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【小規模事業者も必須】HACCP(ハサップ)対応とは?わかりやすく簡単に解説

date
2023/12/26
writer
コッタビジネス編集部
category
販売ルール > 表示義務
食品業界において衛生管理の基本的な手法となる「HACCP(ハサップ)」。 「HACCP」と聞くと難しそうで、具体的な内容や取り組むべき対策について、わかりにくいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか? この記事ではHACCPの基本的な考え方から具体的な対策までをわかりやすく解説します。 個人経営のお菓子屋さんやパン屋さんなど、50人未満の小規模事業者が取り組まなければならないHACCPを紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

HACCPとは何?今までの衛生管理との違いについて解説

最初にHACCPとは何か、従来の衛生管理の方法とはどのように異なるのかを確認しましょう。

HACCPとは?

HACCP(ハサップ)とは

  • Hazard:危害
  • Analysis:分析
  • Critical:重要
  • Control:管理
  • Point:点

上記5つの単語の頭文字を合わせた衛生管理方法です。 日本語では「危害分析重要管理点」と訳されます。 2021年6月に、業種業態問わず全ての食品等事業者にHACCP制度の導入が完全義務化されました。
原材料の受け入れから最終製品までの工程ごとに、微生物や化学物質、金属混入などの危害要因を分析・特定(危害要因の分析:Hazard Analysis)します。 その上で発生防止につながる重要な工程(重要管理点:Critical Control Point)を継続的に監視・記録することで、不良製品の出荷を未然に防ぎます。 つまり、一定のルールに従ってしっかりと原料受け入れから出荷までを管理することで、食中毒を防ぐことを目的とした管理手法です。 HACCPが対象とする工程は「入荷」「受け入れ」「製造工程」「製品の出荷」ですので、食品事業者が関わるほぼすべての工程に該当します。

従来の衛生管理とHACCPとの違い

従来の衛生管理方法で行われてきた「抜き取り検査」では、一部の完成製品にしか検査を行いません。 そのため、検査対象にならなかった不良のある製品が出荷・販売され、食品事故を引き起こす問題がありました。
一方、HACCPによる衛生管理では、原材料の入荷から製品の完成・出荷までの各工程をモニタリング(監視)します。 不良のある商品の出荷・販売の防止につながるのです。

HACCP導入の対象は?

HACCP導入の対象は、食品に関わる全ての事業者および営業者です。 食品の調理や販売をする飲食店だけでなく、食品製造や食品加工を行う食品工場などの施設も対象となります。

基準は2つに分類されている

全国展開しているような規模の大きい事業者であれば、人材や資金の確保などの点からHACCP対応がしやすいかもしれません。 一方、少人数のスタッフで経営している小さな店舗では、人手不足や資金不足などの影響でHACCPに基づく衛生管理が難しい場合があります。 そのため食品衛生法では従業員数が50名以上の大規模事業者と、従業員数50名未満の小規模事業者に分類し、異なる衛生管理基準を設けています。
区分 HACCPに基づく衛生管理 (旧基準A) HACCPの考え方を取り入れた衛生管理 (旧基準B)
対象事業者 ・大規模事業者(従業員50名以上) ・と畜場(と畜場設置者、と畜場管理者、と畜業者) ・食鳥処理場(認定小規模食鳥処理業者を除く) 小規模な営業者等 (従業員50名未満)
「HACCPに基づく衛生管理(旧基準A)」では、コーデックス委員会が定めた「HACCP7原則12手順」 を遵守した衛生管理体制の構築が求められます。 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(旧基準B)」では、一般的な衛生管理をベースに、HACCPの考え方も取り入れた衛生管理を目指したものです。

小規模事業者の定義

厚生労働省は「小規模事業者」を下記のように定義しています。
• 食品を製造または加工し、隣接した店舗で販売するもの 例:菓子の製造販売、豆腐の製造販売 など • 飲食店営業又は喫茶店営業を行う者、 その他の食品を調理する営業者 例:そうざい製造業、パン製造業(消費期限がおおむね5日程度のもの) など • 容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品のみを貯蔵し、運搬し、又は販売する営業者 • 分割した食品を容器包装に入れて販売する営業者 例:八百屋、コーヒーの量り売り など • 食品の製造・加工・貯蔵・販売・処理する事業者のうち、食品などの取扱いに従事するものが50人未満である事業場 ※事務職員などの食品の取扱いに直接従事しない者はカウントしない 参考:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
この記事では小規模事業者の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」について紹介しています。

HACCPを導入しなかったらどうなる?

