から揚げ店からドーナツ屋への転身!
業態変更による成功の裏側とは?
(Fluffy Donuts)
目次
後編では、細かな店作りのコツを深掘り! 2月下旬公開
揚げたてドーナツのお店 Fluffy Donuts
天然酵母とイースト生地を使った手作りの揚げたてのドーナツを提供する専門店。揚げたて5種とデコレーション8種を常時販売し、新作も開発し続けている。テイクアウトのほか、イートインも可能。11:00〜21:00 無休
https://www.instagram.com/fluffy__donuts/ https://fluffydonuts.business.site/大手ドーナツ店との差別化は「揚げたて」にこだわること
東京の千歳烏山駅から伸びる商店街。その一角に揚げたてのドーナツを販売する「Fluffy Donuts」があります。かわいらしい雰囲気で、多くのお客さまが足をとめていますが、じつはここ、以前はから揚げ店だった場所。
「閉店を機に別の業態を考えることになったんです。その際に思いついたのが『ドーナツ』でした」と店長の豊川さんは話します。
この店の母体となる会社では、さまざまな業態の飲食店を経営していて、豊川さんはそのなかでカフェを運営していました。店長として店を見事に軌道にのせていたことから、から揚げ店の業態変更を任されることになったといいます。
「飲食店を手がけている会社のノウハウと、自分やスタッフが培ってきたスイーツに対する知識。それらででできることを考えていきました。さらに、もともと使っていたフライヤーを活かせば初期投資も抑えられる。いろいろな要素から、ドーナツをやってみたいと提案したんです」
もともと厨房で使っていたフライヤーは、決して安価なものではありません。リニューアルにあたり、既存の厨房機器はできるだけいかせるほうが経費を抑えることができます。
「大手のドーナツ店では『揚げたて』のものは出していません。事前に揚げたり焼いたりしたドーナツを並べている店が多い。そのなかで揚げたてを提供すれば差別化できるとも考えたんです」
あえて生地はイーストだけに限定。種類を増やさずに「揚げたて」が伝わりやすいものだけに限定したそう。
「イースト生地を使ったふわふわのドーナツだけにすれば、作業工程もシンプルになります。スタッフのオペレーションも考えやすい。最初から欲張らずに、確実にできることに専念するようにしました」
レシピ開発は、大手製粉会社の力をフル活用
豊川さんが商品開発をしながら試作を繰り返していたころ、日清製粉プレミックス株式会社のレシピ開発支援のプロジェクトがあることを知ります。
「それまでケーキ類は作ったことがあったものの、イーストを使って発酵させたり、揚げたりするというお菓子を作ったことがなかったんです。悩んでいた時にcottaさんのサイトで支援の募集を見つけ、とにかく藁にもすがる思いで応募しました」
日清製粉プレミックス株式会社(以下:日清製粉プレミックス)は、業務用のプレミックス(=調整粉)の開発や製造、販売を手がけている会社。ドーナツに使う粉の開発も得意で、あらゆるタイプの試作に基づいた知見があります。
「Fluffy Donutsさんが目指す『揚げたてドーナツ』を作るために、原料や設備について、どのようなものがいいかの情報提供をし、やり取りを重ねていきました。また、商品については、揚げた直後のタイミングでの開発と試食を何度も繰り返し、どんなものが最適なのかを考えていったんです」と営業部部長の菅野郁夫さんが話します。
「どれくらいの生地を事前に仕込んでおけばいいのか、こねるパワーはどれくらいがいいのか、季節による発酵時間の調整にどう対応するか……あげればキリないくらい本当に細かなことまで相談して、教えていただきました」と豊川さんも振り返ります。
必要最低限の機器で最大のパフォーマンスを上げる
さまざまなやり取りをするなかで、新たな機器の導入も検討していきました。フライヤーはすでにあるので、まずは生地を作るミキサーと発酵器を購入することに。
「ミキサーや発酵器は、何を選べばいいかわからなくて。日清製粉プレミックスさんからは、サイズ感はもちろん、メーカーごとのメリットデメリットまで教えていただいたので、とても助かったんです」と豊川さん。
さらに、日清製粉プレミックスのラボで研修を兼ねた共同試作をしながら、製造のポイントや注意点などをすり合わせ、レシピを考案していきます。イースト生地の扱いなど、細かいレクチャーを受けたのちに実際に店舗で試作。ラボとは使っている機器も環境も違うので、さらに調整を重ねて商品化へと繋げていったのです。
「最初は、揚げたてドーナツにこだわりたいという気持ちはあったものの、本当に実現できるのかわからない状態でした。でも、日清製粉プレミックスさんとのやりとりを重ねていくうちに、やっぱり専門店としてやっていこうと気持ちを固められたのは大きかったと思います」
カフェで積み重ねていた豊川さん自身の知識に、大手製粉メーカーのバックアップが加わったこと。さらに、既存の機器を活用して初期投資を抑えるなどしながら、見事にから揚げ店から「Fluffy Donuts」へと変貌できたのです。
次回は、後編(2月末公開予定)として、人件費を抑えるコツや集客のポイントなどをお伝えします。
後編の目次
- 1日の売り上げ目標は7万円に設定
- スタッフ2人で製造から販売まで全てをまかなう
- 客層に合わせて店頭の看板をのれんに変更
- 軌道にのってからバリエーションを増やす
取材・文/晴山香織 撮影/忽滑谷なつみ