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販売価格の決め方は?考え方や計算方法、値決めのポイントを解説

date
2024/05/21
writer
コッタビジネス編集部
category
コスト管理 > FL管理
「お店の商品、いくらで売ればいいんだろう?」 「適正価格の付け方がわからない」 お菓子やパンを売るときに、販売価格の決め方でお悩みではありませんか? お店を続けていくためには、赤字を出さず、利益をしっかりと確保することが重要です。 今回は利益を出すための適切な価格の考え方について解説します。 販売価格はお店の利益を左右するだけでなく、お客さまの満足度にも直接影響します。 新商品の価格設定や、現在の価格見直しに活用してみてくださいね。

価格を決める上で知っておきたい基本用語

「値決めは経営」といわれるほど、店舗経営において価格設定(プライシング)は重要。 価格設定の際に知っておきたい用語を確認しましょう。

原価

原価は、お菓子やパンを提供するためにかかるコストの合計です。 一般的に原価は材料費・労務費・製造費に分けて考えますが、お菓子屋さんやパン屋さんでは基本的に原材料原価原で考えます。 お菓子屋さん・パン屋さんの場合の原材料原価は「原材料費+包材費」です。 原材料費(食材原価):お菓子・パンを作るために必要な材料費。小麦粉や砂糖、バターなどの仕入れ原材料。 包材費(包材原価):お菓子・パンを販売するために必要な資材費。袋や鮮度保持剤、ラッピング資材など。 この記事では「原価」=「原材料原価」として話を進めます。 原価を把握すれば、商品の最低販売価格を設定し、その上に利益を加えた価格を導き出せます。

原価率

原価率とは、売上に対する原価の割合のことです。 下記の計算式で算出できます。

  • 原価率=原価÷売上高×100

例えば、原価150円のケーキを500円で販売すると、原価率は30%です。 150(原価)÷500(売上高)×100=30% 原価率を高く設定すると、利益が出にくい状態となります。 反対に原価率を低く抑えられれば、利益を出しやすくなります。 お菓子屋さんやパン屋さんのような飲食業界の一般的な原価率は20~30%とされています。 原価率についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、あわせて確認してくださいね。 関連記事
原価率とは?計算方法や利益を上げる原価管理のポイントを解説

粗利

「粗利」とは、売上から原価 を指し引いた利益のことです。 「売上総利益」「粗利益」とも呼びます。

  • 粗利=売上高-原価

粗利からさまざまな経費や税金を差し引いて残った利益のことを「純利益」といいます。 粗利益と混同しがちなのでご注意ください。

粗利率

「粗利率」とは、売上高に対する粗利の割合です。 「売上総利益率」「粗利益率」と呼ばれることもありますが、いずれも同じ意味で、店舗の収益を分析する指標として活用されます。 次の計算式で算出できます。

  • 粗利率=粗利÷売上高×100%

例えば、ケーキの販売価格が500円で原材料原価が150円の場合、粗利は350円です。このときの粗利率は70%と算出できます。 350円(粗利)÷500円(売上高)×100=70% 粗利率が高いほど、お店がもうかっているとわかります。 粗利率は、店舗経営の際に「これくらいの利益を確保する」という目標値として設定することもできます。

適切な販売価格にするための3つの考え方

販売価格は利益を出すために決めますが、同時に、売れるかどうかも考慮しなければなりませんよね。 適切な販売価格を設定するための3つの考え方を解説します。

原価から考えて商品の値段を決める

商品の原価をベースに商品の値段を決める方法です。 「商品金額のうち、何割を原価にするか」というように原価を基準に考えます。

商品の原価の算出手順

  1. 材料費:配合、製造数、材料の単価から商品1つあたりの材料費を計算
  2. 包材資材費:商品1つあたりの包材費を計算
  3. 人件費:工程ごとに時間を計測して、時給から商品1つあたりの費用を計算
  4. 製造経費:月の経費をお菓子製造数で割って、お菓子1つあたりにのせる費用を計算

上記のように、1つの商品を提供するのに必要な費用を書き出して計算をすることで、利益がとれる販売価格を正確に決めることができます。 原価率をベースにした考え方は計算式に当てはめれば、明確な価格設定ができるのがメリットです。 一方、市場の一般的な価格と離れている場合があることに留意しておきましょう。

