生地を休ませる理由って何だろう
お菓子作りをしていると、「生地を冷蔵庫で1時間以上休ませる」や「一晩休ませる」という工程をレシピ内でよく見かけますよね。
休ませることにはどんな理由があるの?
休ませなかったらどうなるの?
今回は、そんな素朴な疑問を検証してみたいと思います。
型抜きクッキーで検証
クッキー生地を休ませる主な理由は三つ。
- グルテンを落ち着かせる
- 生地のムラをなくす
- 生地がだれるのを防ぐ
生地を作るときにできるグルテンを落ち着かせることで、焼いたときのゆがみなどを防ぎ、食感がサクサクになる。
水分を均一に行き渡らせることで、ムラがない均一な生地になる。
冷やすことで生地がだれないので型抜きしやすく、焼成時に広がるのを防ぐ。
比較してみた
すぐに焼いたもの、1時間休ませたもの、一晩(約12時間)休ませたものの焼き上がりを比較してみましょう。
条件
- クッキー生地はフードプロセッサーを使用して作る。
- 生地は5mmの厚さに伸ばし、直径38mmの型で抜く。
- 170℃で15分間焼成。
*バターをクリーム状にして作る製法では、結果が異なってくると思います。
見た目
横への広がりも少なく、抜き型通りの大きさ。
味・食感
- すぐに焼いたもの<1時間休ませたもの<一晩休ませたものの順で、サクサク感が増す。
考察
一晩休ませたものはバターがよく冷えているので、焼成時に生地がだれて広がることがなく、形と食感が最も良い結果に。
形が整っていて表面もなめらかなので、アイシングクッキーを作るときなどには最適。
1時間だけでも休ませると型抜きがしやすくサクサク感が出るので、時間がないときもできるだけ休ませましょう。
マドレーヌで検証
マドレーヌ生地を休ませる主な理由は二つ。
- 生地のムラをなくす
- グルテンの力を弱める
混ぜただけでは溶けにくい砂糖やはちみつが、しっかり溶ける。
混ぜたときにできるグルテンの力が弱まることで、焼成時にしっかりと膨らむ。
比較してみた
すぐに焼いたもの、1時間休ませたもの、一晩(約12時間)休ませたものの焼き上がりを比較してみましょう。
条件
- ベーキングパウダー使用のレシピでマドレーヌを作る。
*卵を泡立てる製法では、結果が異なってくると思います。
見た目
- どれも膨らんでおへそができているが、一晩休ませたもののおへそが最も高い。
- 見た目にはさほど差があるわけではなく、すぐに焼いたからといって大きな失敗にはならない印象。
味・食感
- すぐに焼いたものは食感が少しかたく、味がなじんでいないような印象。
- 一晩休ませたものはふんわりとした軽さがある。
- 1時間、一晩休ませたものは口の中でバターの香りや砂糖の甘さなどが広がる。
考察
膨らみについては、グルテンだけでなく生地の温度も関係していると思います。
すぐに焼いたものの生地温度が高ければ、膨らみはもっと低くなったのではないでしょうか。
詳しくは、ブラウンジャックさんのコラム「徹底比較!焼く前の生地の適温」をご覧ください。
今回の検証では見た目はあまり変わらなかったのですが、味をなじませて風味良く仕上げるためにも、1時間は休ませるのがおすすめ。
しっかりとおへそのある軽い食感を求めるならば、一晩休ませるのが良いかと思います。
スコーンで検証
スコーン生地を休ませる主な理由は三つ。
- グルテンを落ち着かせる
- 生地のムラをなくす
- 生地がだれるのを防ぐ
生地を作るときにできるグルテンを落ち着かせることで、焼き上がりがかたくなるのを防ぐ。
水分を均一に行き渡らせることで、ムラがない均一な生地になる。
冷やすと生地がだれないので型抜きしやすく、焼成時に広がるのを防ぐ。
比較してみた
すぐに型抜きして焼いたものと、1時間休ませた後で型抜きして焼いたもので比較。
条件
- ベーキングパウダー使用のイングリッシュスコーンのレシピで作る。
型抜き
- すぐに型抜きしたものは、生地がやわらかいため少しつぶれている。
- 1時間休ませたものは、生地が冷えてかたくなっているのでスパッと抜けている。
見た目
- 1時間休ませたもののほうが、生地が垂直に伸びて高さが出ている。
味・食感
- 1時間休ませたもののほうが、サクッと軽い食感。
考察
スコーンは生地を冷やさないと型抜きしづらくなります。
生地がつぶれずに型抜きできたものは焼成時に上に伸び、その分軽さも出ている印象。
生地がだれてしまうと焼き上がりが広がって食感も悪くなるので、冷やすためにも休ませたほうが良いでしょう。
「休ませる」のには理由があった!
レシピの通り「休ませる」ことはやはり大事。
すぐに焼いたからといって大きな失敗になるというわけではないのですが、休ませたほうが形・味・食感が良くなります。
皆さんの疑問が少しでも解決できたらうれしいです。