターを15%加えます。
比較結果
こね上げ後
油脂なし
- しっかりしていて、生地の伸びが少ないこね上がりに。
- べたつく感じは一切ない。
油脂あり
- やわらかく、生地の伸びを感じるこね上がりに。
- べたつくほどではないが、油脂なしと比べると手にくっついてくる。
- 油脂ありのほうがふっくらとして大きく見える。
一次発酵後、分割
油脂なし
- 生地に伸びがなく、分割と丸めが行いにくい。
- べたつく感じは全くない。
油脂あり
- 生地に伸びがあり、分割と丸めが行いやすい。
- 少しべたつくが、扱いにくいほどではない。
成形
軽く丸め直して型入れ。
油脂なし
- ベンチタイムを取った後でも生地がかたく、伸びが少ないため、丸めにくい。
油脂あり
- やわらかく、生地の伸びもあるため丸めやすい。
二次発酵
発酵器に入れ、35℃で30分間発酵。
どちらも高さは5.9cm。しっかり膨らんでいます。
焼成
ガスオーブン180℃で11分間焼成。
油脂なし
- 高さ6.3cm。
- 油脂ありと比べると膨らみが少ない。
油脂あり
- 高さ7.5cm。
- 二次発酵では同じ高さまで膨らんでいたので、油脂ありが大きく窯伸びしたのがわかる。
断面
油脂なし
- きめが粗い。
- 大きな気泡が目立ち、底部に目詰まりが見られる。
油脂あり
- きめが細かい。
- 気泡の大きさもそろっていて、均一に大きく膨らんでいる。
食感・味
油脂なし
- 弾力がありもちもちしていて、かみ応えがある。
- クラスト(パンの表面の焼き色の付いた外皮のこと)が厚めで、しっかりしている。
- 粉の味をダイレクトに感じられる。
- 翌日は、焼成当日よりパサつく。
油脂あり
- やわらかくきめが細かいため、舌触りもよく食べやすい。
- クラストは比較的薄め。
- バターの風味があるため、粉自体の味は若干ぼやける。
- 翌日もパサつきはなくやわらかい。
まとめ
油脂なしのパンはかみ応えがあり、クラストもしっかりめに焼き上がります。
これは、油脂の入らないレシピで作られることが多いハード系パンの特徴のひとつ。
粉の味も感じられるので、シンプルなお食事系のパンなどにもぴったりです。
油脂ありのパンは生地にやわらかさが加わり、ふわふわ感がUP。
翌日もやわらかさが持続するのは、油脂が水分の蒸発を防ぐため、パンの老化が遅くなるからだと思われます。
やわらかい生地は伸びが良いので、生地を傷める危険が少なく、複雑な成形のものも作りやすいのがうれしいポイント。
初心者の方は、油脂の入っている配合で成形の練習をするのもおすすめです。
油脂なし・油脂あり おすすめレシピ
油脂なし
油脂なしの場合は、しっかりめのクラストや粉の味を楽しめる特徴を生かして、ハード系のパンを作るのがおすすめ。
粉の味を味わいたいときに試してほしい!「リュスティック」のレシピはこちら。
シンプルなパン生地はミルキーなクリームとも相性抜群。「ミルクフランス」のレシピはこちら。
油脂あり
油脂ありの場合は、生地は伸びの良さを生かして、フィリングを詰めたり細かな成形を行ったりするレシピがおすすめ。
フィリングがたくさん入るパンも◎「クリームたっぷり クリームパン」のレシピはこちら。
生地の伸びが良いので、複雑な成形もこなしやすい♪「くるみとクランベリーの三つ編みパン」のレシピはこちら。
他にも、ボリュームのほしい食パンや日持ちさせたいパンにも♪
作りたいパンに合わせて油脂を使いこなそう
他の配合は同じでも、油脂のあるなしで出来上がったパンの表情がかなり変わってくることがわかりました。
どんなパンを作りたいか、どんなパンを食べたいのか?そんなことを考えながら油脂を調整してパンを作るのも楽しいですね。
パン作りの参考になれば幸いです。