旬のモチーフがぎっしり詰まった
夏のクッキー缶
好きなキャラクターや動物、旬の草花……。それらをモチーフにしたクッキーや立体ケーキが大人気の上岡麻美さん。その繊細な技と再現度の高さから、cottaにはたくさんのファンがいます。今回紹介するのは、夏らしい生き物や植物をモチーフしたクッキー缶! なかでも、初心者でも作りやすいアイスボックスクッキーとアイシングのコツを教えてもらいます。
ペンギンのアイスボックスクッキー
レシピを見る「青」で夏らしさを演出!
ペンギンモチーフのクッキー
ワクワクしながら缶の蓋を開けてみると、かわいらしいクッキーがぎっしり! ぎゅっと詰まった姿にキュンとしつつ、じっくり見るとひまわりやチンアナゴなど、夏らしいモチーフばかりで楽しくなってきます。
「クッキーは焼き上がりも達成感がありますし、缶にすき間なく詰め込めた時にも『やったー』という気持ちが出てきます」と、上岡さんは嬉しそうに缶を眺めます。
前回「宮崎駿さんが大好き」と話してくれた上岡さん。これらのかわいらしいクッキーを作り始めたのも、そんな自分の好きな世界を表現したいという思いからだったと教えてくれます。
「私の場合、まず自分が楽しんで作ることが大前提なのかも……。好きなキャラクターやかわいい動物モチーフは、作り方を考えている時から楽しいし、作っている最中もできあがってからもずっとその気持ちが続いている感じなんです」と笑います。
この缶には、上岡さんのそんな「楽しい!」が詰まっています。缶の中でもとりわけ目を引くのが青い「ペンギンのアイスボックスクッキー」と「ジンベイザメのアイシングクッキー」。
生地を青く色付けするために使ったのは「リナブルー」。上岡さんがさまざまなモチーフを作るうえでいつも愛用している色素剤です。
「天然色素なんですが、焼成してもきれいな青色に仕上がるのがすごいな、と。ペンギンにこの色が欠かせないし、他にも青がポイントになるキャラクターにもよく使っています。ちなみに、ペンギンは、ほんの少しだけ横に長いだ円形にすると愛らしい雰囲気になりますよ」
生地を手早く整えたら、冷凍庫で30分、そのあと冷蔵庫で20〜30分冷やしてカットします。
「冷蔵庫から出したては固くてヒビが入りやすいので、10分くらいそのまま置いてからにすると切りやすいですよ。輪切りのペンギン、かわいいですよね……(笑)。」
クチバシ部分をのせてスティックで目の跡をつけたら、オーブンへ。夏らしい雰囲気満点のクッキーができあがりました。
「成形の加減や目の位置は毎回必ず同じにはできないので、仕上がりも変わってきます。それが手作りの良さだし、かわいらしさにつながるのかも。この子、ちょっと垂れ目に見えるな、こっちはうまくウインクできたな、とか」と、焼きあがったペンギンクッキーを愛おしそうに眺めます。
創作の原点は、小学生のころの驚き
上岡さんが初めて作ったお菓子も、クッキーだったと教えてくれます。
「小学生のころだったと思います。テレビで作っているのを見て、真似してみたのが始まり。粉と卵とバターを混ぜて焼くだけで、クッキーができるということに感動したんです。形のないものから、おいしいお菓子ができるのか! と。実際、見よう見まねで粉とマーガリンを混ぜて焼いてみたものの、おいしくなかったんですが(笑)。かたまって形になったのはすごいなという気持ちは覚えています」
知り合いにお菓子作りを教えてもらいながら、いろいろなお菓子を作り続け、やがてパティシエになった上岡さんは、結婚を機に迷走時期に突入します。自分にできることは何か、やりたいことってなんだろう? と考えてしまったのだとか。
「とにかく人に会って話を聞いてみようと思い、さまざまな業種の人に連絡をとって会いに行きました。知らない人にもSNSで連絡して会ってください、と必死でしたね。起業した方がいいんだろうかと思ったこともありますが、ある社長さんに『あなたができるのはお菓子作りじゃないのか』と言われて、やっぱりそうだなと思い直したんです」
考え込む前に、まず行動する。物静かなように見えて、うちに秘めたる気持ちの強さに驚かされます。その思いは真っ直ぐに好きなものへと注がれ、前回の話のように宮崎駿さんに出会って後押しされたことで、自身の道を確実なものにしていったというわけです。
作り手も、贈った相手も楽しくなる
カラフルなアイシング
さて、次はジンベイザメのクッキーにアイシングをしていきます。
「焼いただけでもかわいいですが、アイシングするとカラフルになって缶に詰めた時に賑やかになりますよ。アイシングの作業そのものも無心になれて好きなんです」と、実際にやって見せてくれます。
海の生き物アイシングクッキー
レシピを見る水色のアイシングで全体を色づけしますが、その前に白いアイシイングでアウトラインを。こうすることではみ出しにくくなって、輪郭がはっきりするのだそう。
「ゼロから絵を描くのは苦手なんですが、キャラクターなどの見本を真似して描くのは得意。この海の生き物も、模様のある型を見ながら描くか、お手本になるものを作って、それを横に置いて描くと迷わずにできます。よくポイントを聞かれるのですが、こればかりは『練習あるのみです』とお伝えするしかなくて……。とにかくたくさん作ってコツをつかむと良いと思いますよ」
すき間なくぎっしり詰めて完成!
夏のプレゼントにどうぞ
こうしてできたクッキーを缶にぎっしり詰めていきます。いろいろな形があるものをバランスよく入れるコツは?
「大きなものから入れていくことです。私は左と下のラインを先に詰めてから、右上を埋めるようにしました。さらに、小さなメレンゲを作っておくと、すき間に詰められて便利ですよ」
きれいに詰めたら蓋をして、リボンをキュッと結べば完成。夏の手土産やプレゼントにぴったりです。缶を開けた時の驚く瞬間を想像しながら、ぜひ楽しんで作ってみてください。
次回はhitomiさんに、夏休みの自由研究にもぴったりな琥珀糖のお話をうかがいます。
取材・文/晴山 香織 撮影/田中舘 裕介
cottaオフィシャルパートナー。お菓子絵本作家。パティシエとして洋菓子店に勤務後、2020年に独立。企業や書籍、WEBサイトでのレシピ提供や動画製作のほか、アイシングクッキー教室の主宰や製菓学校の特別講師など幅広く活躍中。著書に『おかしなおかしなおはなしえほん』(イースト・プレス)や『絵本の世界の可愛いクッキー』(マイナビ出版)がある。