生菓子のような新鮮な味わい
米粉のティグレ
ワクワクするコンセプトの店舗やお菓子のオンライン販売をはじめ、SNSやYouTube、書籍でも話題の大人気パティシェ・ショコラティエ、江口和明シェフ。江口シェフに、新鮮な食感と作る楽しさの両方が味わえる、米粉を使ったティグレを教えていただきました。
米粉といちごコンフィのティグレ
レシピを見る人生を変えたモンブラン
2023年11月に開業する日本一高いビル「麻布台ヒルズ」への出店、目からうろこの作り方を発信するYouTubeやSNS、書籍など、精力的な活動が常に話題の江口和明シェフ。
「お菓子には人を幸せにする力があります」
20代で立ち上げた「デリーモ」ブランドのホームページには、こう記されています。
実際に、江口シェフご自身の生活を一変させるきっかけになったのは、あるお菓子だったそう。
「何をやったらいいのかわからなくて悶々としていた中学生のころ。ある時、母が買ってきた稲村省三シェフのお店『イナムラショウゾウ』のモンブランを食べて、なんだこれは!と衝撃が走ったんです。
それまで知らなかった洋菓子の素晴らしさに目覚め、製菓の道に進むことを決めました」
気持ちも暮らしも
豊かにしてくれるお菓子
「僕は今39歳なんですが、お店でもどんどん若い人にポジションを譲っていきたいんです。今後はもっと広く開拓をして、お菓子の裾野を広げていくことに力を入れていきたいんですよね。
YouTubeやSNSなどで、簡単に手に入る材料で作れるレシピを発信しているのは、お菓子を作ったことがない人にも興味を持ってもらいたいから。
最初は完璧にいかなくても、及第点がとれる成功体験を得ることで、もっと上手になりたい、と感じますよね。そうすると、あのケーキ屋さんに行ってみよう、さすがプロの作るものはすごいな!って思ってもらえる。
もっとお菓子を好きになってもらえるし、その人やその家族の生活も、お菓子があることで豊かになる。それって、お菓子業界全体が盛り上がることにもつながるんじゃないかなって思うんです」
ティグレに込めた驚きと楽しさ
「僕たちプロのパティシェが提供するなら、何か付加価値のあるお菓子がいいと思うんです。
焼き菓子も、ただ焼きっぱなしにするのではなくて、たとえば、フルーツのコンフィを忍ばせて、生菓子を味わうような特別感と驚きを持っていただけたらうれしいですね。
今回ご紹介するティグレには、そんな楽しさを散りばめてみました」
反響の大きさから感じる
「米粉」への注目度の高さ
YouTubeの配信をするようになって、問い合わせやリクエストが圧倒的に多いのが米粉なのだそう。
「具体的なお菓子ではなくて、『米粉を使ったレシピを知りたい』という声がとても多いんです。米粉の注目度とポテンシャルの高さを実感しています。
米粉を使ったレシピで初めてお菓子が上手にできた!という成功体験が寄せられることも多いですね」
そう話しながら、次々と材料を混ぜていくうちに、生地があっという間に準備できました。ティグレ型に絞り出していき、オーブンで焼けば生地の完成です。
「米粉は水分を抱く力が高いので、小麦粉に比べて水分を生地に多く入れることができます。その分、焼き上がったお菓子がしっとりとするし、程よく固まる性質もあるので、カリッとさせることもできるんです。
ただし、水分を抱く力は米粉の種類によってかなり違うので、僕がお菓子作りに使う米粉は『ミズホチカラ』一択ですね」
あとは、いちごのコンフィを作り、ホワイトチョコレートと合わせて組み立てれば、お店のようなティグレに。
「仕上げのチョコレートを溶かすのは、レンチンでいいんです。上からフリーズドライのいちごでデコレーションするので、テンパリングしなくても大丈夫!」
「いちごでなくても、お好みの果物でコンフィを作ってもいいですね。一度はレシピ通りに作ってみたら、次はアレンジしてみるのもおすすめですよ。甘酸っぱいものが仕上げのホワイトチョコレートと相性抜群です。もしコンフィをレモンで作ったら、上にピスタチオを散らしてもいいですね」
口に入れた瞬間は、ほんのりお米の香りがして、カリッとした食感。かむと、しっとりとした生地、いちごのコンフィ、2種のチョコレートのハーモニーが広がって、贅沢な味わいが楽しめます。
お菓子でみんなを幸せに
「僕たちパティシェの仕事は、『お客さま喜ばせ業』なんです! お菓子って、僕がモンブランに出会った時のように、うれしい場面に登場するもの。食べてもらったら、おいしい!と喜ばれ、発表したレシピでお菓子が上手に作れたと感想を聞かせてもらえる。お菓子を通して誰かを喜ばせることができる、最高の仕事ですよね」
希望に満ち溢れた笑顔で、お菓子には、人生をも変え、明るい希望を与えてくれる力があることも教えてくれた江口シェフ。国内のみにとどまらない江口シェフの快進撃に、今後も目が離せません!
次回はhitomiさんに、秋にぴったりな栗を使った生シフォンケーキのお話をうかがいます。
取材・文/singt 撮影/広瀬 貴子
2013年に自身の「デリーモ」ブランドを立ち上げ、全国展開を行い、「パティスリー&カフェ デリーモ」の総責任者として、シェフショコラティエ、シェフパティシエを務める。YouTubeチャンネル「KAZUAKI EGUCHI/チョコレートのプロ:ショコラティエ Chocolate」も大人気。「麻布台ヒルズ」の新店舗では英国東インド会社とコラボレーション展開する、オリジナルの紅茶やパフェなども楽しめる。著書『とんでもないお菓子作り』(ワニブックス)は第10回料理レシピ本大賞〈お菓子部門〉大賞受賞。