韓国で話題のかわいいお菓子
米粉のどんぐりマドレーヌ
cotta tomorrowの連載「なかしましほさんが出会った韓国のスイーツ、ときどきパン」や書籍、SNSなどでも大人気のなかしましほさん。韓国で話題のお菓子と、なかしまさんがお菓子作りを仕事にするまでのお話を伺いました。
どんぐりマドレーヌ
レシピを見る子ども時代の
お菓子作りの先生は雑誌と本
料理家としても活躍しながら、菓子店店主も務めるなかしましほさん。お菓子作りが好きなのは子どもの頃からだそう。
「小学5年生の頃、先生に許可をもらってお菓子クラブを学校につくったんです。親にお願いして買ってもらったオーブンを祖父が学校に運んでくれて、放課後、クラブのみんなでお菓子を作っていました。
ティーン向けの料理雑誌『メル』や『non-no』のレシピ全集などに大いに影響を受けましたが、お菓子作りは趣味のうち。その頃はまだ、仕事にしたいという考えは全くありませんでしたね。
音楽が好きだったので、上京してからはレコード会社に就職し、カルチャー雑誌の編集部や編集プロダクションなどでも働いてきました。
編集の仕事はとても楽しかったんですが、料理ページのお手伝いをした時に、子どもの頃から好きだった〈料理やお菓子を作る側〉になりたいと気づいたんです。素敵な料理の本の世界に憧れて、いつか自分もレシピ本を出せたらと思うようになりました」
経験ゼロから
料理とお菓子の仕事をスタート
仕事としての料理経験がなかったため、最初はパン屋さんでアルバイト。カフェやレストランでも経験を積むうちに、自分のお店を立ち上げたいという気持ちが、強くなっていきました。
「忙しくて、きちんとした食事をとることもままならず、体調を崩すこともありましたが、体も心も整えてくれたのは食べるもの。
おなかだけでなく、気持ちも満たされるようなお菓子を作りたいと思い、店の名前をfoodmood=フードムードと名付けました。
最初は資金がないので店舗を構えることができず、まずは通販から。保健所からの許可が得られる環境を探し、1台のオーブンを1日に何回転もさせ、梱包も全部ひとりでやっていました。今ではカート式のショッピングサイトが当たり前ですが、当時はお客さんとメールでやりとりをしたり。
ある日、編み物作家の姉(三國万里子さん)といっしょに展示会をしていた時に、偶然立ち寄られた編集者さんに声をかけていただいたのがご縁で、2007年に初めてお菓子の本を出すことになりました」
韓国で人気のスイーツを
なかしましほさん流にアレンジ
最初の著書の発売を機に通販のお客さんも増え、小さな工房を構えた後、お店を広い場所に移転。忙しい日々のなかで、仕事から離れてスイッチをオフにする時間をつくったのが、韓国のカルチャーに魅了されるきっかけでした。
「韓国映画やドラマを観始めたのは、8年ほど前から。映像で現実逃避をするうちに、韓国の文化をもっと知りたくなって、音楽を聴いたり、実際に訪れて街の空気を感じたりと、どんどんハマっていったんです!」
韓国を代表する7人組アーティストグループのYouTubeチャンネルで話題になった「どんぐりマドレーヌ」。今回は、しほさん流にアレンジしてご紹介いただきます。
「日本でも以前から時々目にしていたお菓子ですが、メンバー間で差し入れをしたものがとてもかわいい!と噂になり、SNSでよく見かけるようになりました」
合わせる食材で楽しみが広がる
米粉のお菓子
「今回目指したのは、軽やかでふんわりとしたマドレーヌ。米粉をベースに、油脂は、バターと太白ごま油のダブル使いするのがポイントです。
米粉は、合わせる食材や配合によって、もっちり、カリッと、ふんわりといった具合に、食感が変わるのが魅力です。
店でも焼き菓子やシフォンケーキなどに使っていて、合わせる油脂は菜種油などの植物油です。
でも、バターやクリームを使ったお菓子を食べるのは好き。ずっとバターの香りに包まれながら作業をしていると、ちょっとしんどくなることがあり、基本は植物性の油で、とっておきの機会はバターというように使い分けています。
バターの代わりとして植物油を使うのではなく、それぞれの良さとおいしさを生かしたお菓子を作りたいと思っています。
生地をレモンケーキの型に入れて焼くと、ころんとして先がキュッとしまった、どんぐりの形に。
バターと太白ごま油を使った生地は、時間がたっても、ふわっと柔らかく、濃厚すぎないコクがあります」
さらに、プレッツェルとチョコレート、クランチのトッピングで、どんぐりっぽさを演出。
「マドレーヌでも生地に米粉を使いましたが、同じく米粉でできるガレットも考えてみました」
ガレットのモチーフは、どんぐりが好きな〈りす〉! なんともかわいい、なかしましほさんらしいアイディアです。
りすの米粉ガレット
レシピを見る「ざくざくとした食感に焼き上げたいので、ガレットでは米粉にアーモンドパウダーとバターを混ぜてみました。歯切れがよく、口溶けもよくなります。
それぞれ個包装にしてからギフトボックスやギフト紙袋に入れて、プレゼントしてもいいですね」
ふんわり柔らかなマドレーヌと、香ばしく歯ざわりのいいガレット。どちらかだけでももちろん、2種を組み合わせれば、おいしさもかわいしさも増します。贈り物にすれば、お菓子を介して会話が弾みそうですね。
次回は、韓国で出会ったお菓子にまつわる連載についてのお話と、韓国の伝統食材「よもぎ」を使ったスコーンをなかしましほさんに伺います。
取材・文/singt 撮影/広瀬貴子(人物)、なかしましほ
出版社勤務の後、ベトナム料理店、オーガニックレストランなどで経験を積み、料理家として独立。2006年、おやつの店「foodmood」をオープン。おいしくて、体にもやさしい材料を使った、かわいいお菓子のレシピが人気。2024年4月末に新刊『なかしましほ ソウルのおいしいごはんとおやつ』(KADOKAWA)を発売予定。X(旧ツイッター)@nakashimarecipe