お菓子作りに大切なこと
小麦粉・砂糖・卵・バター。シンプルな素材の配合、手順を変えるだけで、いろいろなものが出来上がる魔法のようなお菓子作り。
その魔法の秘密は「お菓子作りの科学」にあります。
難しい話キター!!と身構えないでくださいね♪
もちろんその科学を勉強すればするほど、お菓子作りをコントロールしやすくなりますが、なかなか難しいもの。
今回はお菓子作りをする上で大切な『手順』を、砂糖を入れるタイミングを例に考えてみたいと思います。
材料を入れるタイミングが持つ意味
材料を入れるタイミングは、前後しても問題ないものもありますが、全く違うものになってしまったり、作業がしづらくなってしまったりすることもあります。
スポンジ生地とバター生地(パウンドケーキ)で、砂糖を入れるタイミングを確認してみましょう。
砂糖には、甘み以外にも重要な役割があるんですよ。
スポンジ生地(共立て法)
スポンジ生地はどうやって作るの?
スポンジ生地は、卵(卵白)の起泡性(撹拌すると空気を抱き込んで気泡を作る性質)を使って膨らませます。
まず、卵と砂糖を湯せんで温めましょう。
砂糖は、湯せんにかけるときに加えておけば溶けやすく、卵が熱凝固するのを抑える力があります。
実はスポンジ生地における卵の温めは人肌程度なので、熱凝固の心配はほとんどありません。しかし、カスタードクリームなどで温めた牛乳を加える際には、卵黄に砂糖をすり混ぜておかないと熱凝固の心配があります。
砂糖が卵の熱凝固を抑えてくれる力は重要なので、覚えておいてくださいね。
次に、温めた卵と砂糖を泡立てていきますが、ここでも砂糖には重要な役割が。
砂糖には気泡を安定させる働きがあり、きめ細かな気泡が必須となるスポンジ生地にはかかせません。
そして、きめ細かく安定した気泡の中に小麦粉を加えてから、気泡を壊してしまう働きのあるバターなどの油脂を最後に加えるのが鉄則なのです。
砂糖を加えるタイミングで生地の状態は変わるの?
【卵+砂糖で泡立て】→小麦粉→バター
砂糖が入った卵は、白っぽくなるまできめ細かくボリューミーに泡立っています。
卵のみ泡立て→【砂糖】→小麦粉→バター
卵のみだと筋が残るまで泡立ちますが、きめが粗く、ボリュームも少ないです。
この状態で残りの材料を加えてみましょう。
砂糖を混ぜるとつやは出てきますが、ドロッ…としています。
泡立ててもボリュームは増えず、低速で混ぜてもきめ細かくならず。
慎重に粉とバターを混ぜ込みましたが、生地は少し重たい感触です。
焼き上がりを見てみましょう。
高さは低め。レシピ通り焼いたものより1cmほど低いでしょうか。
内層はやや粗く、食感はねっとりした感じです。
結論
全くできないということはないですが、とにかく気泡が不安定で作業しづらく、とても時間がかかりました。
ねっとりとした食感も気になります。
始めに砂糖を加えてから泡立てることの、なんと効率の良いことか!
バター生地(シュガーバッター法)
バター生地(シュガーバッター法)はどうやって作るの?
バター生地はバターのクリーミング性(撹拌すると空気を抱き込むことのできる性質)を利用して膨らませます。
まず、バターと砂糖を一緒に撹拌して、空気を含ませましょう。
砂糖を一緒に撹拌することによって、バターはより多くの気泡を含むことができます。
次に卵を加えますが、砂糖がバターに分散されていることで、砂糖の持つ親水性(水分を吸収しやすい性質)が卵黄の持つ乳化作用と共に、乳化を助けてくれる働きをするのです。
しっかりと乳化したところに小麦粉が入ると、安定した良い生地が出来上がります。
砂糖を入れるタイミングで生地の状態は変わるの?
バター→【砂糖】→卵→小麦粉
バターに砂糖を加えて撹拌すると、軽さとボリュームが出ます。
卵を全て加えても、きれいに乳化しています。
バター→卵→【砂糖】→小麦粉
バターのみで撹拌したものは、少しボリュームが少ないです。
驚くことに、温度や入れ方に気を付ければ、卵は9割加えるところまでは乳化。そこからはどんどん分離し、砂糖を混ぜても分離状態は変わりませんでした。
結論
焼成したものを比べてみましょう。
見た目は、高さが2cm程度違うくらいで許容範囲内に見えますが、食べてみると…。
ちゃんと乳化したものはきめ細かくふんわりとした口どけ。
一度分離したものは引きが強く、口どけも劣ります。
分離しても意外と大丈夫♪に見えるかもしれませんが、食感の差がはっきり現れているんですね。
レシピの裏側にあるもの
今回の二つの生地でもお分かりいただけたかと思いますが、材料を入れるタイミングには大きな意味があるのです。
さらに、温度や混ぜ方といったその他の要因も含めた『手順』がとても大切になります。
レシピには、こうした「お菓子作りの科学」からなる意味が、ちゃんと込められているんですね。
今回は、砂糖をメインに実験してみましたが、他にも、材料を加える順番によって、かたさや風味の強さが変わるものも。
酵母や膨張剤を使うときには、その働きに影響することもあります。
レシピの手順を大切に
お菓子作りをする上で、下準備や細かな指示が多いのも納得していただけたでしょうか?
そして、その大切さも!
意味があるんだー!と思うと、より気を付けよう♪と思えるもの。
材料が増えるほど、さまざまな影響があります。
レシピの手順を、より大切にしていきましょう!