カフェ・お菓子屋さん・パン屋さんなどの飲食業において、お客さまに喜ばれる商品を販売することは大事ですが、お店を長く存続させるためには経営的な視点も必要ですよね。
中でも予算管理は、お店の利益確保を成功させるために欠かせません。
この記事では、初めての方でもわかりやすいように予算の組み方から管理までの基本的なプロセスと、それを効果的に活用する方法を詳しく解説しています。
- 予算とは?予算を立てる目的
- 予算の組み立て方
- 予算を立てるときのポイント
- 予実管理について
これから開業される方や、予算管理の基本的な考え方について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
「予算」とは?その目的と種類
予算とは、利益目標を達成するために必要な売上や経費の目安を事前に決めておくことです。
予算を立てる目的
予算を立てる目的は、主に2つ挙げられます。
目標売上・目標利益を達成するため
予算として目標数値を具体化することで、どれだけの売上が必要なのか、どれだけの利益が必要なのかが明確になります。
目標を達成するために、どれだけ製造・販売すればよいのかなど、日々の経営計画が立てやすくなります。
問題点を早期に発見し、軌道修正するため
予算と実際の結果(実績)を比較することで、早期に経営の問題に気づけます。
問題の原因を突き止めて改善することが、利益目標を達成する近道となります。
店舗経営の4つの予算
「予算」は一般的に下記の4種類に分類されます。
売上予算
特定の期間内に販売する商品・サービスから得られると予測できる売上金額です。
原価予算
原材料費の見積もりです。
売上に合わせて仕入れや製造量も変わりますので、売上予算と同様に定期的な見直しが必要です。
経費予算
店舗が継続していくために必要な費用(原価以外)の見積もりです。家賃や人件費、光熱費などが含まれます。
利益予算
会社の目指す利益を生み出すために設定する予算を指します。
一般的には売上予算から原価予算と経費予算を差し引いた数値です。
予算の組み立て方
予算を立てる際、店舗にはどれだけの利益が必要なのかを念頭に考えましょう。
その目標利益を達成するために、どれだけの利益が必要なのか、そのために売り上げがどのくらい必要なのかを逆算して考えると現実的な予算を立てやすくなります。
ステップ1. 年間の利益予算を立てる
まずは目標とする利益予算を設定しましょう。
店舗運営のために「どれだけの純利益を確保すべきか」を基準として予算を立てます。
純利益とは、売上総利益からさまざまな経費や税金などを引いて、最終的に残る利益のことです。
過去のデータや損益計算書を用いて、店舗を黒字化させるために必要な利益額を導き出します。
今後発生しうる機器故障などの緊急出費、店舗の拡大、販促物作成の出費などに備えて、利益計画を組んでおくことが重要です。
ステップ2. 年間の原価予算を立てる
次に年間にかかる原価(原材料費)の見積もりを立てます。
一般的にお菓子屋さん・パン屋さんなど飲食業態では、全体的な経費における原価比率は30%前後といわれています。
経営戦略とも関わりますので、店舗に合った原価予算を立てましょう。
ステップ3. 年間の経費予算を立てる
原価以外の経費の予算を立てます。
カフェ・飲食業にかかる主な経費と全体の経費との割合目安は以下の通りです。
- 人件費…30%前後
- 賃料…10%前後
- 諸経費…合計20%前後
(※諸経費:水道光熱費、販売促進費、広告費、消耗品費 など)
店舗運営に関わる重要な費用「FLコスト」については、こちらのコラムで詳しく解説しているので参考にご覧ください。
店舗経営に重要な「FLコスト」とは? 適切な管理が成功のカギ
例えば、営業利益目標が10%である場合、原価とその他の経費の合計が90%以下になるように計画しなければ、目標を達成できません。
利益予算から逆算して考えてみましょう。
また、予期しない出費に備えて、少し余裕を持った経費予算を立てることがおすすめです。
ステップ4. 年間・月間の売上予算を立てる
上記を踏まえて、利益目標を達成するための年間の売上予算を設定します。
- 年間売上予算=年間原価予算+年間経費予算+年間利益予算
