バターが溶けた!この失敗、リカバーできる?
お菓子作りのレシピでよく目にする「バターを常温に戻す」という作業。
電子レンジで常温に戻そうとしたら溶けてしまった!という経験ありませんか?
誰もが一度はやってしまう失敗ですが、冷蔵庫に入れてもう一度固めなおしたら使えるのか気になりますよね。
今回は、溶けてしまったバターで実際にお菓子を作って検証してみました。
バターの特性を確認しよう
バターには「可塑性」「クリーミング性」「ショートニング性」という性質があり、お菓子の仕上がりに影響を与えます。
可塑性とは
バターは13~18℃の温度帯になると、粘土のように自由に形作ることができるようになります。
この性質を「可塑性」といい、折り込みパイ生地はこの可塑性を生かしてバターを折り込んでいきます。
クリーミング性とは
バターをクリーム状にしてよく混ぜると空気を抱き込む性質を「クリーミング性」といいます。
バターに砂糖を加えてよく混ぜて空気を取り込んでいくことで、オーブンで焼いたときにその空気が膨張して生地が膨らみます。
この性質を生かして作るのが、パウンドケーキやマフィンです。
ショートニング性とは
クリーム状にしたバターが生地中に散らばり、グルテンの形成を抑えたり、デンプンの決着を防いだりする性質を「ショートニング性」といいます。
この性質により、タルト生地やクッキーは口の中で脆く砕けてサクサクとした食感になります。
バターを常温に戻して使う理由
お菓子作りでの常温とは、20〜25℃が目安。
この20~25℃くらいの温度帯でバターはクリーム状になり、「クリーミング性」「ショートニング性」を発揮できます。
常温のバターは指がスッと入るくらいの状態。
ゴムベラで簡単に練ることができます。
砂糖を加えてハンドミキサーで撹拌すると、空気を取り込んで白っぽく、かさが増えてフワッとした状態に。
バターが溶けた!冷やすと戻る?
溶けてしまったバターを冷蔵庫に入れて冷やすと、黄色い溶かしバターの色のまま固まります。
もう一度常温に戻してヘラですくってみると、かたくモロモロと分離した状態で、なめらかでやわらかい状態にはなりません。
このバターに砂糖を加えてハンドミキサーで撹拌すると、トロッとやわらかい状態に。かさも増えず、空気を取り込めていないことがわかります。
なぜ溶ける前のバターに戻らないの?
固体のときと液体のときでは、バターの結晶の構造が変わってしまいます。
一度液体になったバターは冷蔵庫に入れて凝固させたとしても結晶の型が戻らず、ざらざらとしてなめらかさがなくなります。
また、質感が変わるだけでなく、バターの特徴である「クリーミング性」「ショートニング性」「可塑性」も失われてしまうのです。
固めなおしたバターで作ったお菓子はどうなる?
溶けたバターは元の状態には戻らないといいますが、実際にお菓子を作るとどうなるのでしょうか?
型抜きクッキーとパウンドケーキを作って検証してみました。
クッキーもパウンドケーキも、電子レンジにかけて半分溶けたバターを冷蔵庫に入れて固め、再び常温に戻してから作りました。
型抜きクッキーの場合
生地の状態
冷蔵庫から出して5分くらい経ち、生地温度は16℃。
常温のバター
- やわらかいもののしっかりとしている
半分溶けたバター
- ちぎれやすくもろい状態で作業しにくい
見た目・味・食感
見た目はほぼ変わらずに焼けましたが、食感に大きな差が出ました。
常温のバター
- サクサクと口溶けがよく、軽い食感で口の中からスッとなくなる
半分溶けたバター
- サクサク感はあるものの、ずっと口の中に残って歯にまとわりつく。
- 少し油っぽい感じもして後味が悪い。
パウンドケーキの場合
生地の状態
砂糖を加え、ハンドミキサーで泡立てた状態。
常温のバター
- 空気を含み、白っぽくふわっとしている
半分溶けたバター
- 白っぽくなってはいるものの、常温のバターと比べるとだいぶやわらかい
見た目・味・食感
常温のバター
- キメが細かい
- 空気が含まれているのでふわっと軽く繊細な口溶け
- 翌日はしっとり感が増す
半分溶けたバター
- 若干キメが粗い
- 口に入れるとポロポロと崩れて生地に一体感がなく、少し油っぽさを感じる
- 翌日以降、パサつきが気になる
まとめ
クッキーもパウンドケーキも見た目はさほど変わらず焼けましたが、味や食感に大きな影響が出ることがわかりました。
完全に溶けた状態ではなく半分溶けた状態であってもここまで差が出るので、バターを常温に戻すときには注意する必要があります。
これで失敗しない!バターを常温に戻す方法
バターを常温に戻すときは、以下のポイントに注意すれば失敗なく戻せます。
ポイント1.均等に薄くスライスする
バターは均等な厚さに薄くスライスするのが大事なポイント!
厚みがあると外側はやわらかくなりますが、中は冷たく、なかなか常温に戻りません。
スライスしたバターはボウルに入れ、乾燥しないようにラップやフタをかぶせましょう。
ラップに包んでおくのも◎
この状態で、指がスッと入るくらいのかたさになるまで室温に置いておけばOKです。
ポイント2.電子レンジにかけるときはこまめにチェック
室温に出しておくやり方が一番良いのですが、夏場はまだしも冬場などは電子レンジで加熱したいですよね。
電子レンジで常温に戻すときに失敗するのは、30秒間や1分間かけっぱなして一気に温めようとしてしまうから。
電子レンジを使用するときは、ワット数200Wを選び、10秒間ずつやわらかさをチェックするのがおすすめです。
500Wや600Wしか選べない場合はさらに時間を短く、5秒間ずつくらいを目安にチェックするとよいでしょう。
最初はなかなかやわらかくなりませんが、急に溶け始めるのでこまめに確認することが重要です。
また、電子レンジにかける場合もバターを均等な厚さにスライスするのを忘れずに!厚さが違うと一部だけ溶けてしまう原因になります。
溶けてしまったバターの活用法
溶けてしまったバターは、冷やし固めずに「溶かしバター」として使いましょう。
溶かしバターで作るお菓子の代表としては、マドレーヌやフィナンシェがあります。
また、パウンドケーキを作りたい場合は、シュガーバッター法ではなくジェノワーズ法に変更するとよいでしょう。
常温に戻したバターを改めて用意し、溶けたバターは料理などの用途に使うのも◎
バターを常温に戻す作業は超重要!
今回は、常温に戻す際に溶けてしまったバターについて検証を含めて解説しました。
「ちょっと溶けただけだから、もったいないしこのまま作っちゃえ!」と強行突破してしまいがちですが、やめておいたほうがよいことがわかりましたね。
失敗しない方法を押さえておけば、季節や状況によって電子レンジを使って時短することもできます。
おいしいお菓子を作るためにも「バターを常温に戻す」作業は大切。
ここをしっかり守って、お菓子作りを進めてくださいね。