パン作りで使う砂糖
パン作りに必要な材料の一つ、砂糖。
砂糖の役割は、実はパンに甘みを加えるだけではありません。
今回は、パンに砂糖を入れることによって得られる効果を解説し、砂糖の量を変えて焼き比べた結果をご紹介します。
砂糖の役割と注意点
パン作りにおける砂糖の役割
甘みを付ける
砂糖の甘みがパンの甘さとなり、風味を付けます。
パンを膨らませる
酵母(イースト)は、砂糖の主成分であるショ糖をブドウ糖と果糖に分解します。
それらを栄養としてアルコール発酵を行い炭酸ガスを発生させるのが、パンが膨らむ仕組みです。
小麦粉のでんぷんなどにも糖が含まれているためイーストは働きますが、砂糖が配合されていればよりスムーズに発酵します。
焼き色を濃くする
砂糖が多くなるほど焼き色が濃くなります。
材料に含まれるアミノ化合物と砂糖に含まれる還元糖を加熱すると、化学反応(=メイラード反応)が起きます。
このメイラード反応によって、香ばしい風味と茶色い焼き色が付くのです。
また、砂糖がカラメル化することでも焼き色が濃くなります。
しっとりさせる
砂糖には水を吸着して保持する保水性があります。
焼成時にパン生地の水分を引きつけて蒸発させにくくするため、しっとりと焼き上がります。
老化を遅くする
パンは時間が経つと水分が蒸発し、小麦粉のでんぷんが老化してかたくなります。
保水性のある砂糖を入れることで水分がでんぷんの構造内にとどまり、かたくなりにくくなります。
砂糖の入れ過ぎには注意
砂糖は酵母の栄養になりますが、多く入れ過ぎると酵母の働きの邪魔をしてしまい、発酵力が弱まります。
砂糖の量が粉量の10%までは発酵力が増しますが、10%を超えると徐々に発酵力は衰えていきます。
酵母の量を増やしたり、発酵時間を長くしたりして、工夫しましょう。
砂糖を15%以上配合する場合は、耐糖性イーストを使うのも一つの方法です。
パン作りで使う砂糖の種類
パン作りに使用する砂糖は、種類がいろいろ。
砂糖の種類は、主に原料と製法で分類されます。
砂糖について
砂糖の種類を細かくご紹介する前に、砂糖という食品についてご説明します。
原材料
砂糖の原材料は、主に二つ。
「さとうきび」と「てんさい(ビート、さとう大根)」です。
製法
製法は二つあります。
絞り汁をそのまま煮詰めた「精製度の低いもの(含蜜糖)」と、精製して不純物を取り除いた「精製度の高いもの(分蜜糖)」です。
では、砂糖の主な種類を見ていきましょう。
グラニュー糖
原材料
主にさとうきび。
「ビートグラニュー糖」として、てんさいを原料としているものも。
製法
精製度が高い分蜜糖。
特徴
さらさらしている。
すっきりした甘さでくせがない。
外国で一般的に使われている。
上白糖
原材料
さとうきび・てんさい。
製法
精製度は高い分蜜糖。
特徴
グラニュー糖よりしっとりしていて、甘みが強い。
日本で一般的に使われている。
三温糖
原材料
さとうきび・てんさい。
成分は上白糖とあまり変わらない。
製法
一度精製したものを煮詰めてカラメル化し、茶色く色を付けている。
精製度が高い分蜜糖。
特徴
白砂糖よりはコクと香ばしさがある。
きび砂糖
原材料
さとうきび。
製法
精製されているが、黒糖よりは精製度が低く、ミネラル分などが残っている。
特徴
さとうきび本来のコクと甘みがある。
黒糖
原材料
さとうきび。
製法
さとうきびの搾り汁をそのまま煮詰めていて、黒褐色で蜜分を多く含む。
特徴
ミネラルが豊富で濃厚なコクと甘み、強い風味がある。
てんさい糖
原材料
てんさい。
製法
精製度が低い含蜜糖。
特徴
ミネラルが豊富。
やさしい甘さがある。
パン作りに適した砂糖は?
パンのレシピなどに表記されている砂糖は、特に記載がない場合は上白糖を使います。
上白糖は、作る過程で転化糖(ショ糖を果糖とブドウ糖に分解したもの)を少し配合したもの。
*ショ糖は砂糖の主成分で、純度はグラニュー糖が最も高いです。
この転化糖によって、パン生地がしっとりした質感になります。
また、保水性があるためパンがかたくなりにくく、焼き色も付きやすいです。
そのため、パン作りに適しているといえます。
しかし実際には、パンに配合する砂糖の量では、種類ごとにそこまでの差は出ません。
迷う場合は上白糖を使い、こだわるなら作りたいパンやお好みによって使い分けるのがいいでしょう。
砂糖の量を変えて焼き比べ
砂糖の量によって、パンの焼き上がりなどにどのような違いがあるのか、実際にパンを焼いて比較してみましょう。
共通の材料
- 強力粉…150g
- 水…96g
- ドライイースト…2g
- 塩…2g
- 無塩バター…10g
- 砂糖(上白糖)…下記参照
砂糖の量
A…砂糖なし
B…砂糖…9g(6%)
C…砂糖…18g(12%)
レシピ
参照したレシピ「パウンド型食パン」はこちら(分量は異なります)。
比較の結果
生地ごね
A…乾燥しやすい。
B…こねやすい。
C…ベタベタする。
一次発酵
*一次発酵では、それほど差が出ませんでした。
二次発酵
B…最もスムーズ。
AとC…少し遅い。
焼き上がり
A…焼き色が付きにくい。
B…適度に焼き色が付く。
C…焼き色が濃く付く。
老化
A…最も早く老化し、生地がかたくなる。
BとC…比較的老化が遅く、しっとりした状態で日持ちする。
まとめ
砂糖を適正量(粉の5~8%分)入れることで、以下の場面で良い影響を与えます。
- こねや発酵がスムーズ。
- 焼き色が適度に付く。
- 老化が遅く、日持ちが良くなる。
パン作りで砂糖の役割は重要!
パンに砂糖を入れるのは、甘みを足すためだけでないことをお分かりいただけましたか?
砂糖はパンにさまざまな良い効果を与えてくれます。
砂糖について知ることで、ますますパン作りが楽しくなることでしょう。