重曹とベーキンングパウダーは何が違う?
製菓材料界のバイプレイヤーである重曹とベーキングパウダー。
どちらも生地が膨らむのを助けてくれますが、この二つは何が違うのでしょうか?
原料の違いは?
まずはベーキングソーダとベーキングパウダーの成分を見てみましょう。
重曹(ベーキングソーダ)
成分
- 炭酸水素ナトリウム 99%以上
炭酸水素ナトリウムは「重炭酸ソーダ」とも呼ばれ、それを略して「重曹(じゅうそう)」といいます。
重曹は加熱されることで炭酸ガスを発生させます。そしてこのガスが生地を膨らませます。
ベーキングパウダー
成分
- 第一リン酸カルシウム 42%
- 炭酸水素ナトリウム 32%
- コーンスターチ 26%
*今回は“ラムフォードベーキングパウダー”の成分表示を確認しました。
ベーキングパウダー(これ以降「BP」と書きます)の成分は、三つの要素で構成されており、それぞれ異なる働きを持ちます。
(1) 炭酸水素ナトリウム
炭酸ガスを発生させる。
(2) 第一リン酸カルシウム
炭酸水素ナトリウムと反応してガスを発生させ、生地がアルカリ性になるのを防ぐ酸性剤。
(3) コーンスターチ
保管中に炭酸水素ナトリウムと酸性剤が反応しないようにする遮断剤。
BPは水を加えた時と加熱時の二回、炭酸水素ナトリウムと酸性剤の反応が起こり、炭酸ガスが発生します。
代用するときの使用量
二つは成分が異なるため発生する炭酸ガスの量が違い、そのままの分量では置き換えることはできません。
発生する炭酸ガスの量が同じくらいになるようにすれば、置き換えが可能となります。
・BPを重曹に置き換える場合
BPのグラム数×2/3=重曹のグラム数
・重曹をBPに置き換える場合
重曹のグラム数×3/2=BPのグラム数
*今回は“ラムフォードベーキングパウダー”の成分表示を元にして計算式を出しております。
*BPの種類によっては数値が変わることがあります。
焼き比べてみた!
実際に重曹とBPを使って、比較してみました。
今回は、BPがよく使われるアメリカンベイクなお菓子からマフィンとスコーンを焼き比べます。
マフィン
重曹
焼いている間から、独特の香り。この匂い、どこかで嗅いだことがあると思ったのですが、温泉街で売っている炭酸せんべいや温泉まんじゅうでした。あの香ばしいような香りです。
膨らみは縦方向ではなく、型から垂れ流れていくほど横へと広がりました。
焼き上がりの色は黄みがかっていて、実際に食べてみると、少ししょっぱいような苦いような、洋菓子というよりも和菓子寄りの独特の味がします。
重曹ではアルカリ性の物質が作られます。このアルカリ性の物質に小麦粉のフラボノイド色素が反応して、生地が黄色くなります。苦みやしょっぱさもアルカリ性特有のものです。
チョコレートマフィンでも色に違いがあり、重曹の生地は、よりビターな色合いになっています。
BP
お菓子特有のバターと卵の甘い香りがして、焼き上がりも全体的にもりもりとキノコ型に膨らみました。
スコーン
重曹
重曹を使用した生地の方がよく膨らみます。
マフィン同様、少ししょっぱく苦い味がしました。
BP
重曹の生地に比べて膨らみが少ない理由としては、炭酸ガスの発生のタイミングの影響が考えられます。
生地を寝かせているときからラップが張っていて、ガスが溜まっているのがよくわかります。
寝かせている段階で既に炭酸ガスが生成され、その後、生地を伸ばしたり分割している間に気泡がつぶれて、重曹の生地と比べ膨らまなかったのではないでしょうか。
まとめ
今回のコラムでは、重曹とベーキングパウダーの違いを解説しました。
ベーキングパウダーは生地の風味を損ねません。
一方、重曹は生地がアルカリ性になるので黄色っぽくなり、独特の風味をもたらします。しかし、加熱されるまで炭酸ガスは発生しないので、生地を寝かせるお菓子でもしっかりと膨らみます。
このように違いがあるため、お菓子に合わせた使い分けをするのがおすすめです。
使い分けて、おいしい焼き菓子を作りましょう!