開店資金1000万で実家をリフォーム!
姉妹が菓子店を成功させた秘訣
(シモキタシマイ)
目次
(前編)
- 開業資金1000万で実家をリフォーム
- 開店当初、力を入れたのは焼き菓子。その数は常時25種類以上あり!
- 姉妹ともに異業種から転身
- 1日4軒×1年食べ歩いてリサーチ
- 原価率を約30%に抑えるワケ
- 手土産として選ばれるため、資材に1枚20円かけて特別感を出す
お菓子屋さんとカフェ シモキタシマイ
東京都世田谷区の一軒家を改装した菓子店兼カフェ。常時25種類以上の焼き菓子と、生菓子、オーダーケーキなども手がけている。オンラインでの販売、ビストロ営業も行う。11:00〜18:00 無休
https://www.instagram.com/shimokitashimai.cafe/ https://sister-norimana.shopinfo.jp/開業資金1000万で実家をリフォーム
「もともとここは実家なんです。建築士の父が建てた家で、その一角を改装して母が洋菓子店や料理教室をやっていたんです」と話すのは、洋菓子店兼カフェ「シモキタシマイ」を営む藤井典(のり)さん。
その名の通り、藤井さんと妹の柏﨑真(まな)さん二人で始めたお店です。
両親が他界し、父が建てた家と母の店を自分たちで引き継ごうと決めた二人。まずは、大きくリフォームすることを考えます。厨房兼店舗だった場所を販売スペースにし、梱包場所をカフェに。さらに、もともと子ども部屋だった場所を厨房にするという大きな改装です。
「母が使っていた厨房機器やショーケースなどをそのまま使って経費を抑えたぶん、開店資金の1000万円のほとんどをリフォームに使いました」(藤井さん)
いちばん費用がかかったのは、もともとガスや水道のない部屋を厨房に変更すること。中庭をまたぐようにしてガス管類を通さなければならなかったからです。
開店当初、力を入れたのは焼き菓子。
その数は常時25種類以上あり!
なぜ、厨房の広さと場所に妥協をしなかったのでしょう?
「たくさんの種類のお菓子を販売したいと考えていたので、費用をかけてでも、きちんと確保したいと思ったんです」(柏﨑さん)
店頭を見ると、ずらりと並ぶ焼き菓子や生ケーキ。焼き菓子は常時25種類以上あり、ケーキも定番や季節の果物を使ったものまでバリエーション豊富です。
「住宅街にあるお店なので、毎日食べても飽きないお菓子を作りたい、と。『いつものとなり』というコンセプトを掲げて、日常使いできるお菓子を作るようにしました」(藤井さん)
姉妹ともに異業種から転身
姉妹共に、中学・高校と実家で暮らしていたころは母親直伝でお菓子作りを学んでいました。しかし、成長するにつれ、それぞれの仕事につくことに。藤井さんは国際協力分野の専門家としてカンボジアに住んでいました。
一方、柏﨑さんは、大学卒業後に採用コンサルティング企業やIT広告企業に勤務。しかし、お母様の病気がわかってからは店を手伝いながら、製菓学校へ通うことに。しかも、仕事を続けながらというから驚きです。
1日4軒×1年食べ歩いてリサーチ
それぞれ仕事を辞めて「シモキタシマイ」に専念してからは、多くの店をリサーチし、食べ歩いては味の研究をしたと言います。なんと、1日4軒回って食べ続けていたこともあるそう。
「開店までの1年間は、とにかくリサーチしていました。SNSを見て話題のお店をまわったり、写真映えするお菓子がどんなものなのかを調べたり。今思えば、両親が亡くなったことを、必死に二人で食べて乗り越えたのかなと思います」(藤井さん)
「二人とも味の好みが同じだったので、食べ歩きながら方向性を決めていけたのもよかった。というのも、母のレシピは16年前のものだったので、ベースにしつつも変えていく必要があったんです。お店の立地を考え、親しみのある味で、かつ、時代にも合わせたものを考えていきました」(柏﨑さん)
原価率を約30%に抑えるワケ
お菓子の価格は、気兼ねなく購入できるようにと焼き菓子は500円前後、ケーキは1000円前後を基準にしています。
「原価率は20〜30%に抑えるようにしつつ、味は絶対に妥協せず。二人そろっておいしいと思えるものだけを販売するようにしましたし、それは今も変わりません」(柏﨑さん)
「まず地域の方たちに知ってもらって、日常的に来てもらえるようにと考えました。ここに来ればいつでもおいしいお菓子があって、ちょっとした手土産にもなるように、と」(藤井さん)
手土産として選ばれるため、
資材に1枚20円かけて特別感を出す
店の看板にもなっている女の子二人のイラストは、柏﨑さんが描いたもの。ショップカードやパッケージにも取り入れています。焼き菓子に貼られているのは、箔押しのステッカー。
「これはお金をかけています。1枚20円くらい。きちんとしたパッケージなら手土産として持っていきやすいだろうし、信頼感も増すだろうと考えてのことです」(藤井さん)
母から受け継いだレシピと技術。さらに、立地や時代を考えてのブラッシュアップが、シモキタシマイの味を作っていったのです。
次回は、後編(1月下旬公開予定)として、集客のコツや人材確保のポイントのお話をお伝えします。
後編の目次
- SNSを活用して宣伝費ゼロに
- スタッフは総勢14名! 人材募集もInstagramがメイン
- 経営管理・財務・人事労務関連業務はプロに任せず、経費を削減
- 売上の拡大とともに、機材や内装装飾を充実させる
- 子育てと店舗経営を両立する秘訣
- お店のコンセプト設計は、必ず自分たちの手で
取材・文/晴山香織 撮影/忽滑谷なつみ