マフィン型さえあればできる
手のひらサイズのかわいいお菓子
スポンジケーキを焼き、生クリームを塗って缶詰のパインやキウイをのせていく……。ときどき生クリームをなめたり、フルーツをつまみ食いしたり。みのすけさんの初めてのお菓子作りの記憶は、幼いころの家族の誕生日ケーキだと振り返ります。
「母と兄と3人で作ったんですよね。すごく楽しくてワクワクしながら作った気持ちを覚えています」
お菓子作りに夢中になり、小学生のころのバレンタインデーでは、チョコチップマフィンを焼いて友人たちに配ったと言います。
「『おいしい!』『こんなの作れるの?』って言われたのが嬉しくて。家族以外の誰かに喜んでもらえるって、こんなに幸せなんだと感じた初めての経験だったかも知れません」
忙しくても、気軽に作れるようなお菓子を
今回教えてくれた「バナナチョコチップマフィン」はそんな記憶を思い出させるお菓子のひとつ。ほおばろうと顔に近づけただけでバナナの甘い香りが広がります。
バナナチョコチップマフィン
レシピを見る「熟したバナナを潰して生地に練り込んでいるんです。このひと手間でおいしくなって、子どもから大人まで喜ばれる味に仕上がります」
自分の好みの味であることはもちろん、レシピを見て作る人や、贈り先までを考えていることがよくわかります。というのも、みのすけさんの活動の中心は「通信お菓子教室」。お客様とのやりとりで感じたことや要望を自身のお菓子作りにいかしてきました。迷わないように、楽しめるように。作った人も食べた人も、おいしいと笑い合えるように。そんな思いであれこれ試作をし、レシピを生み出しています。
マフィン型があればできる、さまざまなお菓子
一つの型で、いろいろなお菓子を作るという案も、お客様を思って考えたことでした。
「マフィン型を買って、マフィンだけ焼いていると飽きてしまうかもしれない、と。私自身も、あれこれ使える方が嬉しいし、使っているうちにもっといろいろ作れる!と思ったんです」
米粉のオレンジアップサイドダウンケーキ
レシピを見るそうしてできたのが「米粉のオレンジアップサイドダウンケーキ」と「米粉のベイクドチーズケーキ」。「米粉のオレンジアップサイドダウンケーキ」は、オレンジの輪切りがなんともかわいらしいアクセントになっています。
「型を見ていたら、オレンジの輪切りのサイズがピッタリだと思いついたんです。オレンジを底に敷いて生地を流し込み、焼き上がったら上下を返してしばらくそのままに。生地が落ち着いたら完成です」
材料を混ぜて焼くだけでも、オレンジがあしらわれるだけでグッとかわいらしい見た目になるのは、さすがです。
焼き上がった直後は、ふんわり生地がふくらんでいますが、ここは心を鬼にしてくるっと裏返しましょう。
「『アップサイドダウン』という名前の通り、焼いた後にひっくり返すと、自重で生地がぎゅっと詰まってしっとりするんです。手軽にできるのでおすすめですよ」
誰かに贈りたくなるような見栄えにもこだわって
米粉のベイクドチーズケーキ
レシピを見る「米粉のベイクドチーズケーキ」も、マフィン型で焼くことで一人分のサイズに仕上げることができます。このコンパクトさがとても便利で、おやつだけでなくプレゼントにもピッタリ。
「ヨーグルトを加えてさっぱりとした味にしています。これも混ぜて焼くだけ。素朴な仕上がりのお菓子だと、渡す相手にも負担にならないかなと思います」
おいしいのはもちろんのこと、手軽にできて、見映えがいい。さらに、贈り物としても渡しやすい。これは、みのすけさんがお菓子を作るうえで大切にしていることです。
「子育てしている方もいれば、仕事や介護で忙しい方もいます。そんななか、せっかく作るなら失敗してほしくない。思いついた時に作れて、気軽に簡単にできて、なおかつ、家族や友達にも喜んでもらえる見た目のものをと考えています」
「米粉のオレンジアップサイドダウンケーキ」と「米粉のベイクドチーズケーキ」は、どちらも米粉で作るお菓子。グルテンフリーなので体に優しく、アレルギーのある方にも喜ばれます。
「手作りのお菓子の良さは、材料を選べること。できたての香りやおいしさをすぐに味わえること。そして、そのおいしさを身近な人たちと共有できることもいいな、と。『おいしいね』『おいしかったよ』と言われると、また作ろうと思えるんです」。
少女時代、マフィンを作った時に感じた嬉しさや楽しさ。それは今も変わりなく、みのすけさんの中にあることが伝わってきます。誰かを思って作るお菓子は、自分もまわりも幸せにしてくれるもの。ぜひ、みなさんも自分のために、誰かのために作ってみてください。
次回は、今回紹介したお菓子のラッピングの仕方を教えていただきます。
【取材・文/晴山香織 撮影/大塚紘雅】
みのすけ(柳谷みのり)さん
1988年生まれ。福岡県在住。菓子製造技能士2級。県内の製菓学校を卒業後、パティスリーや製菓専門学校、企業のメニュー開発などを経て「みのすけ通信お菓子教室」として自身の教室を主宰。動画とLINEによる完全個別指導で、時間と場所に縛られずに受講できる新しいスタイルでお菓子作りを発信している。自由なスタイルに加え、わかりやすく作りやすいレシピが人気に。cottaオフィシャルパートナーとしても活躍している。