粗利率から考えて商品の値段を決める

原価を計算してから、何%の粗利率を出すかで価格を決める方法です。 「どのくらい利益が欲しいのか」という基準で値段を検討します。 次の計算式で販売価格を決めます。

  • 販売価格=原価÷(1−粗利率)

例えば、原価が200円の商品で粗利を60%出したい場合、 販売価格=200÷(1−0.6) =500円 と計算できます。 粗利率を高めれば、その分販売価格も高くなります。 粗利率から商品価格を決める場合、あらかじめ確保したい利益の基準を設けて原価から計算できます。 ただし、利益を元に出した金額は販売側の希望額です。 お客さまにとって適切でない価格になる可能性もありますので、その点は注意しましょう。

市場・競合と比較して商品の値段を決める

類似商品や同じジャンルの商品について、市場や競合店舗を調査し、価格を決定する方法です。 市場の価格を参考にするため、価格競争力を保持するプライシングができます。 また、一般消費者が認識する価値と、商品の価格のギャップが生まれにくくなります。 例えば、カヌレを販売する競合他社が商品を350円で販売している場合

  • 350円よりも低い価格を設定して消費者の関心を引く
  • 同程度またはそれ以上の価格で販売し、お店ならではの付加価値を加え、競合と差別化する

といった方法が考えられます。 顧客のニーズと価値観に基づいた価格設定ができるので、結果として市場内での競争力を維持または向上させることが期待できます。

販売価格の決め方は?

結論からいうと、先に紹介した方法のどれか1つを選んで販売価格を決定すればいいというわけではありません。 販売価格の計算方法ごとにメリットやデメリットがあるため、1つの方法の問題点を他の方法で補うなど、利益を出せてよく売れる販売価格を決めていく必要があります。 紹介した3つの考え方をお店の状況や販売戦略に基づいて、組み合わせて価格を考えましょう。
販売価格を決める方法 メリット デメリット
原価を基準にする 赤字にならない価格設定ができる ・市場価格とギャップが生じる可能性がある ・買い手の感覚とギャップが生じる可能性がある ・価格競争で負ける可能性がある
粗利率を基準にする 目標利益を確保できる ・市場価格とギャップが生じる可能性がある ・買い手の感覚とギャップが生じる可能性がある ・価格競争で負ける可能性がある
市場・競合を基準にする 競合との価格差が開きにくい ・価格競争に巻き込まれる
上記を踏まえた、基本的な価格設定方法を紹介します。

コストプラス法

コストプラス法とは、一定の利益率や利益額を商品の製造コストに加えて、販売価格を設定する方法です。 次の計算式で算出します。

  • 価格=製造原価+利幅

コストを上回る適正価格を出しやすく、シンプルに価格を決められます。 一方で競合・市場の状況は反映されず、お客さまの価格感覚とのズレが生じる可能性もあります。 コストプラス法を使う際には、商品に付加価値を付け、それを顧客に伝えて価格に納得してもらうことが大切です。

マークアップ法

マークアップ法とは、主に卸売業者や小売店が行う販売価格の決定方法です。 仕入れた商品をお店で販売する際に用いられます。 製造コストをもとにするコストプラス法の変種であり、製造原価ではなく仕入れ原価をもとにします。 次の計算式で算出します。

  • 価格=仕入原価+利益

市場価格追随法

すでに市場に出回っている商品の価格を基準にして販売価格を決定する方法です。 他店舗の商品と差別化できる場合は、競合商品以上の価格設定も可能。 一方、差別化できる部分がない場合は、競合商品と同程度の価格、もしくは低めの価格に設定するなど、価格競争に巻き込まれる可能性があります。
紹介した価格の考え方や価格設定方法を理解し、メリットをバランスよく取り入れることで適切な価格設定が可能になります。 原価や利益だけでなく、市場・競合の動向も考慮した上で適切な価格を考えましょう。

売上アップを目指す!消費者心理に基づいた価格戦略

基本的な販売価格の考え方を理解した上で、価格戦略について踏み込んでみましょう。 消費者の価格に対する心理に働きかけ、購買力をアップさせる価格設定のことを「心理的価格設定」と呼びます。 お菓子屋さん・パン屋さんで取り入れやすい価格戦略3つを紹介します。

