パン生地に霧吹きする?しない?
パン作りをしていて、焼成前に霧吹きで水をかける工程があるレシピを見かけたことはありませんか?
パン生地に霧吹きで水をかける工程には、どんな役割があるのでしょう。
今回は霧吹きをしたパン生地としていないパン生地を焼き比べて、霧吹きがもたらす効果について考えてみましょう。
霧吹きの役割
霧吹きは、主にハードパンの焼成直前の工程として行うことが多い作業。
霧状に吹きかけた水と生地に含まれるでんぷんが加熱され糊化(こか)するので、焼成後のパンのクラスト(表皮)をパリッとさせることができるといわれています。
また、生地の乾燥予防にもなるため、表面が早く焼き固まるのを防ぎ、生地が膨らみやすくなるという効果も。
プチパンとハードパンで比較
油脂が入ったプチパンと、油脂の入っていないハードパンの2種類のパン生地を作り、それぞれ霧吹きする回数を変えて焼き比べてみます。
霧吹きに使用したのは、100円ショップで購入したプラスチックのスプレーボトル。
パン生地だけに吹きかけるのではなく、天板全体に吹きかけています。
プチパンで比較
強力粉・牛乳・インスタントドライイースト・塩・砂糖・バターで仕込んだパン生地を、180℃で12分間焼成。
比較条件
A…霧吹きなし
B…霧吹き3回
オーブンシートに少し水滴が付き、生地も湿った状態。
霧吹きされた水の量は2g程度。
C…霧吹き10回
オーブンシート全体に水滴が付き、生地はぬれている状態。
霧吹きされた水の量は8g程度。
焼き上がりの見た目は?
生地の表面と底面
生地のサイドと断面
A
高さはあるが上から見ると形がいびつで、底面の焼き色の中心がずれている。
これは、中から膨らもうとする生地に対して表面が焼き固まるのが早く、水分のある底の部分から裂けている状態。
B
クラストは張りと艶があり、焼き色もきれい。
クラムも最も整っている。
C
上から見るときれいな形に焼けているが、サイドと断面を見ると高さが出ず、ペタンとした印象。
食べ比べてみると?
A
クラムが若干パサついた食感で、表面のクラストもややかため。
B
クラムに程よい弾力が残っていて、クラストもさくっと軽い。
C
クラムが最もしっとりもっちりしてやわらかいが、クラストの軽さはBには劣るという印象。
まとめ
プチパンは、霧吹きが多くなるほど水分が残ってしっとりした生地に。
ですが、霧吹きが多すぎると、うまく焼き上がらずしわになってしまう部分も。
霧吹きを3回行ったBが見た目もよく、一番おいしく感じました。
ハードパンで比較
準強力粉・強力粉・全粒粉・水・インスタントドライイースト・塩・砂糖で仕込んだパン生地を、220℃で14分間焼成。
比較条件
A…霧吹きなし
B…霧吹き3回
オーブンシートに少し水滴が付き、生地も湿った状態。
霧吹きされた水の量は2g程度。
C…霧吹き10回
オーブンシート全体に水滴が付き、生地はぬれている状態。
霧吹きされた水の量は8g程度。
見た目は?
生地の表面と底面
生地のサイドと断面
A
底割れを起こしていびつな形になっており、表面も乾燥している。
パンの裏を見ると、中心の焼き色が小さすぎることから、パンが十分に膨らまなかったことが分かる。
クラムは底割れした部分に向かって気泡が伸びている部分と、詰まっている部分がありムラがある。
B
パン全体の形もきれいで、クープがしっかり開いている。
クラムのきめは整っているが、ややボリュームに欠け、表面は乾燥気味。
C
最も膨らみが良く、艶があるきれいな焼き色だが、クープがのっぺりと開いている。
クラムは大小の気泡も少し見られ、しっかり膨らんでいる。
食べ比べてみると?
A
クラストはかたく、クラムはねちねちしたような重い食感。
クープがうまく開かず、生地の水分がじゅうぶんに抜けていないことが理由。
B
最もパリッと香ばしいクラストで、クラムは程よく水分が残っていてもちっとした食感。
C
クラストはBより厚くかたくなるが、クラムは最も軽くふんわり。
まとめ
ハードパンは霧吹きの量が多いと、オーブン内で蒸気の役割も果たし、クープが開いてパンもよく膨らむので、クラムの水分が適度に抜けて軽い食感になります。
ですが、生地に付いた水分の多さから表面の糊化が過剰に進み、クラストが厚くかたいパンになる原因に。
霧吹きはあくまでクラストの香ばしさや軽さを出す目的として行い、オーブンのスチーム機能などを併用しましょう。
クープの開きと味の面から、Bが最も良いという結果になりました。
霧吹きを使いこなそう
霧吹きの量が多くなるほど、プチパンは水分が残ってしっとりした生地になるのに対し、ハードパンは軽い食感になるという違いは、新しい発見でした。
これは、生地内の油脂の有無で変わるようです。
霧吹きを上手に使って、焼きたいパンに一歩近づきましょう。