パンの腰折れについて考えよう
パン作りには、発酵不足・過発酵・クープが開かないなど、さまざまな問題があります。
私も今までパン作りをしてきて、思ったような仕上がりにならず何度も頭を抱えてきました。
その中でも特に難しく感じたのは、食パンの腰折れ問題。
今回は食パンの腰折れが起こる原因と対策について考えていきます。
腰折れとは?
「腰折れ」とは、焼き上がったパンの側面や上部がへこみ、変形した状態のこと。
製パン用語で「ケービング」または「ケーブイン」といいます。
特に食パンなどの型に入れて焼く大型のパンで起こりやすい現象です。
腰折れを防ぐための工程
腰折れを防ぐために有効なのが、焼き上がったパンに衝撃を与える工程。
焼き上がったらすぐに型の側面をパンパンと叩いたり、型ごと落として台に打ち付けたりしましょう。
パンが腰折れしてしまうのは、焼き上がったパンの内部にたまった蒸気によるもの。
蒸気は少しずつ外へ放出されますが、その過程でクラストが蒸気を吸収してやわらかくなり、自重に耐えきれなくなって変形してしまうのです。
衝撃を与えるとパンの内部にたまった蒸気を早く逃すことができるため、腰折れを防ぐことができます。
パンと型の間に隙間を作り、型から出しやすくする効果もありますよ。
腰折れの原因トップ3とその対策
腰折れは、焼き上がったパンに衝撃を与えるだけでは防ぎきれないことも。
どんな理由が考えられるのか、腰折れの原因トップ3とその対策を見ていきましょう。
1.焼成が足りない
パンに衝撃を与えても腰折れしてしまう場合、最も考えられる原因は焼成不足。
焼成温度が低かったり、焼成時間が足りなかったりすると、クラストの強度が弱くなります。
同じレシピで作り、焼成温度のみを変えて焼いた食パンを比べてみましょう。
160℃で焼いたものはクラストの色付きが薄く、腰折れしてしまいました。
対策
焼成温度と焼成時間を見直しましょう。
焼成温度と焼成時間は、パンの種類や大きさによって異なります。
同じようなパンを焼いているレシピを参考に、お持ちのオーブンに合わせて調整してください。
それでも焼き色が付かない場合は、オーブンの庫内温度が低い可能性があります。
オーブン用温度計を活用するなどして、庫内温度を確認するのもおすすめです。
逆に、山型食パンなどでトップの焼き色が付きすぎるときは、途中でアルミホイルをかぶせると焼き色を調整できますよ。
2.型に対して生地量が少ない
食パンの二次発酵の見極めには、型を目安にする方法があると思います。
角型食パンの二次発酵は、型の8~9分目まで膨らんでくるのが目安。
型に対して生地量が少ないにも関わらず、目安通りに発酵させてしまうと過発酵に。
過発酵のパンはクラムのきめが粗く、自重を支える力が弱いため、腰折れが起こりやすくなります。
画像は、強力粉の適正量が240~250gの型に対して、強力粉220gで作った1斤食パンです。
少し腰折れして、クラムのきめも粗いことがわかります。
対策
型に対して適正量の生地を準備しましょう。
3.生地の水分量が多い
水分量の多いパンはしっとりしておいしいといわれますが、その分やわらかく腰折れも起こりやすくなります。
対策
食パンの水分量は粉に対して70%前後が適正とされているため、これを一つの目安にすると良いと思います。
また使用する粉によっても、水をよく吸うものとそうでないものがあるので、注意が必要です。
その他のパンが腰折れしてしまう原因
パンの腰折れには、他にもさまざまな原因が考えられます。
上記の対策をしても腰折れしてしまう場合、次のことを確認してみてください。
- 生地の力が弱い
生地の力が弱いことも腰折れの原因。
生地作りの段階でしっかりグルテンを強化しておく必要があります。しっかりこねる、一次発酵の途中でパンチを入れるなどしてグルテンを強化しましょう。
- 具材に水分が多いものを使っている
水分の多い具材を使用するときも、注意が必要。オニオンチーズブレッドを作ったときに生の玉ねぎをたくさん巻き込んだところ、玉ねぎの水分が多すぎたことにより腰折れが起こりました。
水分が多い具材を使用するときは、火を通して水分を飛ばしたり、たくさん入れすぎたりしないようにしましょう。
- 型から出すタイミングが遅い
焼き上がった食パンを型から出さずにそのままにしていると、クラストが蒸気を吸いやわらかくなり、腰折れの原因に。焼き上がったパンは、すぐに型から出すことが大事です。
- 冷める前にカットしてしまった
焼きたてのパンのおいしさは格別ですが、クラストがしっかり固まる前にカットしてしまうと腰折れの原因となります。
また焼きたてのパンは、カットすること自体難しいのでおすすめしません。しっかり冷ましてからカットしましょう。
腰折れをしたパンは失敗なの?
腰折れをしてしまったからといって、そのパンは失敗なのでしょうか?
生焼けや過発酵の場合、味に影響が出てきますが、個人的に「腰折れ=失敗」と言い切れないと思っています。
流行の高級食パンの中には、腰折れに近い状態で売られているものがありますが、ふわふわで耳までやわらかくとてもおいしいです。
腰折れの原理を理解した上で「耳までやわらかい食パンを作りたい。そのためなら、多少腰折れしてもいい」と思えれば、腰折れに落ち込むこともありません。
腰折れを知り、納得のいくパンを作ろう
腰折れに悩んだり、ショックを受けたことがある方は、今回挙げた原因の中に思い当たるものはあったでしょうか?
原因がわかれば対策を立てることができます!
このコラムが、少しでもお悩み解消の手助けになりますように。