食品の製造や販売に携わる企業・店舗にとって、食中毒をはじめとした食品事故のリスクは付きもの。
万が一、販売商品でお客さまに損害を与えた場合の備えとして、「PL保険」があります。
この記事では、PL保険の基になるPL法について解説し、PL保険とはどのようなものなのか、保険を選ぶ注意点についてご紹介します。
お客さまとお店を守る役割があるPL保険。
これからお菓子やパンの販売を始める方や、カフェ・飲食店を開業される方はぜひ最後までチェックしてくださいね。
消費者を守るための法律「PL法」
最初にPL保険の基になる法律である「PL法」について確認しましょう。
PL法(製造物責任法)とは?
PL法(製造物責任法)とは、製造・販売した商品・サービスの欠陥により、人の生命や身体、または財産に関わる被害が発生した場合、製造業者などの損害賠償責任について定めた法律です。
PL法における「製造物」とは、製造・加工された食品が対象です。
未加工の農林水産物(生鮮食品)は対象とはなりません。
また、商品を保護する容器包装も「製造物」に含まれます。
製造物の欠陥には、異物混入や食中毒、容器の破損が含まれます。
アレルゲン表示や期限表示、保存方法というような食品表示も関係します。
製造物に欠陥があっただけではPL法の対象とはなりません。
製造物の欠陥によって、人の生命や身体、財産などに実際に被害が生じた場合にPL法の対象となり、損害を賠償する責任が発生します。
この際に、故意(わざと)なのか、過失(ミス)なのかは問われません。
PL法の「欠陥」による被害とは?
PL法における「欠陥」によって引き起こされる被害とはどのようなものがあるのでしょうか?
例えば、下記のようなものが挙げられます。
- 食中毒による入院や治療
- 異物混入による歯の欠損
- 容器の破損によるケガ
- アレルギー表示ミスによる食物アレルギーの発生
なお、製造業者が以下について証明ができた場合は、責任が免除されます。
1. 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
2. 当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。
引用:e-GOV 法令検索 「製造物責任法」 第四条
PL保険とは|万が一製造物責任が発生したときのための保険
PL保険は、「PL法(製造物責任法)」に基づいて設けられている保険です。
PL保険(製造物賠償責任保険) とは、製造物・販売物に生じた欠陥がお客さまに損害を与えた場合に、賠償責任を代行してくれます。
PL法は食品の製造に関わり、消費者を守るための重要な法律です。
また、食品のPL関連の事故では巨額の損害賠償請求が発生する可能性があります。
食品を製造・販売する企業や店舗は、食品事故の予防策に加えて、万が一事故が発生した場合に備える防御策としてPL保険やPL共済への加入が必要となるのです。
PL保険に加入義務はあるの?
PL保険に加入の義務はありません。
ですが、どんなに食品の衛生管理や安全確認を徹底していたとしても、お客さまに損害を与える可能性が0%とは言い切れないものですよね。
そのため、食品の製造・販売に携わる企業や店舗は、可能な限りPL保険への加入が推奨されます。
お客さまとお店を守るためにPL保険は重要な役割があるのです。
PL保険の補償内容
製造・販売した商品の欠陥によってお客さまに損害を与えてしまい、賠償責任が発生した場合、PL保険で補償される内容としては、下記のようなものがあります。
損害賠償金 |
損害を与えた被害者に対して支払う賠償金を補償。
法律上の損害賠償金には、裁判で確定した場合だけでなく、和解や示談などによって支払う賠償金も含まれます。
※ただし、見舞金の支払いは対象外です。
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訴訟費用や争訟費用 |
PL法に基づいて被害者から訴訟を受けた場合、訴訟費用・争訟費用・弁護士費用などが補償されます。
裁判に敗訴した場合の賠償金についてもPL保険の保障の範囲内です。
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緊急措置費用 |
PL事故による応急手当にかかった費用を補償します。 |
被害防止費用 |
PL事故発生後、さらなる被害を防ぐための措置にかかる費用も補償対象。 |
保険会社から要求される協力費用 |
保険会社が加入会社に、情報収集や損害額抑制のための調査などを要求する場合、その費用も補償対象です。 |
ただし、保険会社によって保障内容が異なる場合があるため、詳細については契約する保険会社に必ずご確認ください。
PL保険では補償できないものについて
製造した商品の欠陥による損害賠償リスクに備えるためのPL保険。
「保険金が支払われると思っていたのに支払われなかった」とならないように、補償の対象外となるものについて確認しておきましょう。
故意に製造物を欠陥品にした場合
故意に損害保険の保険事故原因を作った場合は補償の適用範囲外です。
PL保険に限らず、ほとんどすべての損害保険は補償対象外となります。
注意すべき点は、故意ではなく重過失の場合も対象外になることです。
重過失により製造物が欠陥品となった場合は、故意による場合と同様の扱いとなり、補償の対象外となってしまいます。
リコールによる回収費用
リコールによる回収費用はPL保険では補償を受けられません。
リコールとは、すでに市場に出回っている商品に欠陥があることを公表したうえで、回収・無償修理をすることです。
なお、PL保険に特約としてリコールによる回収費用に対する補償をつけられる場合もあります。
保険会社によっては特約としてではなく、別のリコール保険などの加入が必要となる場合もありますので、契約前に確認しましょう。
製造中に発生した事故は補償されない
PL保険は販売後に生じた事故について補償する保険です。
作業やサービスの途中で生じた事故については補償できません。
例えば商品の製造時に、人や物に損害を与えた場合については補償の対象外です。
PL保険の選び方・選ぶときの注意点
PL保険を選ぶ際は、以下のポイントを意識するとよいでしょう。
- 企業・店舗のリスクに応じた補償・特約を選ぶ
- 複数の商品を比較して選ぶ
PL保険を選ぶ際は、自店舗のリスクを考えることが大切です。
例えばPL事故が発生した際にリコールをする可能性がある場合は、PL保険にリコール費用をカバーする特約を付帯する必要があるでしょう。
引受保険会社によってPL保険の補償内容や付帯できる特約、保険料の算出方法が異なります。
自店舗にとって必要な補償を決めたうえで、複数の保険会社から見積もりを取り寄せて比較し、加入先を決めるとよいでしょう。
まとめ|リスクに備えてPL保険への加入を検討しよう
お菓子やパンなどの食品製造・販売をする際は、お客さまに損害を与えるリスクが付きものです。
損害が発生した場合、PL法製造物責任法)により、賠償責任が生じます。
重篤な食品事故の場合、多額な費用となる恐れも。
よって、リスクに備えるためにPL保険への加入は有効です。
近年では店舗だけでなく、ネットショップで食品を取り扱う個人事業主も増え、PL保険加入の需要が高まっています。
お客さまとお店を守るための保険として検討してみてくださいね。
また、お菓子を販売する際には「菓子製造許可証」や「食品衛生責任者」の取得が必要です。
それぞれの記事で詳しく解説しているので、あわせてチェックしてくださいね。
菓子製造業許可を取るには?申請の手順や必要設備を詳しく解説
食品衛生責任者とは?パン・お菓子の販売に必須な資格の取り方
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