「ベンチタイム」とはどんな時間?役割について考えてみよう
パン作りをしていると、「ベンチタイム」という工程が出てきます。
いったい、どのような目的で行う工程なのでしょうか。
今回のコラムでは、「ベンチタイム」について詳しく解説します。
ベンチタイムとは
ベンチタイムとは、一次発酵の終わった生地を分割して丸めた後、成形作業をする前に生地を休ませる時間。「ねかし」や「中間発酵」ともいいます。
丸めることで弾力が出て引き締まった生地を緩ませ、成形しやすい状態にするために必要な時間なのです。
生地によって違いはありますが、15~30分間を目安に休ませます。
ベンチタイムの名前の由来
「ベンチ」は作業台のこと。
この上で生地を休ませていたから、こう呼ばれるようになったそうですよ。
なぜ、ベンチタイムが必要なの?
分割をして丸め終わった生地は、グルテンが絡み合って弾力が強くなります。
この生地を成形しようとすると、縮んでしまってうまく形を作れなかったり、生地の表面が切れたり、べたついたり。
そこで、ベンチタイムをとります。
この間も、生地の発酵は進んで膨らみます。絡み合ったグルテンは引き伸ばされ、弾力が弱まって成形がしやすい状態に。
このように、グルテンの弾力が強くなることを「加工による緊張」、弱まることを「構造の弛緩」と呼びます。
ベンチタイムでは、分割・丸めによって緊張した生地を弛緩させ、成形しやすい状態にしているのです。
生地はこねから最終発酵までの間、緊張と弛緩を繰り返しており、このバランスがおいしいパン作りには大切になります。
ベンチタイムのやり方とポイントをチェック!
シンプルな配合のパン生地を使って、ベンチタイムを行ってみます。
押さえるべきポイントがあるので、チェックしてみてくださいね。
生地配合(参考)
- 強力粉…200g
- 上白糖…10g
- 塩…4g
- インスタントドライイースト…2.4g
- 水…132g
- 無塩バター10g
工程(参考)
ホームベーカリーでこねて、30℃で50分間一次発酵後、6個(1個約60g)に分割。
ベンチタイムが終わった生地は、成形し、最終発酵を36℃約40分間、180℃15分間焼成。
ベンチタイムの方法
- 分割した生地を切断面が中に隠れるように丸め、適度な間隔をあけて並べます。
もし、分割のときに出た小さな生地があれば、中に包み込むようにして一緒に丸めましょう。生地の表面はピンと張りのある状態がベスト。ただし、きつく丸めすぎないように注意!
- ベンチタイム中は、生地が乾燥しないように、かたく絞ったぬれ布巾(または厚手のビニール)をかぶせます。
*この他、深さのあるバットやプラスチックケースに入れ、ぬれ布巾やビニールをかぶせる方法もあります。
生地の乾燥と温度に注意!
ベンチタイムでは、生地の表面が乾かないように気をつけるのが重要!
置く場所の温度は、25℃前後を基本に。室温が低い場合は、発酵器に入れるのもおすすめです。
ベンチタイムの時間は?終了の見極め方
ベンチタイム終了の目安は、生地がふっくらと大きくなって、中心に芯がなく、緩んでいる状態であること。
一般的には、15~30分間が目安とされています。
ただし、パン生地の性質や分割後の丸めの強さによっても変わってきます。
テーブルロールや菓子パンなら15~20分間、食パンやフランスパンだと20~30分間ベンチタイムをとることが多いです。
ベンチタイム終了のタイミングは、指先で生地を軽く押さえて離したときにできる、指跡の残り方を見てチェックします。
指跡が残れば、ベンチタイム終了の合図。
生地の変化を見てみよう!
実際に、0分(丸めた直後)・10分後・15分後・20分後で指跡の様子を見てみましょう。
0分
張りと弾力があるので、指跡は残りません。
10分後
少し生地が緩んできましたが、表面には張りがあります。少し指跡が付きましたが、ゆっくり戻ってきます。
15分後
生地が緩んで一回り大きく。指跡が残るようになってきました。まだ少し芯が残っている感じです。
20分後
ふっくら、ふんわりと生地が緩んで、指跡がしっかりと残ります。
これくらいまで、生地をお休みさせましょう。
ベンチタイムは、短くても長くても生地の伸展性が低く、成形で生地にダメージを与えてしまいます。
時間はあくまでも目安に、生地の状態を見て判断してくださいね。
ちょうどよい時間のベンチタイムをとった生地は成形がしやすく、その後の発酵もスムーズ。焼き上がったパンもふっくらやわらか♪
パン生地の状態に注目!ベンチタイムを大切にしよう
成形前の生地を緩ませる時間「ベンチタイム」。
その生地に合った最適な時間をとることで、おいしくきれいな手作りパンを焼き上げることができます。
ベンチタイムでは、レシピに書いてある時間を参考にして、生地の状態に注目してみてくださいね。