夏のパン作りは失敗しやすい?
夏は気温が高くて暑い上に、湿度も高くてむしっとしていますよね。
パン作りにおいては、気温が高いことでパン生地の発酵が速く進み、湿度が高いことでパン生地がベタベタして扱いづらくなります。
今回のコラムでは、夏に行うパン作りでどんなことに気をつければよいのかを詳しく解説します。
パン作りに最適な環境とは
室温は20~25℃、湿度は50~70%が最もパン作りがしやすいといわれている環境です。
これは4月・5月・10月くらいの気候を思い浮かべていもらえればわかりやすいかと思います。
1年を通してみると最適な時期が短い日本でのパン作り。
特に夏と冬は、失敗しないように対策を取る必要があるのです。
夏のパン作り最大の注意点・過発酵
発酵とは、パン酵母(イースト)が糖を分解して炭酸ガスとアルコールを発生させること。
パンはゆっくり発酵させると生地が熟成しておいしくなります。発酵が速すぎるということは生地に良い影響がありません。
夏はパン生地の発酵が速く進むので、あっという間に過発酵に。
過発酵は発酵が進み過ぎた状態。表面は炭酸ガスでボコボコし、生地に触れると簡単にしぼんでしまいます。
生地の糖が分解され過ぎて甘みがなく、炭酸ガスとアルコールが過剰に発生してスカスカの酸味があるパンが焼き上がってしまうのです。
過発酵になってしまうと後戻りできないので注意をしましょう。
過発酵を防ぐために。こね上げ温度を気にしてみよう
こね上げ温度とは、パン生地をこね終えた直後の生地の中心温度のこと。
一般的なパン生地のこね上げ温度は26~28℃が理想。
夏の暑さでは生地の温度が上がり、発酵がどんどん進んで過発酵になりやすいので、生地の温度を下げて発酵を遅らせるといった工夫をすることが大切です。
夏のパン作りに大切な6つのポイント
過発酵やベタベタした生地にならないように、具体的に気をつけるべきポイントを6つ挙げていきます。
ポイント1.冷水を使用する
夏は水道水の温度も高め。冷蔵庫で冷やしたり氷を入れたりして冷たくした水を仕込み水に使用するとよいでしょう。
気温や手の熱で上昇しがちな生地の温度を下げる効果があります。
ポイント2.水の量を減らす
湿度が高い夏は、粉などの材料が水分を吸っています。そこに分量通りの仕込み水を入れると、ベタベタした生地に。
通常の水分量から2~3%減らしてみましょう。
ポイント3.室温と湿度を下げる
部屋が暑いと発酵がどんどん進むので、冷房を使って室温と湿度を下げましょう。
28℃以下の部屋で作業できるのが望ましいです。
ポイント4.材料と道具を冷やす
特にホームベーカリーやこね機を使う場合に有効なのがこの方法。
水だけでなく、小麦粉や生地をこねるケース、ボウルなども冷蔵庫で冷やし、生地の温度が上がりすぎないようにしましょう。
機械類を使うとモーターの熱でも生地の温度が上がりやすくなります。
ポイント5.酵母(イースト)の量を減らす
酵母を減らすと発酵するスピードが遅くなり、過発酵を防ぎやすくなります。
夏場は、粉量の1%程度のイーストで問題ないでしょう。
ポイント6.冷蔵発酵を取り入れる
一次発酵を冷蔵庫で行う「低温長時間発酵法(オーバーナイト法)」は、冷蔵庫でゆっくり発酵させるので過発酵になりにくく、夏場に向いている製法です。
焼き上がったパンの保存にも気をつけて
夏は焼き上がったパンの保存にも気をつける必要があります。
基本的には直射日光や高温多湿は避けて保存。
お総菜パンや菓子パンは傷みやすいので、1日で食べ切りましょう。
食パンやロールパンなどの食事パンは常温で2日間はもちますが、それ以上は冷凍保存がおすすめ。
冷凍保存をする場合は食べるぶんずつラップに包み、保存袋に入れて密閉します。
全てのパンにいえることですが、冷蔵庫での保存はパンが劣化してパサパサになるのでNGです。
温度と湿度に注意!夏もパン作りを楽しもう
夏のパン生地はとにかく扱いにくく過発酵になりやすいですが、そこさえ気をつければ利点もあります。
- 冷房の効いていない部屋に置いておけば発酵器がなくてもスムーズに発酵する
- パン生地が乾燥して表面がカサカサになるという失敗がない
気をつけるべきポイントを押さえ、夏の気候をいかしてパン作りをお楽しみください。