手作りならではの魅力にあふれる
食べる人を想って生まれたお菓子
ケーキが焼き上がる甘い香りとともに、お菓子教室を営むアトリエで私たちを迎えてくれたmarimoさん。
「訪れる生徒さんに、〈非日常〉を味わいながらお菓子作りに没頭し、楽しんでいってもらいたいと願っています。子育てや仕事だったり、介護だったり。毎日のことから少しの間、解放されたい気分の時もありますよね」
きっかけは「おいしかった!」のメッセージ
開設以来、通信講座も含めた生徒数が延べ6000人ほどにもなるmarimoさんの教室。
もともとは、趣味で作ったお菓子を記録するためにブログに投稿していたところ、おいしくできたというコメントがつくように。また、友人向けに始めたレッスンが、やがて評判を呼び、お菓子研究家として独立を果たしました。
「自分の作るもので喜んでくれる人がいるのがうれしくって。でも、レシピについて質問をされた時にきちんと答えることができるよう、お菓子をもっと勉強したいと考えるようになり、会社員をしながら製菓の専門学校に入学しました」
お菓子でみんなを笑顔にしたい
失敗をしてしまう原因を何度も何度も試作をして探り、「なぜ?」を追求するmarimoさんのオリジナルレシピ。コツを押さえた、初心者でも必ず上手に作れる再現性の高さが人気です。
なぜそうするのか理由がわかりやすいレシピに加え、道具の説明やオーブンの使いこなし方、ラッピングのテクニックまで解説したテキストも教室用に作成。きめ細やかなケアも人気の秘密です。
「教室で習ったお菓子を、ご自宅でも失敗なく、おいしく作れる体験を味わってもらいたいんです。だから、伝えたいことがたくさん!」
読みやすく整えられたテキストからも、生徒さんとお菓子へのmarimoさんのあふれる愛情が伝わってきます。
家族に作る、特別な季節のお菓子
栗のテリーヌ
レシピを見る今回、marimoさんに教わったのは、栗のテリーヌ(パウンドケーキ)。ごろごろっと入れた栗を贅沢に味わう一品です。
「お菓子作りは仕事なので、普段は開発という意味合いが強いです。自分や家族が食べたいものを作る時間はなかなかとれなくて」と話すmarimoさん。
秋はご夫婦そろって誕生日を迎える季節ということで、「今日は、夫が好きな栗を存分に堪能できるお菓子を作ります!」
理想の味を目指した素材と型選び
「大変な下ごしらえは省いて、栗はおいしい渋皮煮を使っています。私のお気に入りは甘さ控えめのもの」
おいしいうちに食べきれる量のお菓子作りを心がけているmarimoさんが今回使っているのは、パティシェ・小嶋ルミ先生監修の、小ぶりなパウンド型です。
「食べ切りサイズなことに加えて、この幅が栗を2列並べるのにぴったりなんです。栗のぎっしり感を味わうために、ぜひこのサイズで焼いてください。生地は少なめなので、倍量にしても作りやすい配合です。このサイズなら、ご家庭のオーブンでも2本同時に焼くことができますよ」
一口食べると上品な甘さが広がるしっとりとした生地は、和三盆を使っているのがポイント。栗と相性のいいブランデーで、ほんのり香りづけをしています。
お菓子が主役のラッピング
焼き上がった栗のテリーヌを食べやすいサイズに切って、1カットずつ包めばプレゼントにも。「お菓子ってそれだけでかわいいから、あまり飾り立てないのが好きですね」
ミニサイズのパニムールは、栗のテリーヌにシンデレラフィット。ガス袋に入れてシーラーで封をしたら、同系色のシールでおめかしを。
「パウンド生地など、やわらかい焼き菓子を入れるのに、パニムールが便利です。このサイズは、レモンケーキを入れるのにもいいんですよ」
材料をどんどん混ぜていくだけの生地に栗を並べて焼くだけと、誰でも上手に作れるシンプルレシピ。ゆったりとした非日常の気分で、ぜひ作ってみてくださいね。
次回は、多森サクミさんに米粉を使ったパンについて教えていただきます。
【取材・文/singt 撮影/田中舘裕介】
marimoさん
菓子研究家、製菓衛生師。2008年に大学を卒業後、大手印刷会社で勤務しながら国際製菓専門学校の通信教育課程で製菓を学ぶ。その後、複数の製菓教室に通い、2015年に独立。2016年、東京・豊島区にて、お菓子教室「MARIMO CAFE」を開講。2018年からは通信講座、2021年にはお菓子をおいしく見せるための撮影講座を開設。きめ細やかな指導と再現性の高いレシピや美しい写真で、SNSでも人気を集めている。著書『本当においしいお菓子の作り方』など。