仕込み水の違いでパン生地に違いは出るの?
水には、大きく分けて「硬水」と「軟水」があります。
水は「硬度」と呼ばれる数値で分けることがあり、硬度によって風味や用途にも違いが。
パン生地を作る際の仕込み水の硬度を変えると、パンにも変化が出るのでしょうか。
今回は、硬水と軟水について解説し、それぞれの水を使ったパンを比較検証していきます。
硬水と軟水の違い
水にはマグネシウムイオンとカルシウムイオンが含まれており、それらを対応する炭酸カルシウム量に換算したものを「硬度」といいます。
硬水と軟水は、硬度を基準として分けられているのです。
- マグネシウムとカルシウムの含有量が多いもの=硬度が高い=硬水
- マグネシウムとカルシウムの含有量が少ないもの=硬度が低い=軟水
硬水と軟水の特徴は?
硬水
- 微かに苦味があり、しっかりとした飲みごたえがある。
- 肉などの煮込み料理・パスタ・パエリアなどの洋食に適している。
- ミネラル補給の効果もある。
軟水
- 癖がないのでそのまま飲みやすく、口当たりも軽い。
- だしを利かせた和食に適している。
- 石鹸の泡立ちがいい。
硬水と軟水の分類
硬水と軟水を分ける規準は、国や地域によってさまざま。
もっとも有名なのが、下記の分類ではないでしょうか。
- 180mg/L以上…超硬水
- 120~180mg/L未満…硬水
- 60~120mg/L未満…中軟水(中硬水とも)
- 60mg/L未満…軟水
水源のある地域によって硬度は変わる
欧米のように石灰質の地域を長い時間かけて通ってくる水の硬度は高くなります。そして、日本のように地中での滞留時間などが短い場合、硬度は低めに。
そのため、日本にある水源のほとんどは軟水。
水道水の硬度は水源に影響を受けるといわれているので、日本の水道水はほぼ軟水です。
おいしさの面からも、硬度10〜100mg/Lを目標値として設定しているといわれています。
硬水と軟水を使ったパンの比較
硬水・軟水を用いてパンを仕込み、生地の状態と焼き上がりを比較します。
使用した水
- 左…コントレックス(超硬水・硬度1475mg/L・フランス産)
- 右…南アルプスの天然水(軟水・硬度30mg/L・日本産)
今回の配合
- 強力粉…200g
- 砂糖…10g
- 塩…3g
- ドライイースト…2g
- 水…130g
*水のみ変え、その他の材料は全て同じ。
工程
こね → 一次発酵 → 分割・ベンチタイム → 成形(型に入れる) → 二次発酵 → 焼成
*工程は全て同じ条件で行います。
比較結果
こね
硬水
- かたくて切れやすい。
軟水
- 伸びがあってべたつきやすい。
こね上がりまでの時間
硬水
- 生地のまとまりが早く、こね時間は短め。
軟水
- 生地がべたつくため、こね時間はやや長め。
発酵
硬水
- 軟水と比べると、やや遅い。
軟水
- スムーズに進む。
焼き上がり
硬水
- 締まっている。
軟水
- 二次発酵後からの膨らみが小さい。
触感
硬水
- 弾力があってもろい。
軟水
- 水っぽく粘り気がある。
まとめ
硬水で作ると、小麦のグルテンが強くなりすぎて生地が締まり、表面が荒れたり切れたりしやすいパンに。
軟水で作ると、小麦のグルテンが弱いためべたつきやすく、ガスの保持力が弱いため膨らみも少ないパンに。
本来、パン作りには硬度100mg/L程度の中硬水が最も適しているといわれています。
この硬度の水を使うと作業性が良く、グルテンもしっかり形成されるので発酵もスムーズ。
今回、差が出やすいよう「超硬水」と「軟水」を使ったパンの比較してみた結果、硬度が高すぎても低すぎても作業性がよくないと感じました。
硬水に向くパン・軟水に向くパン
一般的なパン作りには中硬水が向いていますが、硬水・軟水それぞれに適したパンもあるのです。
硬水はフランスパンなどのリーンなパンに。加水の多い生地を引き締め、噛みごたえのあるハードパンを作ることができます。
軟水は菓子パンなどリッチなパンに。副材料が粘り気を和らげる効果を発揮し、口当たりの良いソフトなパンを作ることができます。
フランスの水は硬水なのでフランスパンが、日本の水は軟水なのであんぱんなどの菓子パンが生み出されたことは、とても理にかなっているといえるのではないでしょうか。
それぞれの地域の水に合ったパンが浸透しているということが分かりますね。
まとめ
硬水と軟水の違いがパンに与える影響について理解していただけたでしょうか。
硬度を意識してパンを作ると水の奥深さを感じることができ、パン作りがより楽しくなりますよ♪