バターの形状はお菓子によって違う
お菓子作りに欠かせないバター。作るお菓子によって、固形のまま使ったり、クリーム状にしたり、溶かしたりと、形状はさまざま。
お菓子によって形状を変えて使うのはなぜなのでしょう?
固形のバター・クリーム状にしたバター・液体にしたバターの特性を、代表的なお菓子を例に出しながら解説します。
バターの特性を知って、お菓子作りに役立てましょう!
固形で使うバター
バターを固形のまま使うお菓子の代表は、パイ生地。
折り込みのパイ生地は小麦粉の生地(デトランプ)でバターを包み、それを伸ばしては折り畳むという作業を繰り返して層を作り上げます。
バターには、粘土のように自由に形を変えることができる「可塑性(かそせい)」という性質があります。
この性質のおかげで生地に包まれたバターは薄く伸びて折り重なり、層を作ることができるのです。
バターは13〜18℃のときに可塑性に。薄く伸ばすのに適した温度は13℃前後といわれています。
パイ生地を作るときは冷蔵庫から出したバターをめん棒でたたいてかたさを調整し、13℃前後の温度を保ちながら折り込み作業を行うことが大切。
バターは温度が低いとかたすぎて割れてしまったり、温度が高いと溶けてしまったりして可塑性を失います。
温度に気を付けて作業を行いましょう。
クリーム状で使うバター
クリーム状で使うバターには、空気を含ませて作るお菓子と空気を含ませずに作るお菓子の2種類があります。
1.空気を含ませて使う
クリーム状にしたバターに空気を含ませて作るお菓子の代表は、パウンドケーキやマフィンなど。
バターには、クリーム状にしてよく混ぜると細かい気泡をたっぷり含むことができる「クリーミング性」という性質があります。
バターと砂糖をよく混ぜることで空気が入り、オーブンで焼いたときにその気泡が膨張して生地が膨らむのです。ふんわりとした軽い食感を生み出すことができるのは、この性質によるもの。
最初はクリーム色のバターですが、空気を含むと白っぽく変化していきます。
バターがかたすぎると空気を含ませることができないので、作業を始める前に常温に戻すことが大切。
しかし、やわらかくしすぎてしまうとクリーミング性が失われてしまい、砂糖を加えて混ぜても空気を含ませることができなくなってしまいます。
適正なやわらかさはゴムベラがすっと入る程度で、バターの温度は20〜23℃が目安。
空気を含ませるのに失敗すると、焼き上がりの膨らみが悪かったり、きめが粗くなったりしてしまいます。
2.空気を含ませずに使う
クリーム状にしたバターに空気を含ませずに作るお菓子の代表は、クレメ法で作るクッキーやタルト生地など。
クリーム状にしたバターが生地中に散らばり、グルテンの形成を抑えたり、デンプンの結着を防いだりする性質を「ショートニング性」といいます。
サクサクとした食感になるのは、バターのこの性質によるもの。
クリーム状にしたバターに砂糖を入れたら、余分な空気を入れないように注意して混ぜましょう。
やわらかいクリーム状のバターが適しているため、バターの温度は20℃前後に。
バターが溶けてしまうとショートニング性が失われて、生地がかたくなってしまう原因となります。
*固形のバターにもショートニング性があるため、冷たい固形状のバターを用いるサブラージュ法で作るクッキーもサクサクとした食感になります。
液体で使うバター
バターを液体にして使うお菓子の代表は、マドレーヌやフィナンシェ、ジェノワーズなど。
液体のバターには、可塑性・クリーミング性・ショートニング性などはありません。液体のバターを加える理由は、バターの風味としっとりとした食感をお菓子に与えるため。
液体のバターは最後に加えることが多く、温かい状態で生地に入れると均一に混ぜることができます。
バターの性質を知って、お菓子作りをより楽しもう!
バターは温度によって発揮する性質が異なります。
作りたいお菓子の生地に合わせて、形状を変える必要があることを理解していただけたでしょうか。
バターの性質を損なわないためにも、そのお菓子に最適なバターの温度ややわらかさを理解していることが大切。失敗も防げ、お菓子作りの成功につながるはずです。
ぜひバターの性質を覚えて、お菓子作りを楽しんでください!