秋の味覚を堪能!
デコレーションも断面も美しき
生シフォンケーキ
この連載のVol.20で「子どもの自由研究にもぴったり!美しい宝石のような琥珀糖」を紹介してくれたhitomiさん。実験のように色が変わる様が楽しい琥珀糖をわかりやすく教えてくれました。
一方で、「ほんの少しの努力でセレブ風⭐︎がモットー」と、ブログやインスタにも自ら記しているように、エレガントなデコレーションを施した生ケーキやシックな花形のタルトなども得意。そこで今回は、秋にぴったりな栗を使った生シフォンケーキを教えていただきます。パッと目を引く美しい姿のケーキを作るためには、特別な技術は必要ないのだそう。誰でも作りやすいように工夫されたhitomiさんならではのレシピです。
マロン生シフォンケーキ
レシピを見るシフォン型で作る
手軽で華やかな生シフォンケーキ
ふわふわのシフォンケーキの中に、たっぷりと生クリームなどを入れた「生シフォン」。パウンド型やマフィン型を使って作る人も多いでしょう。しかし、hitomiさんが使うのはシフォン型。その理由は?
「丸くて大きなシフォンケーキが焼き上がると達成感がありませんか(笑)。 ナッペせず、手軽に華やかに見せることもできるのも良いなと思っています。ママ友からのリクエストも多いんですよ」
もともと、家族が好きだということもあってシフォンケーキをよく焼いていたのだそう。一時期、慣れている手順で作っても失敗することがあり、何度もレシピを見直してきたと言います。
「いつも通り焼いても底上げしてしまうことがあったんです。調べてみたら季節によって卵白の水分量が違うことを知って。それ以来、レシピの数字にとらわれすぎないようになりました。メレンゲを作る際は状態を見て加減するようにしています」
弾力があってしなやかなメレンゲが、シフォンケーキをふんわり仕上げるコツだと、実際に作って見せてくれます。見極め方が難しいのですが、そこは何度も作ってみるしかない、とも。
「混ぜているうちに、もったりしていたのがふっと軽くなる瞬間があります。泡立て器を持ち上げた時の軽さや、その時のツノの立ち方を覚えておくといいと思いますよ」
自己流だからこそ、
失敗を繰り返してコツをつかむ
hitomiさん自身、何度も失敗を繰り返して、メレンゲの状態を見極められるようになったと言います。それは、このお菓子に限らずのこと。
「私は、特別にどこかで修行したわけでもなく、製菓学校に通ったわけでもありません。お菓子が好きで、家族や友達が喜んでくれるのが嬉しくて作り続けている主婦です。ただ、うまくいかなかったら、なんとかして原因を知りたいし、きちんと成功させたいと思う性格。だから、ネットや本を見て調べて、何度も作ってコツをつかめるようにしています」
あれこれ試行錯誤し、失敗を経験することで、レシピをいつもブラッシュアップしています。ここが失敗しやすいから、こう工夫すればうまくできる。この工程さえおさえれば、あとはざっくりやっても成功する。何度も作ることで、そんなコツが自然とレシピに盛り込まれてきました。
「せっかく作るのだから、おいしく、見栄えよく仕上げたいと思いますよね。そのためには、ここだけはしっかりやるといいとか、ここはちょっと失敗してもあとからリカバリーできる、といった小さな工夫を大事にするようにしています。失敗は成功のもとだと思っています」
「少しの工夫でセレブ風」というhitomiさんのモットーは、そうやって積み重ねてきたものだということが伝わってきます。
家族や友人が
パッと笑顔になるケーキ
今回の生シフォンケーキは、少し失敗しても見栄え良く仕上げやすいお菓子としておすすめだとも教えてくれます。
「昔の私のように、焼き上がりが多少底上げになっても、デコレーションすればカバーできます。ほかにも、ちょっと空気が入って空洞ができてしまっても、生クリームを詰めればなんとかなる。失敗を恐れずに作れるのが、このケーキの良さなんです!」とにっこり。
焼き上がったシフォンケーキを冷まして型から出したら、「ここから生シフォンらしい作業ですよ」と嬉しそうに進めていきます。
まず、菜箸を差し込んで、8箇所に穴を開けます。
「開ける前に、菜箸を横に当てて、深さ2/3くらいの位置を確認しておくようにしてください。そうすれば奥まで差し込みすぎちゃったという失敗が防げます」
穴を開けたら、マロンクリームを絞り込みます。
「菜箸で開けた穴に、グッと丸口金を差し込んでください。穴が少し広がったとしても、デコレーションすれば見えなくなるので大丈夫です。クリームをしっかり入れることのほうが大事ですから」
クリームを入れたら、途中でカットした栗の渋皮煮を詰めて、またクリームを絞り込みます。
「栗を入れるときは、細い竹串でつまむようにするのがおすすめ。菜箸でもできますが、細いほうが奥まで入れやすくて便利です」
8箇所すべてにマロンクリームと栗の渋皮煮を詰めていきます。作り慣れているだけあって、手際よくテキパキと進めるhitomiさん。次はデコレーションです。
「先ほど使った丸口金に好みの口金をかぶせて、まずは穴を塞ぐようにデコレーションしてください。穴を塞ぎつつも、その位置は自分でわかるようにしておくのがコツ。あとからカットする際の目安になります。次に、穴の位置を避けて栗をのせてください」
大切なのは、8箇所に入れたクリームの位置。カットした際の断面の美しさを考えてのことだと言います。
「上にのせた栗を避けて、穴を開けた位置をめがけてカットすれば、断面にクリームがしっかり見えるはずです。この断面が見えるのが、みんなが喜んでくれる瞬間なんです。家族も友人も、わーっと歓声をあげてくれるので、作り甲斐があるなぁと思えます」。
確かに、生シフォンケーキだと知らない人が、このカットした断面を見れば驚くに違いありません。誰かが喜ぶ姿を見るためには、デコレーションの際のちょっと工夫をしておくことが大事というわけです。
崩れにくいから、
手土産にもおすすめ
この生シフォンケーキは、hitomiさんのママ友たちにも人気の一品。よく手土産として持っていくのだそう。
「デコレーションケーキだとナッペする手間も必要ですし、持ち運ぶ時にも気を遣いますよね。これは上にデコレーションしているだけなので、崩れる心配がそれほどありません。カットした時にみんなが驚いてくれるのも嬉しいんです」
ボックスに入れたら、好きなリボンをキュッと巻いて。
今回は秋らしく栗を使いましたが、春にはいちご、初夏にはレモンを使ったりと季節の味を楽しむようにしているそう。
「失敗してもデコレーションでなんとか見栄え良くできるし、カットした時にみんなの驚いた顔や笑顔を見られるのも嬉しいんです。ぜひ、作ってみてください」
hitomiさん自身が繰り返し作って確かめたレシピには、メレンゲのコツやデコレーションのポイントなど、小さな工夫が詰まっています。完成した満足感を味わえるだけでなく、切り分けた際のまわりの反応も含めて楽しい時間になるはずです。
次回は、瀧島シェフにプラントベースの材料で作るお菓子のお話をうかがいます。
取材・文/晴山 香織 撮影/田中舘 裕介
cottaオフィシャルパートナー。「ほんの少しの努力でセレブ風☆」をモットーにしてお菓子やパンを作り続けている。手軽にできる工夫でぐっと華やかに見える仕上がりと、上品で写真映えのするラッピングやスタイリングが人気。お菓子作りの話や、二人の息子と夫との日々の料理を綴ったブログ「えセレブ日記」も注目を集めている。