スペルト小麦のクッキーで
クリスマスのティータイム
cottaプレミアムレッスンの講師や製菓道具の監修も務める「オーブンミトン」オーナーシェフ小嶋ルミ先生。おいしさへの研究に余念のない小嶋先生が「理想の味!」と絶賛する「スペルト小麦」を使ったクッキーのレシピを、クリスマスのスペシャルバージョンでお届けします。
前回は、スペルト小麦100%の配合でシンプルなサブレをご紹介しましたが、今回は、普段お使いの薄力粉にスペルト小麦を混ぜて作る型抜きクッキーを作ります。
「粉をミックスしてもナッティな味わいがあり、さとうきび糖を使っているようなコクのある甘みが感じられ、後味には小麦の強い風味が広がります。
形を変えれば、表情もさまざまに変化するのもクッキー作りの楽しさのひとつ。同じクッキー生地を形や厚さを変えて焼き、サンドするものも変えて、2種類ご用意しました」
手のひらサイズでキュートな
スペルト小麦のリースクッキー
スペルト小麦のリースクッキー
レシピを見る「一般的な薄力粉だけで作るものに比べて、スペルト小麦を使ったクッキー生地は口溶けがよいのに、エッジがきれいに出ます。その特徴を生かして、ヒイラギ形の小さなクッキーでクリスマスリースを作りましょう。
クッキー生地を作ったらポリ袋に入れ、袋の上からめん棒で伸ばすと、クッキーが固くなる原因でもある手粉を打つ必要がありません。
スタンプクッキー型を使えば、くっきりと模様がつきます。
土台のクッキーにはフランボワーズジャムをサンドして。
スペルト小麦の豊かな風味と、甘酸っぱいジャムのハーモニーがベストマッチ!
ヒイラギのクッキーをアイシングで接着すれば、リースクッキーのでき上がり」
ワイヤー入りのリボンを結んで裏側の結び目にビニタイを通し、リースクッキーに留めておめかししても。
同じクッキー生地で
ジャンドゥーヤサンドに
ジャンドゥーヤクッキーサンド
レシピを見るスペルト小麦のクッキーは、濃厚なジャンドゥーヤクリームとの相性も抜群です。
「香ばしくローストしたナッツをキャラメリゼし、フードプロセッサーでペーストにします。そこにチョコレートを混ぜれば、なめらかでリッチなジャンドゥーヤクリームに」
花形で抜いたクッキーでサンドして完成です。
素材への探究心が広げてくれる
お菓子の世界
小嶋先生が、スペルト小麦のほかに大切にしている食材は?
「もう20年以上も前から日常で親しんでいる、スパイスとハーブです」
ご自宅のキッチンの一角には、スパイスをずらりと並べたコーナーが。
「近ごろ大ブームになっているスパイスカレーですが、20年以上前にインドスパイス料理教室に通い、インストラクタークラスを卒業しました。タイ料理教室にも10年以上通っています。昨年修了しましたが、小麦粉料理のクラスにも通い、肉まん作りも得意になりました。それらの料理を、自宅にお客さまがいらっしゃる時にふるまっています。
素の食材から自分の手で作り出せる味を極めたいと思い、スパイスとハーブの勉強をしています。スパイス使いの基本を知って、それからお菓子作りに応用しようと思ったのです。それはとても役に立ち、日々の食生活まで楽しくなります」
小嶋先生のお店「オーブンミトン」のエントランスはハーブが華を添え、お客さまを出迎えてくれます。
お菓子作りで
お伝えしていきたいこと
大学では音楽を学び、卒業後は営業の仕事に就いていたという小嶋先生。お菓子作りは趣味で作る程度でしたが、子どもの頃から好きだったそう。
「小学校5年生の時の誕生日には、プレゼントにオーブンを買ってもらいました。これは、当時使っていたのと同じ型のオーブンです。ガスコンロにのせてガス火で焼いていたんですよ。
初めて作ったお菓子はアップルパイでした。それが上手にできたことで、お菓子作りにはまりました。もともと、ものづくりが好きな子どもだったんです」
料理人のご主人に出会ったことがきっかけで、社会人になってから夜間の製菓学校へ。新宿中村屋「グロリエッテ」で横溝春雄シェフ(現「リリエンベルグ」オーナーシェフ)のもとでの修行を経て、手探り状態ながら「オーブンミトン」をオープンしました。
「今では全国からお客さんが来てくださり、海外でも教室を開催していますが、1987年に開店した当時は、女性の菓子店は少なく、お手本もないので苦労の連続でした。
開店後何年かして料理雑誌に取り上げてもらったりして、少しずつお客様が増えていきました。さらにお店を軌道に載せていきたいと思った時に、大切なのは『自分だけしかできない味を作ること』だと確信しました。
『このお菓子、これまで食べたものの中で1番おいしい!』と言ってもらえるものを常に目指しています。
そのための味づくりを研究する一方、混ぜ方ひとつで味が左右することにも気がつきました。それはレシピ以上に重要なこと。
それをスタッフや教室の生徒さん、そしてお菓子作りの好きな方々に伝えていくのが私の使命だと思っています。
お菓子作りが上達していく喜び、完成したものを食べて得られる感動を、皆さんにもぜひ体験してほしいです。
そして、その過程も楽しいと思っていただけたら、私にとってとても嬉しく、幸せなことです」
次回は、洋菓子界のレジェンド大森由紀子さんと、cottaでもおなじみの鎌倉・レガレヴ佐藤亮太郎シェフに、新年を祝う「ガレット・デ・ロワ」のお話を伺います。
取材・文/singt 撮影/広瀬貴子
東京・小金井「オーブンミトン」オーナーシェフ。1987年に開業し、女性パティシェの草分け的存在として、お菓子作り愛好家からプロのパティシェにまで熱烈なファンが多い。素材の味を最大限に引き出すため、レシピだけでなく混ぜ方も伝授。公表している繊細な味わいのレシピは再現性が高い。cottaオリジナル製菓道具の監修も行い、プレミアムレッスンも人気。『オーブンミトン 小嶋ルミの小仕込み製菓テクニック』『小嶋ルミのおいしいクッキーの混ぜ方』など著書多数。キッチンエイドを使ったレッスンも開催中。Instagram @ovenmitten.koganei