名声価格戦略

名声価格とは「高品質」や「プレミアム」などのように、他の商品とは一線を画す商品として商品開発を行い、高価格帯の価格設定にする手法です。 一般的に消費者は「高いものは高品質」「安いものはそれなりのもの」と値段で判断する傾向にあります。 高い価格を付けた方が評価・名声が高まり、価格自体が消費者にとっての品質の基準となります。

段階価格戦略

段階価格とは、低価格品、通常価格品、高価格品というように段階に分けた値段設定を指します。 「人は真ん中にあるものを選びやすい」という心理を利用した価格設定です。 日本では松竹梅で価格設定が分けられることも多いため「松竹梅の法則」と呼ばれます。 多くの場合、

  • 低価格帯:3割
  • 通常価格帯:5割
  • 高価格帯:2割

の購入割合だといわれています。 もしショップで一番売りたい商品がある場合は、段階価格の通常価格帯に設定するのもよいでしょう。

抱き合わせ価格戦略

抱き合わせ価格は、メインで販売する商品に別の商品をセットにして販売する方法です。 「セットで買うとお得」という消費者心理を利用し、複数商品の購入を誘導します。 購入されやすいが利益の薄い商品と、購入されにくいが利益の高い商品を抱き合わせ価格にすることが一般的です。 販売数と利益を確保することが目的の価格設定です。

価格を決めるときの注意点

最後に、価格を決めるときに注意したいポイントを紹介します。

お客さま目線で価格を考えられているか

価格を設定する際には、単にコストを考慮するだけでは不十分です。 お客さまの立場で「この商品をこの値段で買って満足するか?」を考えましょう。 「お客さま目線で」と考えると、「安い方がいいのでは?」と思うかもしれません。 注意点は過度な値下げは禁物というところ。 安ければよいというわけではなく、大切なのは「納得する価格か」という点です。 商品価値にふさわしい商品価格にするのがポイントです。 お客さまが購入するのは、商品(モノ)だけではありません。 来店してまで購入してくれるのは、商品を通して得られる「おいしい」「満足」などの、食体験(コト)を得たいからです。 商品を通して得られた食体験が、価格に見合ったものだと納得感を感じたら、お客さまは満足するでしょう。 お客さま目線の価格設定は、顧客満足度を高めると同時に、店舗の収益性を保つためのカギとなります。

お店のコンセプトやターゲット、ブランディングを反映させる

お店のコンセプトやターゲットに反する価格設定は避けましょう。 価格設定において、お店のコンセプトやターゲット顧客、ブランディングは非常に重要な要素です。 これらを総合的に考慮することで、価格がお店のイメージや市場での位置づけにマッチし、お客さまの期待を満たすことができます。 例えば、高級感を演出するパティスリーでは、素材の質にこだわり、品質に見合った価格設定を行うことが期待されます。 このようなお店が、競合店に合わせて価格を下げてしまうと、ブランド力が低下してしまう可能性があります。 元々設定していたターゲット層が離れてしまう恐れも。 お客さま目線での価格設定は大事ですが、お店の価値やブランド力を低下させる価格になっていないか注意しましょう。 ブランディングの考え方については、こちらの記事で解説しています。 関連記事
【飲食店向け】ブランディングとは?お客さまに選ばれるお店になるためのポイント

店舗全体の利益バランスを考える

ひとつの商品だけでなく、店舗全体のバランスを考慮して値段を考えることも大切です。 例えば、ある商品を集客の目玉として、利益度外視で原価割れの価格設定をしたとしても、他に利益率の高い商品を一緒に購入してもらえればマイナスを補えます。 お店の状況を分析し、全体的な価格戦略を立て、目標利益達成が可能な価格設定をしましょう。 データ分析とその活用方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでチェックしてくださいね。 関連記事
カフェ・飲食店のデータ分析と活用法|ニーズを捉えて売上アップ!

まとめ

販売価格の考え方や計算方法、消費者心理に基づいた価格戦略、価格を決めるときの注意点について解説しました。 販売価格を決めるとき、主に

  • 原価から考える
  • 利益から考える
  • 市場価格・競合調査から考える

の3つの方法がありますが、どれか1つを採るのではなく、それぞれの考え方を店舗の戦略によってバランスよく組み込むことが大事です。 もちろん利益を確保するための価格設定は重要ですが、お客さま目線で価格を考えることが最も大切。 コストだけでなく、客観的な視点をもって戦略的な適正価格を探っていきましょう。
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