年間売上予算を立てたら、それぞれの月の売上予算を割り振ります。
全て同じ予算にする必要はなく、季節やイベントの影響などを考慮して設定しましょう。
月間の売上予算を立てたら、目標達成のためにどれくらいの集客が必要なのかを計算すると、より具体的な行動につながります。
お客さまひとり当たりが1回の来店につき平均でいくら購入するか、1日当たり平均来客数は何名か、1カ月のうち何日間営業するかを計算し、それらを掛けると月間の売上が算出できます。
例えば、ある月の売上予算が200万円、平均客単価が1,500円、営業日数が20日間だとします。
2,000,000=1,500×平均客数×20
平均客数=66.6667
目標売上達成のためには、1日当たり66名以上の集客が必要であるとわかります。
このように、予算を立てると同時に具体的な行動計画を立てると、目標達成までの道のりがより具体的になるのです。
予算を組み立てるときのポイント
予算編成に重要なのは、実現可能な目標を立てることです。
適切な予算を組むために注意すべきポイントを紹介します。
目標値の根拠を明確にする
なぜその予算額になったのか、具体的に説明できるようにしましょう。
具体的であれば、目標達成のためのアクションを起こしやすくなります。
非現実的な高すぎる目標設定を避ける効果もあります。
季節性を考慮する
カフェ・お菓子屋さん・パン屋さんは季節のイベントによって売上や原価が上下する事業です。
例えばクリスマスやバレンタインデーなどのイベント時期には、通常よりも材料の仕入れを増やしたり、人件費がかかったりしますよね。
そのため、各月で一律の目標を立てるのは困難です。
あらかじめ季節の影響を考慮した予算編成をしましょう。
予実管理表を作成し、達成度をチェックしよう
予算を立てたら、実際に管理して日々の業務に反映させましょう。
お店の予実管理表を作成しよう
予算と実績を管理するには、「予実管理表」を作成すると便利です。
予実管理とは、計画に基づく予算と実績を比較し、目標の達成率を図る手法のこと。
例えば、下の表は月間の予実管理表です。
- 実施前の数字を「予算」欄に書き込みます。
- その月の数字を集計し、「実績」欄に書き込みます。
- 実績から予算を引いた数値を「差」の欄に書き込みます。
- 月の予算に対する実績の割合を計算し、「比率」に書き込みます。
- 予算と実績との差を評価します。
予実管理表はExcel(エクセル)など表計算ツールを使用すれば簡単に作成できますし、アプリなどの管理ツールもあります。
ぜひお店に合った方法で予実管理に取り組んでみてくださいね。
予実管理表を元に実績を評価し、行動計画を見直す
予実管理表があれば、目標とする予算に対して、実績がどうであったかが一目でわかります。
目標達成できていない場合は何が原因なのかを突き止め、翌月の改善にいかします。
目標が達成できている場合もその原因を探ってみると、今まで気づかなかった強みが見つかる可能性があります。
先に例に出した予実管理表の場合、売上目標は達成できていますが、営業利益目標が達成できていません。
その理由は、経費が予算よりもかかりすぎているから、ということが分かりますよね。
さらに経費のうち、何が利益を圧迫しているのかを深掘りする必要があります。
上記のように、表にして可視化することで、問題点に気づき改善案を立てやすくなります。
データを積み重ねれば、去年と今年などの昨対比もできるため、お店のデータ分析・経営戦略の立案、経営リスク回避に役立ちます。
まとめ|予算を立てて、目標達成を目指そう
予算はお店の利益目標を達成するための指標としてとても重要です。
また、予算を立て、実績と比較することで、目標通りに経営ができているかの確認や、できていない場合の軌道修正に役立ちます。
予算を組み立てるときは、お店に必要な利益予算を立て、逆算して原価予算・経費予算・売上予算を立てると考えやすくなります。
予算は組み立てたら終わりではありません。
予実管理表を作成し、予算と実績の数字を比較しながら経営のかじ取りをしましょう。
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