ほどける口溶けに感動!
スペルト小麦のサブレ
創業から35年以上、お菓子作り愛好家からプロにまで高い人気を集める「オーブンミトン」。オーナーシェフ小嶋ルミ先生が出会ってから魅了されているという「スペルト小麦」を使った、シンプルでありながら繊細な、唯一無二の味を教わります。
スペルト小麦のふぞろいサブレ
レシピを見るシンプルだからこそ極めたい!
永遠の定番お菓子「クッキー」
焼き菓子やシュークリーム、タルトなど、小嶋ルミ先生がオーナーシェフを務める「オーブンミトン」に並ぶのは、シンプルで、一見何げないお菓子たち。
おなじみの顔であっても、小嶋先生のお菓子は、口にするとハッとするような新鮮な驚きと感動を覚えます。
「混ぜたり、泡立てたりと、ひとつひとつの作業には、生地を作り上げるうえでのしっかりとした役割があります。同じ材料やレシピでも、手の動かし方や道具の使い方、焼き方で、味や食感が変わってくるのがお菓子作りの面白いところです」
常に理想の味を追求し、生地の「混ぜ方」を進化させ続けていて、クッキーの混ぜ方だけで一冊、本を書き上げたほど!
「クッキーって永遠のもの。少ない材料と道具で誰でも始められるのがいいですね。使う材料が少ないミニマルなお菓子。だからこそ皆さんにも、どんな味に仕上げたいのかをしっかりと考え、それにはどんな粉や材料をどれだけ使い、どのように混ぜたらよいかを考えられるようになってほしいです」
豊かな味わいにとりこになる
注目の食材「スペルト小麦」
普段からフランス産の粉を使ったり、全粒粉を使ったりと、妥協のない味と食感を追い求めている小嶋先生。ある時、北海道の生産者さんから持ち込まれて出会ったのが「スペルト小麦」です。
「古代小麦とも呼ばれ、今、みなさんが食べている小麦粉の原種ともいわれるのがスペルト小麦。
栄養価が高く、特に健康志向の高い人たちから支持されている、ヨーロッパでも注目を集めている小麦です。
日本では、スペルト小麦でパンは作られていましたが、お菓子はまだ使われたことがなかったので、さて、どうなるのかな?と思いながらクッキー作りを試してみました。
焼き上がったクッキーを食べて、びっくり! ナッツを加えたようなナッティな味わいで、さとうきび糖を使ったようなコクのある甘みが広がり、粉が粗いせいか、サクサクとした口どけの良い食感。後味に小麦の粉の香ばしさも感じられ、たちまちとりこになりました。
クッキーは、スペルト小麦100パーセントでも、ほかの薄力粉にスペルト小麦を混ぜて使うこともでき、スペルト小麦だけでも混ぜて使った時も、薄力粉だけの時より断然混ぜやすく、生地も扱いやすいんです。バターを泡立てる事もなく、細かいフレゼも全くせずにサクサク感が生まれるとは、もう感激しました。お店のお客さまや教室の生徒さんも、『もう普通の小麦粉に戻れない!』と夢中になるほど。
他の材料は同じ配合なのに、スペルト小麦が入ると、形はしっかりしているのに全く固くならず、サクッと軽く仕上がります。ビギナーさんにもおすすめです。
以前は店で型抜きクッキーは販売していませんでしたが、スペルト小麦に出会ってからは、クッキーの種類が増えました。スペルト小麦を使うとエッジがしっかり出ながら、ほどけるような食感になり、すっかり気に入っています」
素材の持つ力を最大に引き出す
小嶋ルミ流クッキーレッスン
今回、小嶋先生に教えていただくのはスペルト小麦100%の配合にした、ひとくちサイズのクッキー。
「スペルト小麦の個性がわかる、シンプルなサブレを作ります。
私のお菓子作りでは、混ぜ方に名前をつけているのですが、このレシピでは『クッキー混ぜ』をします。
ボウルの右から左へ、真横に一の字を書くようにしてバターを切り混ぜ、奥から手前まで同様にくり返して混ぜていく方法です。
混ぜていくうちに、スペルト小麦がバターの粒を覆い、サラサラに。その後で生地を一つにまとめます。この『クッキー混ぜ』が、焼き上がった時に均一で繊細な口溶けを生むのです。
スペルト小麦で作ればなおのこと、食べた時に、サクサク、ほろっとした食感の良さを感じることができますよ!
オーブンで20分ほど焼いて、粉糖をふればでき上がり。サラサラと、すっと溶けるほどの口当たりのサブレです」
くり返し作ることで
お菓子がもっとおいしくなる
「食材の持つ自然な味わいこそが、お菓子のおいしさにつながります。その良さを引き出すには〈混ぜ方〉が大切。
繊細な味わいを作るためには、きめ細やかなレシピと技術が不可欠です。適格なレシピだけでなく、その素材や材料に合った混ぜ方、目指す味にするための混ぜ方も、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。
すぐには難しいかも知れませんが、くり返し作って、技術を身につけていくことも大切です。だんだん上手になっていく喜びと、おいしくできたものを食べた時の感動もぜひ味わってほしいです」
シンプルラッピングで
サブレをクリスマスプレゼントに
「クッキーはプレゼントしやすく、時間のあるときに作っておけるのもいいですよね。
一般的な薄力粉よりも少し価格が高めのスペルト小麦ですが、このサブレはアーモンドパウダーを入れなくてもナッティな味わいがします。このサブレは使う材料がミニマムな分、バターの風味も感じやすいので、普通のサブレよりも使うバターの量を減らすことができますよ。
おいしく作れたら、ぜひ幸せのお裾分けを。雪のような粉糖仕上げの一口サイズのサブレは、スペインでクリスマスに食べられているお菓子『ポルボロン』のよう。
お菓子と同様、ラッピングも飾らないものが好きなので、シンプルなスタイルが私のお気に入り。クリアな円筒ケースに入れると、湿気にくく壊れにくいうえ、中の様子も見えます。ガラス瓶のように見える、軽くて丈夫なPET素材でスクリュー蓋の容器がおすすめです。
スペルト小麦で作るクッキーは、まだまだ楽しさがいっぱい! アレンジ次第で、クリスマス気分が盛り上がりますよ。特別な日をかわいく演出するクッキーも、いっしょに作りましょう」
次回も小嶋先生のレシピで、スペルト小麦の「リースクッキー」と「ジャンドゥーヤサンド」をお届けします。
取材・文/singt 撮影/広瀬貴子
東京・小金井「オーブンミトン」オーナーシェフ。1987年に開業し、女性パティシェの草分け的存在として、お菓子作り愛好家からプロのパティシェにまで熱烈なファンが多い。素材の味を最大限に引き出すため、レシピだけでなく混ぜ方も伝授。公表している繊細な味わいのレシピは再現性が高い。cottaオリジナル製菓道具の監修も行い、プレミアムレッスンも人気。『オーブンミトン 小嶋ルミの小仕込み製菓テクニック』『小嶋ルミのおいしいクッキーの混ぜ方』など著書多数。キッチンエイドを使ったレッスンも開催中。Instagram @ovenmitten.koganei