お菓子屋さん、パン屋さん、カフェなどの飲食店舗を開業・運営するにあたり「ブランディング」という言葉を耳にする機会があるのではないでしょうか。
ブランディングはお客さまから選ばれるお店になるために、欠かせない要素のひとつです。
その一方でブランディングという言葉は概念的で「実はよくわかっていない」という方も多いのではないでしょうか?
この記事ではブランディングの基本的な進め方について解説します。
ブランディングでよく使われるフレームワークについても紹介します。
「ブランディングをどのような手順で進めればいいのかわからない」とお悩みの方はこの記事を参考に、店舗のブランディングに活用してみてくださいね。
ブランディングとは?
「ブランディング」とは、そのブランドのアイデンティティやイメージを構築し、強化し、市場に伝えるための一連の戦略や活動を指します。
例えば下記のような活動がブランディングに当たります。
- お店のロゴの作成
- 店舗内のデザイン要素の統一化(メニューブックやパンフレット・ショップカードなどに統一感を持たせる)
- マーケティングキャンペーンの実施
- お客さまサービスの向上
これらの活動に共通することは、自店舗が大切にしているコンセプトや想い、価値観を消費者に伝え、店舗(ブランド)に対してのイメージを持たせるということ。
消費者にお店を思い起こしてもらい、選んでもらうためにはブランディングが欠かせないのです。
ブランディングの意義やメリットについてはこちらの記事で詳しく解説していますのでぜひチェックしてくださいね。
【飲食店向け】ブランディングとは?お客さまに選ばれるお店になるためのポイント
ブランディングの進め方・手順
どのようにブランディングを構築していくのか、その手順を解説します。
店舗の想いやコンセプトを明確にする
あなたのお店が大切にしている想いやコンセプトを洗い出しましょう。
想いやコンセプトは、ブランディングにおいて重要な核となる部分です。
お客さまにメッセージを伝え、心をつかむためにとても重要な部分なので、時間をかけて深掘りしていきましょう。
お店がどのような価値をお客さまへ提供したいかを明確にします。
店舗の理念や独自性、イメージを具体的に書き出しましょう。
例えば
- 家族で楽しめるアットホームな雰囲気
- 安心感や安らぎを与える
- 手作りならではのぬくもりを大切にする
などのように、店舗が目指す価値を言語化します。
想いやコンセプトを明確な言葉に表すことで、ブランドの魅力をお客さまに伝えやすくします。
「自分が作りたい店とは、どんな店なのか」を明らかにした上で、ブランディングを進めていきましょう。
店舗の強みを洗い出す
お店ならではの強みを明確にしましょう。
競合店舗との差別化を図り、お客さまから選ばれる理由を作ります。
例えば
- 地元産の食材を極力使用する
- 特別な製法にこだわったパン
など、お店の特徴をリストアップし、強みを洗い出します。
競合店舗にはない独自の強みを見つけることでブランディングの基盤を築きます。
環境・市場を分析する
環境分析・市場分析を行います。
分析の主な手法としては3C分析やSWOT分析などのフレームワークがあるので、それに沿って自店舗の強み・弱みや置かれている環境、競合店舗との違い、顧客のニーズを分析し、情報を整理しましょう。
フレームワークについては次の章で解説していますので、そちらをご参照ください。
環境分析は、その後のブランディングやマーケティング活動などのベースになるものなので、抜け漏れがないように進めていきましょう。
マーケティングについてはこちらの記事で解説していますのでチェックしてみてくださいね。
お菓子屋さん・パン屋さんに必須のマーケティングとは?キホンを解説
ブランディングのターゲット設定をする
ターゲット顧客(ペルソナ)を特定することは、ブランディングにおいて重要です。
効果的にメッセージを伝え、お客さまの心をつかみやすくなります。
例えば「20代のファミリー層」をターゲットにした場合と「ラグジュアリーなものを好む40代女性」をターゲットに設定した場合とでは、展開する商品・サービスは大きく異なりますよね。
「こんな人がいたらいいのに」という理想のペルソナではなく、実在しそうなリアルなペルソナを設定することがポイントです。
ペルソナが求める体験や価値観を理解し、それに寄り添うブランディングを行いましょう。
ターゲティングを行うことで、ブランディングの効果が発揮されやすくなります。
ブランディングのポジショニングを行う
ポジショニングとは「店舗が市場においてどのような位置づけを目指すか」を決定するものです。
お客さまに対してブランドの立ち位置を明確に伝えられるようになります。
例えばパン屋さんの場合では
- 高級なブーランジェリー
- 気軽に楽しめる街のパン屋さん
などのように、目指すイメージに合わせて戦略が練りやすくなります。
ポジショニングを行うことでブランドの方向性が定まるのです。
ブランドアイデンティティを明確にし、ブランディングを実践する
これまでの手順を踏まえ、ブランドアイデンティティを明確にします。
ブランドアイデンティティとは、消費者に持ってもらいたいブランドイメージのことです。
店舗がブレのない活動をする上で重要な、柱のような存在です。
店舗の一連の活動を貫く概念として、ブランドアイデンティティを基にさまざまなことを決定・実践していきます。
例えば、店舗のロゴ作成やチラシなどの販促物の作成、商品・サービスを展開する際など、何事においても「ブランドアイデンティティが反映されているか?」を念頭に置きます。
ブランドアイデンティティをさまざまな施策に落とし込み、実践していく戦略を「ブランド戦略」と呼びます。
ブランド戦略の施策を実践し、それらを積み重ねていくことが、ブランドを育てることにつながるのです。
