読めば解決!スポンジ生地とロールケーキ生地について知ろう
スポンジ生地とロールケーキ生地。この2つの違い、ご存じですか?
似たような生地だからと、スポンジ生地をシート状に焼いてロールケーキに使ったり、ロールケーキ生地をデコレーション型で焼いてショートケーキに使ったりすることはできるのでしょうか。
今回は、スポンジ生地とロールケーキ生地の違いを確認していきましょう!
ひと目でわかる!表で違いをチェックしよう
まずはスポンジ生地とロールケーキ生地の材料や配合、焼成温度や時間を表にしてみました。
いろいろな配合がありますが、分かりやすく比較するためにかなりシンプルな配合にしています。
※焼成温度と時間はこのレシピでの目安です。
スポンジ生地とロールケーキ生地の違いを詳しく確認しよう
表からわかる、2つの生地の違いを詳しく見ていきましょう。
材料・配合
スポンジ生地もロールケーキ生地も、どちらもほぼ同じ材料を使用します。
基本は卵・砂糖・薄力粉。そして油脂や牛乳など。しっとりさせるために砂糖に水あめ・転化糖・はちみつを加えたり、油脂と共に(または代わりに)牛乳が加えられたりします。
あわせるクリームとのバランスによってどのような生地にするかということになるのですが、今回の焦点は、重ねて組み立てるか、巻くかの違い!
そこに焦点を置いたときに大きく異なるのは、上の表からも分かるように薄力粉の割合なんです。
ロールケーキ生地のほうが、卵に対しての薄力粉の量が少ないですよね。
では、どうして薄力粉の割合を変えるのでしょうか。
デコレーションケーキ型のように厚みがある型で焼くときには、それを支える柱が必要になります。
それを担うのが薄力粉。たくさんの気泡で膨らんだ生地を支えるだけの薄力粉が必要になるのです。
一方でロールケーキ天板に広げて薄く焼き上げるロールケーキ生地には、この柱はそれほど必要ありません。
逆にこの柱がロール状に巻くのを邪魔してしまい、生地が割れる原因となってしまうのです。
焼成温度・時間
薄力粉の他に大きく異なるのが、焼成温度と時間です。
厚みのある生地を高い温度で焼くと、中まで火が通って膨らみきる前に表面ばかりが焼き固まってしまいます。
しっかり膨らまない、表面や底が焦げる、中が焼けていない、などの問題が生じる原因の一つ。
上記の理由から、デコレーション型で焼くスポンジ生地は少し低めの温度で長時間焼く必要があるのです。
これに対して薄い生地は高温短時間が基本。低い温度でじっくり焼いていると、水分がどんどん奪われ、ぱさぱさのかたい生地になってしまうからです。
実証!スポンジ生地でロールケーキを巻いてみた
「そうはいっても本当に無理なの?」という疑問、ありますよね。やってみましょう!
表の配合で作った生地でロールケーキを巻いてみました。
生地の見た目
スポンジ生地
一見きめ細かくふんわりソフトで、ちゃんとしなって良さそうな雰囲気。でも厚みがしっかりしているので、ロールの芯にするほど巻けるか…!?
ロール生地
しっとりソフトな生地。やわらかく曲がる。
巻いてみた
スポンジ生地
芯を作るのに苦戦。やわらかいが弾力があり、巻き込もうとすると少しずつひびが入ってじわじわと全体に広がる。
ロールケーキ生地
芯を作るために中心へ巻き込んでも、しなやかに曲がる。
巻き終わり
スポンジ生地
とりあえず強引に巻き上げると、巻き終わりのほうもじわじわ割れてきてしまった。
ロールケーキ生地
巻き終わりまで、しなやかに巻ける。
まとめ
スポンジ生地で巻いたロールケーキを、しっかり冷やしてカット。
今回は最初に割れた部分が真下に来ているのでそれほど目立たなくなっていますが、最後のひび割れはなかなか目立ちます。
そして見た目だけではなく食べたときも、もう少ししっとりさとソフトさがほしい。
ロールケーキ生地には、ロール状に巻くための配合がある!ということがよくわかる結果になりました。
実証!ロールケーキ生地でショートケーキを組み立ててみた
今度はロールケーキ生地でショートケーキを組み立ててみましょう。
スポンジ生地で組み立てたショートケーキとの違いはあるのでしょうか。
生地の見た目
スポンジ生地
見た目からふんわり感が伝わる焼き上がり。全体にきれいに膨らみ、腰折れもない。
ロールケーキ生地
粉が少ないので膨らんだ生地が支えきれず、中央がくぼんだり、側面が腰折れしたりしている。
スライスしてみた
スポンジ生地
やわらかく、適度な繋がりが感じられる。
ロールケーキ生地
やわらかさはあるものの、このまま持っていたら割れてしまいそうなもろさを感じる。
シロップをうってみた
スポンジ生地
シロップを含み、程よくしっとりとしていく。
ロールケーキ生地
シロップを含むと、さらにもろくなってしまいそうで少々不安。
完成ケーキを持ち上げてみた
スポンジ生地
やわらかいけれど、持ち上げての移動も問題ない。
ロールケーキ生地
スポンジ生地のものよりシロップを減らしたにもかかわらず、回転台の上に水分が…。全体的にとてもやわらかく、持ち上げるのが怖い。
まとめ
2つのケーキをカットして、ボードの上に並べてみました。
ロールケーキ生地のほうは、すでに支えきれず少し曲がってきています。
ほとんど力を入れずにあてたフォークが崩れるようにするすると入っていくほど。
ロールケーキ生地で作ったショートケーキを食べてみると、生地感が物足りなく、クリームとのバランスが悪く感じます。
シロップなしで組み立てるともう少しマシかもしれませんが、残念な出来栄え。
こちらの検証でも、スポンジ生地は生地を重ねて組み立てるケーキに合った配合だということがよくわかる結果になりました。
違いを知れば、失敗知らず!
今回のコラムでは、スポンジ生地とロールケーキ生地の違いを、実際に作ったものを見せながら解説しました。
違いをより実感していただけたのではないでしょうか。
配合の違い、焼成温度・時間の違い。どうして違うのか、何のために変えているのか、そこを理解しながら作るとイメージしやすく、失敗も減ると思います。
「知らなかったー!」という方も、「話には聞いたことあるけれど…」という方にも、今回のコラムがお役に立てばうれしいです。