仕込み水を牛乳に変えたいと思ったことはありませんか?
パン作りに使う水を牛乳に変えると、焼き上がりの状態はどうなるのでしょう?
水100%で作るパンと、水分量をそのまま牛乳に置き換えたパンとを比較して、検証してみました。
「水から牛乳」「牛乳から水」の適正な換算方法も解説します。
レシピの水分を水から牛乳に置き換えてパンを焼いてみた
基本のレシピの仕込み水は、水100%です。
このレシピの水を牛乳100%使用に置き換えて、パンの出来上がりを比較してみましょう!
基本のまるパン(5個分)のレシピ
材料
- 強力粉…200g
- 水(もしくは牛乳)…130g
- インスタントドライイースト…2g
- 塩…3g
- 砂糖…10g
- 無塩バター…10g
作り方
<こね>ボウルにバター以外の材料を入れてこね、バターを入れてさらに10分間こねる。
のばして薄い膜ができればOK。
<一次発酵>パン生地を丸めてボウルに入れ、35℃で約50分間一次発酵。
約2.5倍の大きさになれば発酵完了。
<分割・ベンチタイム>ガスを抜き、5分割して丸める。
ボウルをかぶせて15分間ベンチタイム。
<成形>丸め直してとじ目をとじ、オーブンシートを敷いた天板に並べる。
<二次発酵>35℃で約45分間二次発酵。大きさが2倍になれば発酵完了。
<焼成>190℃に予熱したオーブンで15分間焼く。
焼き上がりを比較してみた
水130gで作った基本のパンと、水を牛乳130gに置き換えて作ったパンの焼き上がりはこちら。
水130gで焼いた基本配合のパン
- 全体的に緩んで膨らむ。
- 焼き色は薄め。
- 小麦の香りはするが、風味は弱い。
牛乳130gに置き換えて焼いたパン
- 生地が締まって膨らみが悪い。
- 焼き色は濃い。
- ミルキーで甘く、香ばしい香り。風味が強い。
牛乳で作ったパンが膨らみにくい原因は?
牛乳の水分量は、約90%。
残りの10%は固形分(たんぱく質・糖質・脂質・ビタミン・ミネラル)です。
よって、水をそのまま牛乳に置き換えると、レシピの水分量より10%少ないという結果に。
水分量が少ない生地は、かたくてパサついたパンに焼き上がってしまいます。
また牛乳には、生地を引き締める効果がある乳脂肪やたんぱく質が含まれていることも、その一因。
ちなみにスキムミルクは牛乳から乳脂肪と水を取り除いたもの。乳脂肪が入っていないぶん、牛乳よりもふんわりと焼き上がります。
牛乳で作ったパンの焼き色が濃くなる理由は?
パンに焼き色が付くのは、糖の反応によるもの。
通常、生地に含まれる糖はイーストの栄養分として発酵の過程で少しずつ分解され、焼成時には少なくなっています。
しかし牛乳に含まれる乳糖は分解されず、焼成時まで生地の中に全て残ります。
乳糖を加熱するとたんぱく質やアミノ酸と反応し、しっかりと焼き色が付くのです。
牛乳で作ったパンが風味豊かなのはなぜ?
糖が加熱されると、焼き色を付けるとともに香ばしい香りとなる物質が発生。
特に乳糖はミルキーで甘い、香ばしい香りが出ます。
水を牛乳に置き換える方法・牛乳を水に置き換える方法
水を牛乳に置き換える場合、牛乳は約90%が水分、10%が固形分という点をしっかり理解するのがポイント。
水を牛乳に置き換える場合は、下記の式で計算できます。
水×1.1=牛乳
逆に、牛乳を水で代用する場合の式はこちら。
牛乳×0.9=水
計算式を実践してみよう
上記の計算式を使って、レシピの水を牛乳に置き換えてみましょう。
基本のまるパンレシピの水の分量は130g。
130×1.1=143
143gグラムの牛乳が必要となります。
水と同量置き換えるだけでは、水分量が13gも少ないことになりますね!
正しい牛乳の量でパンを焼いてみた!
130gの水を143gの牛乳に置き換えてパンを焼いてみます。
生地は引き締まりつつも、ふんわり膨らんだ風味豊かなパンの出来上がり。焼き色も◎
今回のまとめとして、3パターンのパンを並べてみましょう。
左から、水130gの基本のパン・水をそのまま牛乳130gに置き換えたパン・適正量に換算して牛乳143gで焼いたパンです。
膨らみや焼き色に違いが出ているのが、よくわかりますね。
水→牛乳はそのままの分量で置き換えできない
パン作りにおいて水の代わりに牛乳を使う場合、ただ単にそのままの分量で置き換えることはNGです。
牛乳の特性についてよく理解して換算できるようになれば、正しい数値を出すことは簡単!
レシピをアレンジするなど、よりパン作りの幅が広がることでしょう。