ブランディングに役立つフレームワーク
ブランディングの過程で役立つフレームワークについて紹介します。
お店のブランディングにぜひご活用ください。
3C分析
3C分析とは
- 自社(Company)
- 顧客(Customer)
- 競合他社(Competitor)
の3つの要素を詳細に分析することです。
3C分析を行うことで自店舗と競合の強みや弱みを発見し、競合との差別化ポイントが把握できます。
顧客のニーズと自店舗にしか提供できないものが見えるため、独自のブランド価値の創出に役立ちます。
SWOT分析
SWOT分析は、店舗が持つ強み・弱み・機会・脅威の4つを分析・整理する方法です。
4つの分析要素は内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)の2方向から見るものです。
自店舗が置かれている内外の環境を客観的に洗い出すことができます。
内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を知っておけば、強みはより伸ばし、弱みは打ち消すような戦略を立てやすくなるのです。
ポジショニングマップ
ポジショニングマップは、市場内での自店舗の位置づけを確認し、競合との比較を通して自店舗ならではのポジションを作り出すためのフレームワークです。
縦軸と横軸による2次元の座標で構築し、自店舗と競合店舗がそれぞれどの位置にある商品・サービスを展開しているか客観的に把握できます。
軸を変えて何パターンも作ってみると、自店舗の強みをより深掘りできるため、ポジションが明確になります。
ポジショニングマップで自社の立ち位置を正確に把握できれば、競合と戦わずして勝てるポイントが見えてきます。
「ブランディングがうまくいかない」と思ったときに振り返るべきポイント
ブランディングは短期では結果が見えないもの。
「期待した効果が得られない。失敗しているのかも?」と感じることがあるかもしれません。
そんなときに振り返るべきポイントについて紹介します。
ブランディングに一貫性があるか?
ブランディングの成功には一貫性が不可欠です。
お店の全ての側面に、ブランドアイデンティティが反映されているかどうかをチェックしましょう。
例えば
- ロゴ
- 店舗の外装・内装
- 看板
- Webサイト
- SNSの投稿
- チラシ・DM
- 顧客サービス
など
お店が展開する全てはブランドアイデンティティに則る必要があります。
一貫性がない場合、お客さまの視点からすると「何を伝えたいのだろう?」という違和感が生じ、ブランドに対する信頼や親近感が弱まる可能性があります。
ターゲット設定が甘く、顧客ニーズの深掘りができていない
ブランディングの効果を最大化するためには、ターゲット顧客を深く理解することが重要です。
「たくさんの人にお店の存在を知って欲しい」と考え、ターゲットを広く選定していませんか?
ターゲットの幅が広すぎるのは、ターゲットを選定していないことと同じこと。
ターゲットを絞り込むことは、一見顧客層を狭くするように見えるかもしれませんが、効果としては逆に働きます。
ターゲットが広ければ広いほど、ニーズの把握は難しくなります。
ターゲットを絞れていると、ニーズや課題を深掘りしやすくなるため、そのニーズに応えるブランド戦略が立てやすくなります。
ターゲット設定を明確にすれば、深くお客さまの心に残るブランド体験を提供しやすくなるのです。
ブランディングの成功事例
最後にブランディングの成功事例として、スターバックスコーヒーの例をご紹介します。
スターバックスは、単に「コーヒーを提供する店」ではなく「第三の場所(サードプレイス)としての体験」を顧客に提供しています。
例えば、トレンドを取り入れたおしゃれなドリンク・フードの提供や高級感のある店の内装、リラックスして過ごせる空間作り。
スタッフの接遇でも「いらっしゃいませ」は使わずに、「こんにちは」というあいさつで声かけすることを徹底しています。
これらには「店ではなく、家や職場に代わる『第三の場所』を提供する」というスターバックスのブランディングが反映されています。
「スターバックスでしか味わえない時間を体験できる」というブランドアイデンティティで、他店舗と差別化されているのです。
このように、スターバックスではブランドアイデンティティを明確にし、それを全ての店舗で一貫して実践することで、ブランディングを成功させています。
ブランディングが単に商品やサービスの質以上のものであること、そして顧客とのロイヤリティの構築がブランドの成功に欠かせないことがうかがえるのではないでしょうか。
まとめ
この記事ではブランディングの基本的な進め方や、ブランディングでよく使われるフレームワークについて解説しました。
お客さまから選ばれるお店になるためには、想起してもらえるお店になることがポイントです。
そのためにはお店ならではの強みを把握し、価値を打ち出すブランドアイデンティティを明確にすることが重要です。
ブランド戦略を立て、さまざまな施策を経てブランドを育てていくと、自店舗やその商品・サービスにファンやリピーターがつきます。
長期的な視点でブランディングを実践し、お客さまから選ばれるお店へと成長していきましょう。
コッタビジネスは、全国のパティスリー・ベーカリー・カフェ飲食業種の皆さまにご利用いただいている仕入れサイトです。
食材はもちろん、包装資材や消耗品など、 製造・店舗運営に関わる商材を取り扱いしています。
法人会員さま限定のメールマガジンをお届けしますので、ぜひチェックしてくださいね!
>> コッタビジネスご登録はこちらから
食材・材料・道具を探す
注:記事内容やレシピ・画像の転用・掲載などの二次利用はお断りしております。