冷蔵発酵でパンを焼いてみよう
パン作りには、冷蔵発酵という方法があるのをご存じでしょうか。
この方法をうまく使えば、家事や仕事の合間にパンを作ることができるように。
気温が上がってくる季節に気を付けたい、過発酵の対策にもなるのでおすすめです。
今回は、冷蔵発酵でのパンの作り方を詳しく解説。イースト量を通常より抑えて、少しだけ発酵を進めてから冷蔵庫に入れ、翌日に焼くという方法をご紹介します。
ポイントを押さえれば簡単に挑戦できますよ。
冷蔵発酵とは
冷蔵発酵とは、こねた生地を一次発酵するときに、室温ではなく低温(冷蔵庫)でゆっくり発酵させる方法のこと。
「長時間熟成」や「長時間低温発酵」という言葉を聞いたことはありませんか?
パンの製法としては、「オーバーナイト法」とも呼ばれます。
冷蔵発酵のメリット・デメリット
冷蔵発酵にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
冷蔵発酵のメリット
- 時間の調整がきく。
- 小麦のうま味を引き出し、味わい深いパンになる。
- イーストの量を控えるため、イースト特有の匂いを抑えて、小麦本来の香り豊かなパンが焼ける。
- パンの老化が遅く、おいしい状態を長く保てる。
- バゲットなどのハードパンは気泡が入りやすくなる。
冷蔵発酵のデメリット
- 発酵の見極めが必要。
- クラストがややかたく、引きが強いパンになる。
- 焼いたパンの表面に、「フィッシュアイ」や「火ぶくれ」と呼ばれる、ぶつぶつができてしまうことがある。
冷蔵発酵パンを作るときの注意点
冷蔵発酵だからこその注意点をチェックしましょう。
イースト量の細かい調整が必要
0.1g単位で量れるスケールを使用するなど、きちんと量りましょう。
作業開始から24時間以内には焼き上げる
材料と混ぜ合わせてから24時間を過ぎると、イーストの働きが低下していきます。
また、長時間の保存にはカビや腐敗の心配も。
作業開始から焼き上げまでを、24時間以内で完了させるのが好ましいでしょう。
発酵が進みすぎる場合がある
冷蔵庫に入れていても、パン生地の発酵は進みます。
発酵しすぎてしまう原因は、生地のこね上げ温度が高すぎるか、冷蔵庫の温度が高いこと。
こね上げ温度が26~28℃になるよう、材料や仕込み水の調整を。
野菜室は比較的高い温度に設定されているので、5℃前後の冷蔵室に入れるほうが失敗が少なくおすすめです。
冷蔵発酵のおすすめレシピ:カマンベールハニーパンのレシピ
カマンベールチーズとはちみつのハードパンは、お好みで黒こしょうをトッピングすると、ぐっと大人っぽい味に。
パンチで生地をつなぐので、こねる作業はありません。
工程内にタイムテーブルを記載しています。参考にしてみてくださいね。
材料(3個分)
- 強力粉(はるゆたかブレンド)…165g
- 全粒粉(春よ恋)…35g
- インスタントドライイースト…0.5g
- 塩…3g
- 砂糖…5g
- 水…140g
- カマンベールチーズ…75g
- はちみつ…適量
- 粗びき黒こしょう…お好みで
作り方
1日目
- 16:00 ボウルに計量した粉類を入れ、混ぜておく。
- 水を加えヘラで粉気がなくなるまで混ぜる。
- 30℃で20分間休ませる。
- 16:25 1回目のパンチ。
- 30℃で20分間休ませる。
- 16:45 2回目のパンチ。
- 30℃で約30分間発酵。
- 17:15 冷蔵庫に入れ、一晩休ませる。
こね上げ温度は26~28℃になるように整えるのがコツ。
指を水でぬらして生地を優しくつかみ、ちぎれないところまで引っ張り上げたら生地をたたむ。
これをボウル1周行う。
1回目のパンチ終了。
工程4と同様に行う。
生地に弾力があり、表面がつるんとしてくる。
*1.5倍くらい膨らむのが目安。
*時間にすると、12~20時間程度。
2日目
- 12:30 生地を冷蔵庫から取り出す。
- 3分割して三つ折りにし、30℃で30分間ベンチタイム。
- 13:00 とじ目を上にしてガスを抜き、カマンベールチーズを25gずつ包み、成形。
- 13:10 とじ目を下にして置き、30℃で一回り大きくなるまで二次発酵。
- 13:45 とじ目を下にしてオーブンシートにのせ、カマンベールチーズが見えるまでクープを入れる。
- クープの部分にはちみつをかけ、お好みで粗びき黒こしょうをかける。
- 予熱した天板にオーブンシートごとのせ、焼成。
- 14:05 焼き上がり。
冷蔵庫に入れる前よりも約2~2.5倍の大きさになっているのが目安。
*ふくらみが悪いときは、30℃で30分間程度発酵を追加する。
*パンマットがあれば布取りすると良い。
二次発酵の間にオーブンの予熱(250℃)を開始。
このとき、天板を入れたまま予熱するのがポイント。
スチーム機能がある場合、スチームを入れ250℃で6分間→220℃で11分間。
スチーム機能がない場合は、霧吹きをして同様に焼く。
*焦げそうなときはアルミホイルで覆うか、温度を低くする。
食べるときにはちみつを追加でかけてもおいしいですよ。
既存のパンレシピを冷蔵発酵で作るポイント
今回の作り方を応用して、既存のパンレシピを冷蔵発酵で焼くことも可能です。
基本的には、レシピのイースト量を1/3程度に抑えることで、冷蔵発酵に対応するイースト量にすることができます。
イースト量の調整の仕方
以前のコラムでご紹介した「ベーコンエピ」のレシピを例に解説します。
パン生地の材料
- 準強力粉(リスドォル)…200g
- インスタントドライイースト…1.5g
- 水…126~130g
- 塩…3g
- 砂糖…6g
- 無塩バター…6g
このレシピのイースト量は、ベーカーズパーセントで「0.75%」。
1/3量ということは、「0.25%」にすればOK。
(粉のグラム数)×(イーストのベーカーズパーセント)=(イースト量)
200g×0.25%=0.5g
作り方
- イースト量を0.5gにして生地をこねる。
- 1.5倍に膨らむまで30分間ほど発酵させ、冷蔵庫に一晩入れる。
- ベンチタイムからは、元のレシピ通りの工程でOK。
ベーカーズパーセントについての詳しい説明は、コラム「ベーカーズパーセントとは?徹底解説!」をご覧ください。
パン作りに大切なこと
発酵にかかる時間は糖分や油脂の量によって異なって来るので、発酵具合を見極めることが大切。
発酵の見極めは、冷蔵発酵の場合だけでなく、通常のパン作りにも大切な作業ですよね。
目で見て、生地に触れて、発酵の進み具合を見極めることが最も大切なのです。
空き時間をうまく使ってパン作り
今回は、冷蔵発酵のパン作りについて、レシピを交えて詳しく解説しました。
パンを焼くときに3~4時間拘束されるというのは、ハードルが高くて大変。
冷蔵発酵をマスターすれば、家事や趣味の合間に手軽に生地作りができるようになります。翌日の朝ごはんに焼きたてパンを楽しむなんてこともできますよ♪