HACCP導入違反に対する罰則は定められていません(2023年12月時点)。 ただし、食品衛生法第50条の3ではHACCPに関して下記のように記載しています。 「都道府県知事等は、公衆衛生上必要な措置について、第一項の規定により定められた基準に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができる」 つまり、地方自治体がルールを定めるとしています。 条例で定めることのできる罰則の上限は2年以内の懲役または100万円以下の罰金となっています。 また食品衛生法に違反していると判断された場合は、3年以下の懲役、300万円以下(法人は1億円以下)の罰金が科せられる恐れがあります。

小規模事業者のHACCP導入|何をやるべき?

小規模事業者の負担を軽減するために、各業界団体にはHACCPの考え方を取り入れ、簡略化した衛生管理計画のの手引書を作成しています。 菓子製造やパン製造の手引書もあり、下記の厚生労働省のHPからダウンロードできます。 >> HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(五十音順)
この手引書に沿って進めていくと、HACCPの考え方を取り入れた衛生計画ができるようになっています。 この記事では菓子製造業向けの「HACCP の考え方を取り入れた菓子製造業における衛生管理計画作成の手引書」を参考に、手順を見ていきます。

STEP1. 衛生管理計画の策定

ダウンロードした「衛生管理の手引書」を参考に衛生管理計画を立てましょう。 衛生管理計画は次の2つから構成されます。

1. 一般家性管理(どの食品についてもおこなうべき共通事項)

  • 原材料の受け入れの確認
  • 冷蔵・冷凍庫の温度の確認
  • 交差汚染・二次汚染の防止
  • 器具などの洗浄・消毒・殺菌
  • トイレの洗浄・消毒
  • 従業員の健康管理・衛生的作業着の着用など
  • 衛生的な手洗いの実施

2. 重要管理(食品の調理方法に合わせて行うべき事項)

菓子製造の場合、次のグループに分類し、それぞれのチェック方法を決めます。
分類 調理方法 調理例
第1分類 生地調整で加熱する菓子 あめ類、ゼリー類
第2分類 生地調整後加熱する菓子 焼き菓子、蒸し菓子、油菓子、自家製あん
第3分類 加熱後手細工加工などが入る菓子 スポンジケーキ類、パイ菓子、シュー菓子
第4分類 仕上げ(充填・巻き締め)工程後加熱する菓子 スタンドパックゼリー
第5分類 加熱加工しないあるいは低加熱加工(75℃・1 分間相当未満)の菓子 チョコレート、生菓子
※具体的な分類に際しては、同じカステラであっても、殺菌レベルの焼成後、

  1. 機械でカットする場合には第 2 分類(生地調整後加熱)に該当し、
  2. 包丁を使って人がカットする場合には第 3 分類(加熱後手細工加工)に該当

することに留意する必要があります。
衛生管理計画はExcel(エクセル)などの表計算ツールを使用して作成すると、日々の管理がしやすくなるのでおすすめです。

STEP2. 計画に基づいて衛生管理を実施する

衛生管理計画ができたら、お店で働くスタッフ全員に共有します。 設定した衛生管理のポイントを明確にしておくことで、スタッフの衛生管理への意識が向上するメリットがあります。 食中毒や異物混入などのリスク低減につながるのです。

STEP3. 確認・記録をする

計画書に基づいた衛生管理を実施し、毎日記録をつけましょう。 業務の1つに衛生管理記録作業を組み込みます。 記録をつけることで衛生管理を適正に実施することが第三者からも確認できます。 万が一問題が生じた際に、衛生管理を適切に行っていたことの証拠書類となります。 また、記録する中で業務の改善点を見つけ、業務の効率化につながることも期待できます。 記録の保管期間は定められていません。 しかし、トラブルが発生した場合に保健所から提出を求められる可能性もあるので1年以上は保管をしておきましょう。

衛生管理に役立つアイテムをご紹介

酒造会社ドーバーが開発、食品添加物として厚生労働省に認可されていた除菌アイテム。
食品に触れずに、素早く温度を計測できる食品用温度計。

まとめ|HACCP衛生管理を取り入れて、お客さまの安全を守ろう

HACCPと聞くと難しそうに感じるかもしれませんが

  • 衛生管理計画の策定
  • 計画に基づいた実施
  • 記録し、管理する

この3つを実行すれば大丈夫です。
従業員50人未満の小規模事業者向けに、各業界が発行している衛生管理の手引書がありますので、この内容に沿って衛生管理計画を策定しましょう。 HACCP導入の義務化は衛生意識を底上げするものです。 「義務だから」ではなく「お客さまを健康被害から守るため」「お店の商品・サービスの品質アップのため」という意識で毎日の衛生管理に取り組みましょう。 お菓子屋さんやパン屋さん、カフェ・飲食店の運営には「食品衛生責任者」の取得が必須です。 食品衛生責任者資格の取り方については、こちらの記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。 食品衛生責任者とは?パン・お菓子の販売に必須な資格の取り方
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