「予熱」のやり方、ご存じですか?
お菓子やパンを焼くときに、必ず必要になる予熱。
でも予熱って、どうして必要なのでしょう。
予熱しなかったらどうなってしまうのかご存じですか?
今回のコラムでは、予熱の意味や必要性、「余熱」との違い、予熱のやり方や落とし穴など、焼成の工程で大切な予熱について確認しましょう。
予熱とは
予熱とは、その字の通り「予め熱する」こと。
パンやお菓子のレシピには「焼成温度」が記載されていると思いますが、オーブンを前もって必要な温度に上げておくことを意味します。
余熱との違い
「よねつ」には「予熱」と「余熱」という漢字がありますが、一文字違うだけで全く違う意味になってしまうので気をつけましょう。
「余熱」は加熱後に残っている熱のこと。
コンロの火を切った後、オーブンを切った後、オーブンから出した後に、余熱で火を通すなどと言いますね。
予熱が必要な理由
パン・お菓子作りでは、どうして予熱が必要なのでしょう?
そもそも「焼成温度」は、最初からその温度であることが前提。
そのパンやお菓子に合った温度が記載されているので、オーブンに入れた時にその温度であることが重要なのです。
予熱のできていないオーブンに入れるということは、食材を低い温度で焼き始めることになります。するとどうなるでしょう。
例えばバターを使ったクッキーなら、火が入る前にバターが溶けて生地が緩みます。形が悪くなり、油が滲み、もちろん食感も損なわれてしまいます。
パイ生地は、せっかくの層からバターが流れ出てしまいます。
スポンジ生地は、本来オーブンの熱で細かな気泡が膨張して生地が膨らみ、たんぱく質の変性やデンプンの糊化、そして水分が蒸発して焼き固まる生地。それを低い温度でじっくり焼き始めたら、気泡は抜け、本来の膨らみは得られないでしょう。
パン生地は、60℃に達するまでは発酵が続きます。つまり過発酵の状態になってしまうのです。そこから焼成にさらに時間がかかるとなると、想像しただけでおいしくなさそうですね。
焼き上がるまでに時間がかかってしまうと、生地が乾燥したりかたくなったりしてちゃんと焼くのは困難。
最終的にただ焼けていれば(火が通っていれば)良いのではなく、オーブンの中でそれぞれ変化していくので、温度は非常に大切なのです。
予熱のやり方
我が家のオーブンを使って、予熱の設定方法をご紹介します(※製品によって異なります。各メーカーさんの取扱説明書に従ってください)。
予熱完了までには時間がかかるので、余裕を持って開始してくださいね。
レンジ機能付きの電気オーブン(オーブンレンジ)の場合
- オーブン機能を選択
- 予熱ありを選択
- 温度設定
- 予熱後の焼き時間を設定
- スタートボタンを押す
- 生地ができる前に予熱完了が目標
ガスオーブンの場合
- 電源を入れ、予熱を選択
- 温度設定
- 予熱後の焼き時間を設定してスタートボタンを押す
ガスオーブンは、電気オーブンより圧倒的な速さで予熱が完了します。
予熱の落とし穴
ちゃんと予熱をしたのにうまく焼けない、設定時間より大幅に時間がかかるということはありませんか?
これは、予熱したつもりでも実はできていないことが多いから!
家庭用オーブンは予熱完了を知らせてくれるものが多いですが、残念なことに実際には設定温度に達していないことがほとんど。
私はよく生徒さんに、「予熱できたよ詐欺に気をつけて!!」とお話ししています(笑)。
これを確認するには、庫内温度計を使うのが最も確実。
予熱が上がっているかの確認はもちろんのこと、オーブンの設定温度と庫内温度の誤差を知ることができます。
※オーブンを180℃設定にしても庫内が170℃にしかならない、ということもあるからです。
予熱する際にオーブンの中に入れて予熱を開始。焼成中も入れておけば、温度変化を確認できます。正しい温度で焼くための必需品!!
では現実を見てみましょう。
9分間ほどで予熱完了のお知らせが鳴り、画面では210℃の予熱が完了しています♪
ただ、庫内温度計を見ると……え?130℃??うそでしょ?って思いませんか。
(このオーブン、初期はここまで酷くなかったんです。でもこんなこともある良い例!!)
これで焼き始めても、うまくいくわけがありません。
あなたの失敗は生地作りのせいではなく、これが原因かもしれませんよ?
さらに20分間加熱を続けて210℃に到達。
ここでもう一つ、焼成前の重要なポイント!!
上の画像では210℃まで上がっていましたよね。生地を入れるためにオーブンの扉を開けて手早く閉めた、その後の庫内温度が下の画像。なんと170℃まで下がっています。
庫内が小さいため、温度変化が激しい家庭用のオーブン。そして電気オーブンは、一度下がった温度を上げるのにどうしても時間がかかってしまう。オーブン扉の開閉は、これだけ影響を与えるのです。
つまり、焼くのに必要な温度に予熱をしても、生地を入れるために扉を開けたら温度が下がってしまう。
これを解決するために、焼成温度の20~30℃高めで予熱温度を設定してくださいと書いてあるレシピがあるのです。
高めの温度で予熱をして生地をオーブンに入れたら、実際の焼成温度に変更するのを忘れずに(一度取り消さないと温度変更できない機種もあるようなのでご注意を)。
ガスオーブンは電気オーブンより速く温度が上がりますが、やはり予熱は少し高めで設定するのが〇
焼成時の温度変更も忘れないようにしてくださいね。
ちなみに我が家のガスオーブンは210℃まで約4分間で予熱完了のお知らせ。実際の庫内温度は180℃だったので、さらに2分間放置して210℃に達しました。
予熱時に天板は入れる?入れない?
予熱時に天板を入れておくのが良いかどうかも、よく質問があります。
型を使うパンやお菓子(パウンドケーキやマフィンなど)は、前もって天板を入れておくのがおすすめ。下火が弱いことが多い家庭用のオーブンをフォローできます。
庫内温度を下げる要因を減らすことにもつながるので、天板は先に入れておくと良い場合が多いと思います。
天板に並べるパンやお菓子(クッキーなど)は、もちろん焼成時に入れればOKです。
予熱は成功の第一歩
今回お見せした電気オーブンは長い間使っているのでなおさらかもしれませんが、これまで使ったどのオーブンでも、予熱完了お知らせ時に予熱が上がりきっていることはほぼありませんでした。
予熱がしっかりできて、温度が安定してから焼成することは成功の第一歩ともいえるでしょう。
そしてそれをきちんと把握するための庫内温度計は、ぜひおすすめしたいアイテムです。
今回お話しした5つのポイントを改めて確認!
- 予熱は余裕をもって準備しておく(家のオーブンが何分間くらいで上がるのかチェック)
- 焼成温度より、約20~30℃高めに設定する
- オーブンの開閉は手早く、型を使う場合は天板を入れて予熱(例外アリ)
- 庫内温度計で正確に温度をチェック
- 生地を入れたら焼成温度に変更するのを忘れない!!
皆さんのオーブン焼成のヒントになれば幸いです。