湯せんとは
お菓子作りでよく出てくる「湯せん」とは、材料を直接火に当てずにお湯で温める方法のこと。
今回は、スポンジの共立て法とチョコレートを溶かす場合の湯せんの注意点について詳しく解説。
基本的な湯せんの方法もご紹介します。
湯せんはどんなときに必要?
湯せんは熱が急激に伝わらないため、材料をゆっくり温めることが可能です。
主に次のような場面で使います。
- 全卵を温めて泡立てる(ジェノワーズやロールケーキなどの共立て生地)
- チョコレートを溶かす
- バターを溶かす
- ゼラチンを溶かす
湯せんの方法
一般的な湯せんの方法は、鍋に水を入れてお湯を沸かし、材料を入れたボウルを重ねる方法。
この方法で湯せんをしたことのある方は多いのではないでしょうか。
実はこの方法、ちょっとしたポイントがあるんです。
それは、鍋とボウルのサイズ感。
鍋よりもボウルが小さすぎるとお湯の中でボウルが動いてしまい、安定した状態で温めることができません。ボウルの中にお湯が入ってしまう危険性があります。
逆に鍋よりもボウルが大きすぎると、お湯がボウルに当たらず、なかなか温まりません。
鍋にボウルを重ねてみて、お湯がちゃんと当たっているかを確認してくださいね。
ボウルに対してちょうどいい大きさの鍋がない場合は、フライパンを使う方法も。
フライパンは面が広くて高さがないため、大きめのボウルでもきちんとお湯が当たります。
また、お湯のかさが低いので、小さなボウルやカップも浮きにくく安定した状態で湯せんすることができるのも◎
例えば、湯せんしたバターをそのまま保温しながら別の作業をすることができます。
湯せんの温度
湯せんに使うお湯の温度は、60℃程度を目安に。
沸騰しているお湯は、湯せんにかける材料が熱くなりすぎてしまうのでNG。
低すぎると材料を温めるのに時間がかかるので、目安の温度で湯せんしてみてください。
温度の伝わり方は、ボウルの素材によっても変わるので注意。
ステンレスのボウルは熱伝導率が良いためすぐに温まりますが、厚手のガラスのボウルは温まるのに時間がかかります。
湯せんで全卵を泡立てる
共立て法でスポンジケーキを作るときの湯せんは、そのままでは泡立ちにくい全卵を泡立ちやすくするために必要な作業。
全卵はもともと、卵黄に含まれる脂質と卵白の表面張力の影響によって泡立ちにくい食材。
温めると卵白の表面張力が弱まり空気を抱き込みやすくなるので、素早く泡立てることができるようになります。
暑い時期は泡立てているうちに温度が上がるので、湯せんなしで泡立てられることも。
ただし、安定した生地を素早く作るためには、湯せんにかけて温度管理するのがおすすめです。
では、どのような手順で行うのかを確認してみましょう。
手順
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溶きほぐした全卵にグラニュー糖を加え、泡立て器で混ぜます。
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60℃程度の湯せんにかけて泡立て器で混ぜます。
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全卵の温度が36℃程度になったら湯せんから外します。
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ハンドミキサーの高速で泡立てます。
*レシピによっては泡立て器を使わず、最初からハンドミキサーで泡立てる場合もあります。
共立てスポンジの湯せんに関するQ&A
全卵は何℃に温める?
全卵の温度が36℃くらいになるように温めるのが目安(レシピによって幅があります)。
気温が低いときは湯せんから外すとすぐに温度が下がってしまうので、40℃くらいに温めるなど状況に応じて調整します。
温めすぎるとどうなる?
全卵の温度が高いと泡立ちは良くなりますが、一つ一つの気泡が大きくなり、きめが粗くなる原因に。
また、焼成前の生地は25℃くらいが適温。
生地の温度が適温より高い場合も、きめが粗くなる原因になります。
湯せんにかけっぱなしのまま泡立てず、全卵が温まったら必ず湯せんから外して泡立てるようにしましょう。
下の写真は60℃に温めた全卵を高速で3分間泡立てたものです。
泡立ちは良いですが、大きい気泡がたくさんあります。
湯せんでチョコレートを溶かす
チョコレートは熱に弱いため、必ず湯せんにかけて溶かします。
直火にかけて高温で急激に溶かすと、焦げたり分離したり…。
湯せんで溶かす場合も、やり方によっては風味やつやが損なわれることも。
チョコレートを湯せんで溶かす際の注意点などを見ていきましょう。
チョコレートの湯せんに関するQ&A
チョコレートは何℃に温める?
チョコレートを湯せんするときは、チョコレートが大体45〜50℃(ホワイトチョコは40℃前後)になるように温めます。
この温度を保っていると、その後の作業がしやすいです。
冬場で気温が低いときは、溶けた後も使用するまで湯せんにかけておくと良いでしょう。
*細かい温度管理が必要なテンパリングをする場合、製品に表示されている温度を参考にしてください。
高温で溶かすとどうなる?
チョコレートを高温で溶かすと、固まってもろもろの状態になることがあります。
特にホワイトチョコレートやミルクチョコレートを溶かす際は注意。
カカオバターの他に乳成分が加えられているので、油分が分離してもろもろの状態になりやすいです。
お湯が入ってしまうとどうなる?
チョコレートに水分が入ると、固まる原因に。
チョコレートを湯せんするときは、蒸気や水分がチョコレートのボウルに入らないように気を付けましょう。
湯せんの注意点を守ってお菓子作りを成功させよう!
「ただお湯に浸けるだけ」と思いがちの湯せんですが、状況に応じた工夫が必要です。
たかが湯せん、されど湯せん。
適した温度や方法を守って、お菓子作りを成功させましょう!