まるで、絵本から出てきたよう!
愛らしいアニマルバターケーキ
愛らしいキャラクターや動物、身のまわりにある美しい草花……。それらをお菓子で作り、独特な世界観を生み出しているのが、お菓子絵本作家の上岡麻美さんです。cottaでも、その繊細でかわいらしいお菓子にファンがたくさん。
今回教えていただくのは「アニマルバターケーキ」。まるでぬいぐるみのような焼き上がりがかわいらしく、大人気のレシピです。そのコツを大公開!
アニマルバターケーキ
レシピを見る小さなコツを重ねれば
ふっくらきれいな焼き上がりに
「この型、本当にかわいいですよね」と上岡さんがにっこりしながら手にしているのは、cottaでも大人気の「うさぎ&くま型」。他にも「ライオン&ねこ型」や「犬&ねずみ型」もあり、上岡さんはこれでよくバターケーキを焼くのだそう。
「ちょっとだけココアパウダーを混ぜているんです。色がつくことで、よりぬいぐるみっぽさが出るのでおすすめですよ」と手早く混ぜ合わせた生地を絞り袋へ。さらにはさっと電子スケールを取り出し、そこに型をのせます。
「うさぎは20g、くまは25gくらいがベスト。多いとふくらみすぎるし、少ないと耳が欠けたりしてしまうので……。さらに、細かいところはつまようじでなでるようにして入れるといいですよ」
生地をしっかり入れたら、天板の上で軽くトントンと落として気泡を抜き、オーブンへ。焼き上がりを待ちます。
迷って悩んで……
憧れの人に後押しされたお菓子作り
上岡さんにとって、このケーキは自身の好きな世界にぴったりだと話します。著書である写真絵本『おかしなおかしなおはなしえほん』にも、この動物たちが登場。この一冊は、背景から登場する動物や人物まですべてお菓子という力作です。そもそも、パティシエとして活躍していた上岡さんが、なぜお菓子で絵本を作ろうと考えたのでしょうか?
「じつは、結婚を機にパティシエをやめて、自分に何ができるか模索していた時期があったんです。別の仕事をしてみたり、いろいろな人に話を聞いたりするなかで、やっぱり自分にできるのはお菓子しかないと思い直して。じゃあ、自分らしいお菓子作りは何かを考えたときに思い浮かんだのが、大好きな宮崎駿さんの描く世界。私もお菓子で何か表現したいと考えるようになったんです。さらに、宮崎さんご本人にお会いできたうえに『やりたいことがあるなら、やってみたらいいよ』と言ってもらえたのも大きかったと思います」
迷って考えたこと、さらに、憧れの人に背中を押してもらえたことで、お菓子作りの道に再び戻った上岡さん。好きなキャラクターや動物、季節の草花などをモチーフにしながら、アイシングクッキーや立体のケーキを作ってはSNSでアップ。技術の細かさや再現度の高さが注目となって、ファンが増えていったというわけです。
やわらかいシリコン型なら取り出しやすさも抜群
そんな話を聞いているうちに、香ばしい匂いが……。「そろそろ焼き上がりですね」と、オーブンから取り出します。
「型からはずす際は、耳が折れてしまったりしないよう、ちょっと型を引っ張ってすき間を作ってあげると出しやすいですよ」と、型の左右と上下をそれぞれぐっと引っ張ります。
そして、ケーキクーラーの上に裏返して置き、そっと型をはがすように……。すると、かわいらしいうさぎやくまの形をしたバターケーキが登場! ふちにはほんのり焼き色がついていて、なんともおいしそうです。
「特に溶かしバターを塗ったりしなくても型ばなれがすごくいいし、シリコン製でやわらかいので裏から軽く押し出せるのも便利です」
目の位置さえ決まれば愛らしい表情に
そのまま置いて冷めたら、背中のふくらみをちょっと削りとって平らに。安定するので、この後の作業がぐっとスムーズになるポイントです。さっそく、チョコペンで目や鼻などの表情を描いていきます。
「まず、中心になる鼻から口にかけての白いふくらみから。その後に、バランスを見ながら目を書いていくのがおすすめです。目の位置で表情が変わるので、ここは大切です」と慎重に作業をしていく上岡さん。
型にも目や鼻の凹みはあるのですが、焼き上がったものはちょっと見分けにくいことも。慣れるまでは、型を見ながら目の位置を決めるのがおすすめだそう。
胸元には、本物のリボンを巻くこともありますが、今回はフォンダン用の型を使ったチョコレートのりぼんをあしらいました。
ストーリー性のあるラッピングで完成!
なんとも愛らしいこのお菓子。お子さんの友達からママ友まで年代を問わず好評で、プレゼントのしがいがあると話します。
「バターケーキはいろいろな方に食べていただけるスタンダードなお菓子ですよね。それがこんなかわいい姿に焼きあがるだけですごく喜んでもらえるのが嬉しくて。ラッピングもこの形に合わせて考えるのが楽しいんです」と言いながら組み立てたのが、家の形をしたボックス。
アニマルバターケーキのラッピング
レシピを見る一体ずつクリスタルパックにつめて、箱の中に並べ入れるだけ。まるで絵本から出てきたようなラッピングの完成です。お菓子絵本を作る上岡さんならではの仕上がり!
「お菓子作りもラッピングも、自分が楽しんでできること。だから続けられるんだと思います」と笑います。
まず、自分が楽しんで作る。その気持ちはきっと相手にも伝わり、喜んでもらえたら、嬉しい気持ちがもっと広がっていく。上岡さんは今日も楽しそうにお菓子を作っているに違いありません。
次回は、上岡さんに夏にぴったりなクッキー缶のお話をうかがいます。
取材・文/晴山 香織 撮影/田中舘 裕介
cottaオフィシャルパートナー。お菓子絵本作家。パティシエとして洋菓子店に勤務後、2020年に独立。企業や書籍、WEBサイトでのレシピ提供や動画製作のほか、アイシングクッキー教室の主宰や製菓学校の特別講師など幅広く活躍中。著書に『おかしなおかしなおはなしえほん』(イースト・プレス)や『絵本の世界の可愛いクッキー』(マイナビ出版)がある。