常温ってよく聞くけれど…
お菓子作りをスムーズに行うために大切な下準備。その下準備でよく目にするのが『常温に戻す』という言葉です。
これ、とてもよく使われる言葉なのに、意外と分かりにくくないですか?
常温って何度?なぜ常温に戻すの?夏も冬も同じなの?
今回は、そんな常温について考えていきたいと思います。
常温とは
お菓子作りで一般的に「常温」といわれるのは、大体20~25℃といったところ。
『熱くもなく冷たくもない温度』と表現されます。
「常温」という言葉はさまざまな分野で使われており、それを定めているところによって温度の差(幅の違い)があります。
なぜ常温に戻すの?
常温に戻す必要がある場面を確認しましょう。
冷たすぎるとかたくて混ぜられないとき
バターやクリームチーズなど、冷えたままだとかたいものは、ゴムベラや泡立て器で混ぜることができる状態まで戻す=やわらかくする必要があります。
指で軽く押さえると、へこむくらいが目安です。
画像で、バターの温度とかたさを見てみましょう。
常温と呼ばれる温度帯は、程よいクリーム状にできます。
また、バターはこの状態のときに空気を含みやすくなるので、気泡を取り込みたいときのポイントでもあります。
温度を下げたくないとき
シュー生地に加える卵、マフィンに加える牛乳のように、生地の温度が下がると混ぜにくくなったり、かたくなってしまったり悪影響が出てしまうとき。
生地の温度が下がらないようにするのが目的です。
乳化させたいとき
バターと卵を分離させずにつなぐためにはさまざまな注意点がありますが、温度もその一つ。
温度が低いとバターが締まって卵と馴染めず、分離してしまいます。
バターは、温度によってそのかたさや特性を変えるので、特に気を付けたい材料。
溶かしバターを使わないレシピは、この常温と言われる温度にすると、混ぜやすく、空気も含みやすく、さらに卵と乳化しやすくなりますが、これより温度が高くなると溶け始めます。
一度溶けてしまうと二度と元の状態には戻らないため、この常温という温度帯が理想的なんです!
夏と冬の常温の違い
お菓子作りの『常温』は、夏と冬で違うのでしょうか?
バターを例に考えてみると、夏でも冬でも固まる温度や溶ける温度に違いはなく、同じ温度のときは同じ状態になります。
そういう意味では違いはありません。
でも、作る環境(室温)が異なると、気をつけなくてはならないことがあります!
エアコンをつけていても、夏と冬ではやはり温度差がありますよね。
そうすると、室温に置かれているボウルや泡立て器などの器具の温度からすでに違います。
そして、室温で保存されている砂糖や、その他の材料も温度が違います。
作業する室温の影響も加わり、混ぜ合わせていく生地の温度の差はとても大きくなります。
パウンドケーキの生地で考えてみましょう!
バターと砂糖をすり混ぜていくと、暑ければどんどん温度が上がっていきますし、寒いと下がっていきます。そうしたときに加える卵の温度が同じで大丈夫でしょうか?
こう考えると、夏と冬の『常温に戻す』作業の意味合いは、全く同じとは言えないと思うのです。
悩んだら全体の温度をイメージして
では、どうするのがよいのでしょう?
作っている生地全体の温度をイメージしてみるとわかりやすいと思いますよ。常温に戻す理由も参考に…。
夏、温度を上げ過ぎたくないものは後から加えるもの(パウンドケーキの卵など)を少し冷え気味で準備すると、温度の上昇を抑えられますよね。
冬、温度を落としたくない生地は後から加える材料(シュー生地の卵など)を少し温かめにすると、温度を下げずにすみます。
室温27℃で温度変化を確認!
お菓子を作るにはちょっと暑めの室温で試してみましょう。
条件
- バター・砂糖・卵は同分量を用意。
- 砂糖は、室温保管のものを使用。
- 卵は、最初に冷蔵庫から出して溶きほぐしておく。特に温めもせず、少し低めの18℃で使用。指を入れるとひんやり冷たい。
*最終的には小麦粉を入れて、パウンドケーキにしました。
工程と温度変化の流れ
- バターは薄めに切って、常温に戻した21℃でスタート。
- 泡立て器に持ち替えた時点で、22℃に。
- 室温で保管している砂糖をすり混ぜていくと、25℃に上昇。
- 卵を全て混ぜ終えた時点で、生地温は24℃になっていました。
*薄く切ると、中心と外側の温度の差が少なく戻せます♪
バターは、30℃近くなると溶け始めます。
卵の温度を25℃近くまで上げて使っていたら、最終的にはバターが溶け始めるくらい温度が上がっていたかもしれません。
夏は○℃、冬は○℃にする!!と言えるものでもないので、「今日はバターが溶けちゃいそうだなぁ…」「今日は冷えて固まっちゃいそうだなぁ…」というイメージが大事。
基本は『熱くもなく冷たくもなく』なので、その日の室温が夏や冬のように暑かったり寒かったりしたら、ちょっと調節するくらいの感覚で大丈夫です♪
動画でおさらい
最後に
今回はお菓子作りで大切な「常温」について解説しました。
少しでもお役に立てたら、うれしいです。